恋
週に一度、こうして会うようになって。
……もうどれくらいだろう。
たわいない、日常の話はしているのに。
タケルは。
……やっぱり名前以外、自分のことを話さない。
「リコ?」
優しい笑顔。
今、隣に。
確かにタケルはいるのに。
心の中にいつも不安がある。
「今日はあまり話さないね」
いつもの公園の、いつものベンチ。
待ち合わせはいつもここ。
別れ際に、次に会う日を約束して。
どこに行くでもなく、何をするでもなく。
ただ、話してるだけの時間。
案外、説教っぽいこと。
笑った顔が、素敵なこと。
猫が好きなこと。
甘いものが苦手なこと。
話すときに、私の目をじっと見ること。
私以外には無口なこと。
話し方にクセがあること。
……時々困った顔して笑うこと。
タケルのこと、たくさん知ってる。
でも ―――――― 何も知らない。
「タケルって……高校生だよね?」
「……うん」
「……どこの高校?」
「……」
「名字は、なんていうの?」
「……」
「どこに住んでるの?」
「……」
ただ困ったような顔して笑う、タケル。
「どうして聞くの?」
「……知りたいの、タケルのこと」
「俺はここにいるよ。リコの前に」
首を振る。
「それだけじゃ、だめか?」
タケルが困ってる。
少し苦しそうな顔をして。
そうすると。
涙が、出てくる。
どうしたら、この胸のうちをわかってもらえるだろう。
この不安を。
「だめじゃ、ない。……だけど、不安になるの」
「……」
「ある日突然、会えなくなりそうで。タケルが、どっか遠くへ行っちゃいそうで……!」
「リコ……」
こんなふうに、人前で泣いたのは初めて。
困らせているのはわかってる。
だけど。
不安が、大きくなって、私つぶされちゃいそうだから。
お願い。
助けて、タケル。
「私……タケルのことが好き……」
ごめんね、タケル。
困らせるようなことばかり言って。
自分の気持ちばっかり押し付けて。
タケルの腕が、私を。
「リコ……」
きつく抱きしめられて。
耳元で、タケルの声がする。
「俺も、リコのこと……」
私の腕がタケルを抱きしめる。
「……ごめんな。不安にさせて。でも。……まだ……」
「もういい。……もういいよ、タケル」
タケルの気持ちがわかった。
もう……それだけでいい。
不安は消えないけど。
それに負けないように。
タケルを……信じよう。
苦しめたく、ないから。
私を、きつく抱きしめるタケル、を……。




