プロローグ 回るお寿司と埼玉
みなさまこんにちは。
魔王でございます。
俺、ボク、アタシ、麻呂……
男性も女性もやっているせいか一人称がブレブレですね。
なににしようかな?
うーんどれもしっくりこないので無難に『私』とさせていただきます。
口調が男女どっちつかずで多少気持ち悪いのはご勘弁を。
そうそう、転生転生。
私、何度も魔王やってるんですね。
前世で。
コンティニューとか二週目にステータスとアイテム持ち越しとか、まあ、そういう感じです。
私は魔術含めた知識の持ち越し。
簡単に言うと圧倒的な知識で愚民どもを導く私カッコイイです。
便利ですね。
努力なんかしなくてもいいんですよ。
難易度超イージーですね。
……現実はそれほどスイートではありませんけどね。
新しい技術や知識や考え方を受け入れられるのはチートレベルで民度が高くないと無理なんですよ。
なので私はいつも既存の派閥の調整役です。
そんな便利な生まれ変わりですが、職業は魔王固定です。
何度生まれ変わっても魔王。
魔王は世界を滅ぼすというパフォーマンスをしながら勇者に殺されるのを待つだけの簡単なお仕事です。
もっと詳しく書くと、この世界になんの義理もないような転生勇者にハーレム作りたいとかの理解不能なクソ舐めた理由で愛と勇気の理不尽パワーで惨殺。
……具体的に言うとレベルMAXの勇者に『たたかう』コマンド連打だけの舐めプ(舐めたプレイ)で虫けらのように抹殺されるお仕事です。
かと言って魔王も黙って殺されるわけにはいきません。
全力で抵抗を試みます。
私は最後まで足掻くタイプですからね。
みなさんは『なぜ王様がショボい剣とガキの小遣い程度の現金を持たせて勇者を死地に送り出すか』ご存じですか?
答えは、『そのくらい追い込まないとすぐに殺しにやってくるから、魔王は念入りに勇者の現れた周辺は経済を崩壊させておくから』です。
この初動であと何年生きることができるか決定します。
これテストに出ますからねー。
魔王経営総論とか?
ノートは持ち込み可ですよ。
と、威張っても所詮は魔法の浅知恵。
それだけやっても無駄にしぶとい勇者にあっさり殺されてしまうんです。
そんな哀れな魔王の死体の前で、無軌道な若者である勇者とヒロインはベロチュー。
うっわだせー。
この魔王死んでるんですけどー。
超うけるー!
ぱしゃぱしゃとカメラのシャッター音が鳴り響くことでしょう。
……なぜ魔王だけがこのような目に遭わないといけないのでしょうか?
実に理不尽です。
職業選択の自由を要求する!!!
私が怒るのも無理はありません。
これまでの私は勇者に聖剣でサクッと刺されたりとか、勇者にゴアアって丸焼きにされたりとか。
常にそんな感でした。
もう何度殺されたかわかりません。
悪事もたいした事してませんよ。
自分の生存のためにやったことですから。
つい先ほども同じでした。
~埼玉県川口市(※異世界)~
きゅいーんどかーん。
やる気の感じられない擬音を響かせながら黒塗りの外国メーカーの乗用車……じゃなくて豪華な馬車が、回るお寿司……じゃなくて超高級寿司店から出てきた私たちに突っ込みました。
物理的に炎上する乗用車。
一緒にいた護衛は虫の息です。
これはやべえなと、私は焦りました。
案の定、ベンツから現れたのは黒塗りのスーツで身を固めたXX組のヒットマンじゃなくて、勇者パーティの戦士さん。
この辺ではあまり見ない人間さんです。
その手には黒く光る聖銃トカ●フを持っています。
「おどれ命獲ったらー!!!」
戦士の攻撃!
乾いた音が響き、聖銃●カレフの弾丸が私を蜂の巣にしました。
でもまだ死にません。
魔王はしぶといのです。
「おどれボケエ!!!」
生命力はゴキブリ並みだよねと褒められることの多い私が、血まみれの姿で必死に逃げます。
が、魔王の一生とは理不尽かつ残酷なもの。
「わりゃあ死ねボケェッ!」
あっさり追いつかれて、背中から勇者による聖剣ドスブレードの一撃が振り下ろされました。
クリティカル★ヒッツ!
「いでええよー!!!」
っちょ!
超痛い!
魔王だって攻撃喰らったら痛いんですからね!
魔王だってけなげに生きてるんですからね。
なにこの一切手加減のない攻撃!
ところが勇者というのは残酷な生き物です。
自分たちの尺度で測れない生き物は最初から存在しないと思ってやがります。
踏みつぶしても良心の呵責もないのです。あのクズどもは!
SNSで「魔王は相手に対してなにも提供出来ないゴミ」とか平気で書きやがるのです。
彼らは修学旅行の時に「友達と班を組んでねー」と言う教師よりも残酷なのです。
そんな彼らは非情にも虫の息の私にトドメとばかりに究極魔法シュ☆リューダーンを投げつけました。
ちゅどむ。
シュ☆リューダーンは私の下で爆発。
爆発でバウンドする私。
非モテはゴキブリより酷い扱いです。
魔王は爆発だー!
はい。
サクッと死にましたとさ。
めでたしめでたし。
めでた……
「……」
イラッ。
「……」
イライラッ!
「……責任者出てこい。殴るから」
静かにキレた私ですが、時すでにお寿司……じゃなくて遅し。
まるでカルフォルニアロールのようなサイケデリックでカオスな光が見えて参りました。
あー……死ぬのわかってたら300円の皿も食べときゃ良かった……金色のやつ。
あとデザートも。
ちょっと年齢的に恥ずかしかった、子ども向けのジュースも取って。
アイスも食べて。
締めにラーメンと。
って最近の回転寿司屋なんでもあるな、おい。
まあもう肉体ないんですけどね。
イッツ魔王ジョーク!
と、どや顔したかったんですが顔が動きません。
クソ、とうとう死んだか!
ところで、私を殺すと発動する大量破壊魔法があったんですがどうなったんでしょうね?
まあ、うまくいけば解除できるんじゃないですか。
超高度な暗号での5重ロックと指紋認証と網膜認証かけて、人間領の5つの場所に分散した解除ポイントで同時解除が必要なうえに解除した瞬間、解除ポイントで核爆発が起こるようにしましたけど。
全人類の何割かが死ぬかもしれませんね。
あ、狂ってなんかいませんよ。
本気で絶滅させる気だったらコロニー落としをしますので。
質量兵器最強です。
人間はこのくらいやらないと私の死後に交渉のテーブルに着いてくれないんです。
いじめと同じ理屈です。
いじめっ子を倒せる暴力を持ってなければ、いじめっ子はいつまでも調子に乗って叩き続けます。
どんな教師の言葉よりも一発殴ることこそ大切なのです。
同じように魔族が人類の脅威になる程度の力を持っていることを理解させなければ、人類はどこまでも調子に乗ります。
魔族絶滅とかも本気でやります。
人間ほど残酷な生き物はいませんね。
狂ってる連中には狂った方法で対抗するしかないのです。
それにたぶん勇者が姫様との愛のパワーでなんとかするんじゃね?
知らんけど。
もう死んでますし。
ちゃんと私はお仕事を終えましたし。
あー眠い。
アレですねー。
こりゃ転生間近的な感じですねー。
さーよーおーなーらー……




