エメラルド
シルヴィアも合流してドラゴンの死体を見に来た私たち。
ゼスさんも一緒です。
ドラゴンの死体は村の広場に運び込まれていました。
首は胴から離れています。
一刀両断です。
宝剣一本ダメにしましたが、据え置き式の大型弩砲でもないのにドラゴンを仕留めましたとも!
ククク。
これを仕掛けた勇者は今ごろ慌てふためいていることでしょう。
ざまあ!!!
愛と正義と友情イコール勝利という展開だけは最優先でぶっ潰させてもらいますよ!
理由もなくムカつくからな!!!
それにしてもなんだか濃厚な魔力を感じます。
チョコレート大福というかレアチーズケーキというか……
クリーム大福というか……
まるで生チョコケーキのような濃厚でまったりとした魔力です。
おかしいなあ……
「シルヴィア。魔力貸してもらえませんか?」
「なにするのだ」
私が目を向けるとシルヴィアは洋なしをがっついていました。
意地汚いですね。
「魔力使ってちゃんと調べます」
魔力による非破壊検査です。
センサーやモニタはありませんので感覚で判断しなければなりません。
「飲み込んだマジックアイテムか?」
「いやね……何かが違うような気がするんですよねえ。うーん……おかしいんですよねえ。まるでこの世界のものじゃないような……」
私がそう言うとシルヴィアが魔力を集中しました。
私はそこから漏れてくる魔力のカスで魔法を使います。
自分でもセコイと思います。
でもしかたないでしょ!
私、魔力ないんだから。
技術はあってもこれじゃ意味ないですよね。
私はワイバーンの全身をスキャンします。
なんでしょうねえ。
この違和感。
どうも首の周りに強い魔力が感じられます。
飲み込んだマジックアイテムじゃないようです。
いや……それよりも……
これはおそらく召喚魔法です。
召喚魔法はモンスターや精霊などを呼び出す魔法です。
相手の都合を考えずに呼び出すので、タイミングが悪いと攻撃されます。
そこで必要になるのが圧倒的な暴力かとてつもない交渉力です。
そして契約成立の証として呼び出すためのアイテムを渡します。
なので何かしらの触媒や門などがあるかもしれません。
私は首をさらに詳しくスキャンします。
やはり首の中になにかあります。
私は首の切断面に手を突っ込みました。
「なにやってるのだ? オーバーキルは下品なのだ」
「違いますって! ここから魔力があふれてるんです!」
私は肉をごそごそと漁ります。
すると手に骨とは違う固いものが当りました。
やはりあった。
「シルヴィア!」
私は発見したものをシルヴィアへ投げました。
シルヴィアは上手にそれをキャッチすると、まじまじと見つめます。
シルヴィアは目利きなので彼女に聞いた方が確実です。
「エメラルド……? それも傷もなく色が濃く透明度の高い……しかもこぶし大の大きさ……恐ろしいほどの高級品だぞ」
「人造品ですか?」
「いいや違うだろうな。これは天然か天然と同じだけの力を持つマジックアイテムなのだ」
「シルヴィアがそう言うのなら、そうなんでしょうねえ……それにしても……」
「召喚魔法だな?」
「ですねえ。それも相当な腕ですよ」
どうやら誰かが宝石を触媒にして、凶暴でバカ強い怪獣を召喚しているようです。
しかも相手は知性のないワイバーンです。
つまり召喚主はワイバーンより強いはずです。
うんわー……めんどくせえ。
ですが、これでこの領地の問題がある程度解決するかもしれない可能性が出てきました。
「シルヴィア。こいつはラッキーです」
「うむ」
「私にはさっぱりわかりませんな……」
ゼスさんは怪訝な顔をしていました。
「ゼスさん。このエメラルドの価値がおわかりですか?」
「いえ、自分は宝石などは苦手で……」
そうでしょうねえ。
見た感じ「成分:騎士100%」って感じですもん。
こういうのは不得意でしょうねえ。
「重さ1キロって所ですかね? 原石じゃないですけど、カットして半分になるとして500グラムか。はいシルヴィアちゃん。この石の価値は?」
「価値は算定できない。このサイズだと市場に出せない。国宝クラスなのだ」
「ですよねー。んじゃ少し寝かせてから割りましょう」
「はい?!」
ゼスさんが声を上げました。
シルヴィアはうんうんと頷いています。
「売るのだな?」
「そうそう。ほとぼりが冷めるまで寝かせてから手頃なサイズにカットして売るのです。そしたらそれを全部復興資金にあてましょう」
ゼスさんが口をパクパクとさせていました。
まあ普通は反対しますよね。
だって国宝クラスですもん。
「はい。今からここはエメラルドの産地。でも有害鳥獣がたくさん出て危ないから宝石が採れるのは内緒。どうです? いい感じでしょ?」
「は、はあ……」
私は途中の説明を飛ばして結論だけ言いました。
とうとうゼスさんは会話について来られなくなったようです。
しかたない。
ちゃんと説明しましょうか。
「つまりですね。他の怪獣も倒せば宝石を落とすと思うんです。かなりの高確率で」
相手は宝石魔術の使い手です。
つまり怪獣を倒せば宝石怪獣の中に宝石が埋まっているはずです。
これは、お金を稼ぐチャンスなのです!
「なるほど!」
どうやらゼスさんにもわかっていただけたようです。
「そういうことで領民の食い扶持を怪獣退治で確保しましょう!」
「はい!」
ゼスさんに、はじめて良い返事をもらいました。
やる気でたわー。
「さあて、ゼスさん。守備兵団を動員してください。狩りを始めますよ」
私はにっこりと笑いました。
こうして狩るものと狩られるもの。
私たちと巨大怪獣との死闘の日々が始まったのです。




