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タケル  作者: 恵奈
3/13

 



 週に一度、こうして会うようになって。

 ……もうどれくらいだろう。

 たわいない、日常の話はしているのに。

 タケルは。

 ……やっぱり名前以外、自分のことを話さない。


「リコ?」


 優しい笑顔。

 今、隣に。

 確かにタケルはいるのに。

 心の中にいつも不安がある。


「今日はあまり話さないね」


 いつもの公園の、いつものベンチ。

 待ち合わせはいつもここ。

 別れ際に、次に会う日を約束して。

 どこに行くでもなく、何をするでもなく。

 ただ、話してるだけの時間。


 案外、説教っぽいこと。

 笑った顔が、素敵なこと。

 猫が好きなこと。

 甘いものが苦手なこと。

 話すときに、私の目をじっと見ること。

 私以外には無口なこと。

 話し方にクセがあること。

 ……時々困った顔して笑うこと。


 タケルのこと、たくさん知ってる。

 でも ―――――― 何も知らない。


「タケルって……高校生だよね?」

「……うん」

「……どこの高校?」

「……」

「名字は、なんていうの?」

「……」

「どこに住んでるの?」

「……」


 ただ困ったような顔して笑う、タケル。


「どうして聞くの?」

「……知りたいの、タケルのこと」

「俺はここにいるよ。リコの前に」


 首を振る。


「それだけじゃ、だめか?」


 タケルが困ってる。

 少し苦しそうな顔をして。

 そうすると。

 涙が、出てくる。

 どうしたら、この胸のうちをわかってもらえるだろう。

 この不安を。


「だめじゃ、ない。……だけど、不安になるの」

「……」

「ある日突然、会えなくなりそうで。タケルが、どっか遠くへ行っちゃいそうで……!」

「リコ……」


 こんなふうに、人前で泣いたのは初めて。

 困らせているのはわかってる。

 だけど。

 不安が、大きくなって、私つぶされちゃいそうだから。


 お願い。

 助けて、タケル。


「私……タケルのことが好き……」


 ごめんね、タケル。

 困らせるようなことばかり言って。

 自分の気持ちばっかり押し付けて。


 タケルの腕が、私を。


「リコ……」


 きつく抱きしめられて。

 耳元で、タケルの声がする。


「俺も、リコのこと……」


 私の腕がタケルを抱きしめる。


「……ごめんな。不安にさせて。でも。……まだ……」

「もういい。……もういいよ、タケル」


 タケルの気持ちがわかった。

 もう……それだけでいい。


 不安は消えないけど。

 それに負けないように。

 タケルを……信じよう。

 苦しめたく、ないから。


 私を、きつく抱きしめるタケル、を……。






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