運命
一瞬、どこか分からなかった。
突然時間の流れから放り出されて。
「あーんっ」
子供泣き声。
トラックの轟音。
一瞬手遅れかと凍り付いて。
振り向くと、そこに。
幼いリコがいた。
考えるより先に、身体が動いた。
道路の真ん中で泣いてる、小さなリコめがけて。
突っ走る。
迫り来る大きな車体に。
愛しいその存在がかき消されてしまわないように。
……どうか間に合って……!
指先に触れた、リコの、小さな身体を。
……思い切り…………………………。
たどり着いた先。
望んだ時間の中。
目に飛び込んできたのは。
もっとも、見たくなかった……。
―――――― その瞬間。
幼い私の身体を突き飛ばしたあと。
タケルの身体は。
……宙に舞った。
記憶が、入れ替わる。
助けてくれた「お兄ちゃん」の顔を。
……私は、どうしても思い出せなかった。
地面にたたきつけられたタケルの身体は。
少年によって、切り取られた時間の中。
静かに横たわっていた。
傷ついた、その身体。
―――――― 胸が、壊れてしまう。
―――――― 何も考えられない。
激痛が俺の意識を支配する。
頭の中で、何かが大きな音で鳴って。
破裂するような痛みの中。
リコ?
リコが……泣いてる。
もう、会えないと思っていた、
俺の……。
大きな瞳に、俺を映して。
「タケル……、タケル……っ」
その声が。
何度も俺の名を呼んでる。
……泣かない……で。
伸ばした手を。指を。
血に染まったそれを。
タケルの指が。
私の前髪をかき上げて。
「良かった……キズ、なくなってる……」
「……!」
「俺、リコのこと、守れたんだな……」
そう言って微笑むタケルの額。
私の傷のあったその同じ場所から、血が溢れてて。
「こんなの……、平気だって言ったじゃない!」
そんなことの為に、
タケルは、自分の身をかばわなかったの?
「リコ……良かった……」
痛々しい笑顔に。
何も言えなくて。
―――――― タケルの愛は。
タケルの愛はなんて大きいんだろう。
目を閉じて痛みに耐えるタケルの姿が。
涙で見えなくなっていく……。
指先の熱が失われていく。
リコに触れた俺の指が、俺のものじゃなくなっていく感覚。
リコ、リコ……っ!
この心を、リコに残していけたらいいのに。
リコのそばに、いつもいられるように。
もっと、抱きしめたかった。
もっといっぱい伝えたい言葉があったんだ。
もっと。……もっと……。
愛してると。
何度でも言いたかった。
キスをして。
その身体が折れるぐらい。
強く……抱きしめて。
君を……守れて……。
よ かっ た……。
俺 の時 間…… が
止ま る……――――――
「リコ……笑って……?」
そう言うタケルの身体が、冷たくなっていく。
手を強く、強く、握って。
苦しいはずなのに。
きっと最後の力で、ほほえんで。
タケルは。
そのまま、目を閉じた……。
がくりと、その身体のすべての力を失って。
タケルの指は、私の手の中から、すべりおちた……。
もう動かない、タケルの身体。
きつく。―――――― きつく。
抱きしめて……。




