表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/31

後始末しよう

 私は守備兵団の皆さんを呼び出しました。

 とは言ってもいきなり訓練やら厳しい現実を突きつけてもしかたありません。

 せっかく守備兵団がドラゴンを撃墜したのです。

 戦勝記念パーティ&決起大会を開いてこの快挙を祝いましょう!



 え?

 ドラゴン撃墜したのお前やろが?!



 いいえ。

 守備兵団がどう言い訳しようとも私が守備兵団が撃墜したと言ったら、守備兵団が撃墜したのです。

 組長(りょうしゅ)が白と言ったら黒でも白なのです。

 それが貴族(ごくどう)の世界というものです。


 私は彼らに一銭にもならない栄誉とかいうものをなすりつける予定です。

 そもそも彼らが落としたら自動的に私の実績になります。

 栄誉を分けてあげても全く損をしません。

 せいぜい腕力過多のガキから、着任直後にドラゴンを撃破した名司令官に評価が変わるだけです。

 兵士が倒したことにした方が全員が幸せになることができます。

 彼らもちやほやされますからね。

 幸いなことに領民の皆さんは逃げたので目撃者はいません。

 捏造し放題です。

 私の方も腕力が強いだけのガキと言われるくらいなら、ドラゴンをねじ伏せた超絶司令官(スーパーコマンダー)の方が美味しいです。


 それに兵士が狩ったということなら責任の方も彼らに押しつけられます。

 私一人で殺したという話だとゴルフ場でうっかりホールインワンを出してしまったときと同じように、こちらの金で貴族を呼んでパーティーを開かなければなりません。

 来たばっかりなのに王城に報告に帰って、パーティーの金取られたあげくに、おべっかを使うゲス顔貴族に拳を叩き込まないように細心の注意を払いながら表面上は楽しく会話という苦行が待ち受けています。

 そんな無駄金使うくらいなら、外部向けには「兵士が倒したので知らない」で押し通し、内部で身内のパーティ開いた方がよほど楽です。

 有害鳥類を駆除しましたという報告書を城に送付して終了なのです。

 兵士たちの方も飲み屋で集まった客に驕らされる程度で済みます。

 そのくらいのお金は出してやりましょう。


 はい、誰もが幸せになった!



 権力ステキ!!!



 私は悪い顔をしながら広場を見渡しました。

 広場では煙が上がってました。

 火事ではありません。


「おっにく♪ お肉♪」


 あたりに充満するのは肉の焼ける香ばしい臭いです。

 守備兵団の皆さんが肉を配っています。

 そして領民のみなさんお肉にがっついていきます。

 急がなくても大丈夫ですよー。

 まだまだ大量にありますからね。



 ワイバーンのお肉は。



 結局あれからもワイバーンの体からは小さいのから大きなものまでいくつものエメラルドが見つかりました。

 大量のエメラルドを手に入れた我々は、まずは証拠を隠滅することにしたのです。

 この情報が外に漏れるとドラゴン狩りとかをしに来て、アッサリのたれ死にするバカどもが続出してしまいますので。

 あと報告面倒だし、無駄に課税されるし、顔も見たことのない親戚は増えるし、最悪隣国が攻めてきます。

 はあ? たかが光る石だろが。

 と、思われるかもしれません。

 ですが、銀行制度が発展する以前の世界では宝石は商売の必需品です。

 たいていの場合、宝石は金貨より軽いです。

 それに高く売れます。

 土地によっては買った値段より高い場合もあります。

 なので商人さんが持ち歩くのにちょうどいいのです。

 特に盗賊に襲われたときにも宝石だけ持って逃げれば財産のほとんどを失うハメにならずにすみますから。

 なので実質的に貨幣に近いものと言えるでしょう。

 うわーいお金持ち!

 ……と、喜んでいられないのです。


 ウルの街の南は神聖帝国との国境地帯にあります。

 神聖帝国はその名の通り、「神の名の下に逆らうものは皆殺し」というファンキーな国です。

 そんなファンキーな帝国ですが、両国に横たわる広大な砂漠と荒れ地のせいで今までは小競り合いすらありません。

 ウルの街は地勢的に侵略する価値はありません。

 しかも、経済的にもゴミなので「いらんわこんな土地」という感じで押しつけあってきた歴史があるほどです。

 ところが資源が見つかってしまいました。

 これが帝国に知られたら「1000年前から我々の土地だ」とか言い出すに違いありません。

 私が相手国の王だったら絶対に主張します。

 そしたら戦争です。

 広い意味での人間、知的生命体は金のために人を殺します。

 平和だ名誉だなんだと言ってる人もいますが、基本はどの戦争もシノギをめぐる金の問題です。

 それ以外の理由で人殺しをするヤツは基本的に異常者だと思ってかまいません。

 金をめぐる戦争の行き着く先は己の存在理由をかけた農家の次男三男以降と貴族の次男三男以降連合による、間引きと言う名の全面戦争です。

 死人出まくり、疫病発生しまくり、国力落ちまくりの総力戦のはじまりです。


 なにせ金も土地もポストも有限ですから、基本的に次男三男ズは長男のスペアという人生のレールしかありません。

 ですので金と土地とポストを奪ってしまえば次男三男ズにも日の目が当ります。

 勝てば次男三男ズは自分の領地や土地を手に入れることができますからね。

 長男のスペア以外の人生が与えられるのです。

 しかも今回はエメラルドの産地というわかりやすい構図です。

 これは本気で殺し合いをするには十分な理由になるでしょう。

 なにせ命の次に大事な金がかかっていますから。

 金さえあれば嫁も家も土地も手に入るのです。

 ですので一度始めた戦争を終わらせるのは難しくなることでしょう。

 これは我が国もお隣の神聖帝国も同じです。

 特に帝国は一度ナイフを抜いたらポリス沙汰になるまで暴れるヤンキーと同じようなメンタリティなので非常に厄介です。


 負けた方は悲惨です。

 土地は領民ごと奪われ、病気発生しまくり、村潰れまくり、戦費使いまくり、貴族死にまくりです。

 革命が起こって王様の首が落ちるかもしれません。

 まるで魔王の最後です。


 ですので宝石の存在は非常にまずいのです。

 今はまだ戦争をする力はないですし、責任がとれません。

 シルヴィアというマップ兵器もどれほど有効かは自信がありませんし。

 黙っている方がいいでしょう。

 勝てる喧嘩しかしない。

 これが長生きの秘訣に違いありません。

 理由もなく襲ってくる勇者は別として。


 ということでワイバーンの処分です。

 証拠は全て隠滅しなくてはなりません。

 まずはウロコとか骨は加工用に確保っと。

 ドラゴンアーマーとかドラゴンシールドとか。

 ツメや牙、それに骨も確保です。

 剣とか槍を作れるので重要な資源です。

 血は回復薬の原料になるのでこれも確保っと。

 心臓は不老不死の妙薬の原料です。

 適切な工程を経て精製すればワイバーンのような下等級のドラゴンでも寿命が結構伸びるのです。

 ところがこの世界には製法が伝わっていません。

 私は製法を知っているのですが、製法が漏れると厄介です。

 何回か前の前世で情報が漏れたときは数万人の犠牲者が出ました。

 なのでできれば捨ててしまいたいなあと思います。

 ですが単純に血を捨てると不衛生だし臭いが酷いし量が多いのでこれはこれで厄介です。

 あと勿体ないです。

 なので一応薬は作るけど使わない方向で行きたいと思います。

 他の内臓なんかも薬にできるので加工してしまいましょう。

 一件順調そうな処分。

 ですが処分に困るところもあります。


 ……問題はお肉なのです。


 量が……半端ないのです。

 埋めるにしても燃やすにしても気の遠くなるような作業です。

 死体処理ってめちゃくちゃたいへんなんですよ!

 でも問題はすぐに解決しました。

 少ししたら頭の中に悪魔的発想が浮かび上がったのです。

 ほら、要するにドラゴンって野生肉(ジビエ)じゃないですか?


 食べちゃえばいいのですよ。

 食べちゃえば。

 ということで皆さんにお配りすることにしましたー!

 宝石取り出した後の解体作業は農民の皆様にお願いしました。


 おそらく食べきれないので、余った部分は保存用の干し肉にして領民の皆さんに配ろうと思います。



 うけけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ