小説風会話劇「小さな温もり」
この会話はフィクションです。
ちいさなココロ。
とくとくとくとく
リズムを刻む。温もりの音。
生きている。
ちいさなココロの音楽は、
とくとくとくとく
時間を刻む。
「うふ、」
「…。」
「うふふふ、」
「……。」
「うふふふふ〜…」
「………。」
「かーわーいーいーーーーー♪♪♪♪♪」
「…うるさいぞ姉貴。」
「なによぉ、弟。文句あんの?」
「一体何時間そうやってる気だ?」
「気の済むまで♪」
「…その、気の済むのはいつだ。」
「未定♪」
「はぁ………。」
「うふふふふ〜♪♪♪」
「そんなに眺めてたいなら、ケージごと貸してやるから、自分の部屋につれてけば?」
「だめよっ!」
「なんで。」
「見知らぬ場所につれてったら、リュートちゃんが怖がるじゃない!」
「だからって、四六時中俺の部屋に押しかけられても困る。」
「いーじゃないのぉ。姉弟なんだから。」
「よくない。俺にもプライベートやプライバシーがある。」
「何よ。エロ本?」
「堂々と言うな。」
「いーわよそれくらい。エロ本やAVくらいでとやかく言う姉様じゃなくってよ。」
「違う。」
「なんなら今観てもいいわよ?」
「違うっての。」
「あ♪リュートちゃん食事タイム〜♪♪♪」
「…………はぁ………」
こりこりこりこりこりこり………
「えふふふ〜♪」
「…なんだその不気味な笑い方。」
「ウサギがペレットかじる音ってさぁ………癒されるわよねぇ…♪♪♪」
「まぁな。」
「小気味いいこのリズム………着メロにして聴いていたいわ♪」
「…ウサギ中毒だな、姉貴。」
「ん〜?ウサギ中毒?。失礼な。撤回しなさい。」
「だってめちゃくちゃはまってんじゃん。」
「私はウサギ中毒じゃなくて、小動物中毒よ!」
「…は?」
「愛らしいものは数知れず。ウサギのペレットをかじる音。猫の顔を洗う仕種。犬のフリフリ揺れるしっぽ。小鳥の頭かいてポーズ。ハムスターのほおぶくろパンパン状態…」
「次から次に出て来るな。」
「カエルのキョロキョロ動く瞳。金魚の優美な水中ターン。弟クンの寝顔。」
「……………は?」
「弟クンの振り向き顔。弟クンの風呂上がりの髪の毛。弟クンの」
「待て待て待て待て!」
「彼女とやり取りしてるメールの文章。」
「こらストーカー!」
「な!ストーカーとは何よ!」
「弟のメールを勝手に見るな!」
「大丈夫。彼女とのメールしか見てないから。」
「それが一番見られたくないんだよ!」
「仕方ないじゃない〜。愛らしい弟クンに何かあったら嫌だもん。」
「だもん、じゃない!そんなんだから未だに彼氏が出来ないんだぞ。」
「私には小動物がいるから大丈夫♪」
「…俺は小動物と同列か?」
「うん。」
「即答するな!」
「お?照れてんのか?」
「なんでそうなる。」
「照れるとは可愛いやつめ〜。心臓の音を聴いてやろう♪」
「なんでそうなる!」
とくとくとくとく
ココロは刻む
命の音を。
ヒトもウサギも
ココロは刻む
温もりの音を。
生きてる証。
とくとくとくとく
「…気が済んだか?」
「…うん。」
「ったく…心配し過ぎなんだよ。」
「うん…わかってる。」
「いい加減弟離れしないと、本当に彼氏出来ないぞ?」
「…うん。」
「もう無茶な運転はしない。もう事故らない。もう死にかけない。もう姉貴に心配かけない。もう姉貴を泣かせない。」
「………。」
「約束は守る。」
「………絶対、だからね。」
生きている限り
温もりの音は続いてく。
どんなに小さな温もりでも、
大切な、
ココロの温もり。
とくとくとくとく
今日も、
音は刻まれる。
ちょこっと、温かい気持ちになっていただければ、幸いですo(^-^)o。