出会い
帰ろうとしたときだった。
その人は校門の脇に立って、誰かを待ってる様子。
―――――― ドクン。
心臓の音が大きくなって。
他の音が、私から遠ざかって。
………息が止まる。
似てるだけ。
他人の空似。
目が吸い寄せられるようにして。
その人を見つめてしまう。
交差するように。
その人の視線が、帰ろうとする人の群れをさまよう。
誰かを探してる………?
こんなふうに、他校の制服を着た男の子が、誰かを待っているのは日常の風景。
見慣れた光景なのに。
ドクン………
その人の視線が、私に止まる。
ドックン………!
近づいていく距離。
うつむいて、通り過ぎようとした私を。
声が、引き止めた。
「カシワギ………リコさん?」
―――――― 心臓が止まるかと思った。
振り向いた私の目に。
懐かしさを覚える、笑顔が見えた。
「コレ。………君のだよね。ハイ」
差し出された手の中に、定期入れ。
見覚えのあるそれは、確かに私の。
あわててかばんの中を確かめた。
「………アリガトウゴザイマス」
受け取りながら。
優しい笑顔を見つめる。
やっぱり………すごく似てる………。
だけど………。
「………じゃあ」
その人は、そう言って、歩き出した。
その背中を見つめる。
………どうしよう。
次の瞬間、身体が動いた。
意識はしなかった。
たぶん、心が命じた。
「あの! お礼にお茶でも………」
その人の腕を、つかんでいた。
困ったような笑顔のあと。
その人はうなずいた。
その人の名は ―――――― タケル。
名前のほかは、何も言わない。
笑顔のまま、私の話を聞いているその人。
それは………記憶の中の人と、重なった。
奇妙なもので。
私の時間は、11年も進んでいるのに、
その人はまるで止まったように、あのときのそのままに。
………同じ人な訳ないのに………。
それでも、心がどこかざわついてる。
目の前の人は、あの人とは違うのに。
絶対に違うのに。
こんなに。
こんなに、気になるのは ―――――― ?
「タケルくん。あの………また会える?」
別れ際。
そう言った自分に驚いた。
「あー、………。………タケル、でいいよ」
困ったような表情のあと、笑顔になって。
「タケル………」
名前をつぶやいた私に。
「1週間後。またこの公園で」
少し、照れたようにそう言った。
約束を残して見えなくなっていく後姿を。
ずっと、ずっと、見つめて。
………胸が………イタイ。




