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「……な、何で勢揃いするの!」
俺とサトシの前に、カスミは歩いていた。
ユウマが教室を去った後すぐ引っ張り連れ出し、その場を抜け出すことに成功したものの、カスミは不服とばかりに苦言を呈す。
「『凰巻財閥』、『雨城製薬』の令嬢が出てくるとはなー。てか俺ら、その二人の令嬢が当初の監視対象だっただろ?」
サトシの言う通り、元々はあの二人の令嬢のことを調べることだった。
管轄外、そう思われる警察や探偵みたいな捜査は、しかし俺達の部隊と関係が本当に浅いとは言い切れない点がある。
まず凰巻財閥だが、「たまたま掘り当てた財宝で成り上がった出来立ての財閥」であることだが、その「財宝」に少々問題がある。
そしてその部分は雨城製薬にも言えてしまうことで、そちらは「未確認の植物から画期的万能薬を開発した」ことで浮上した製薬会社であること。
共通点は『現代、過去に存在し得ない物を独占している』こと。財宝はいくつか創作に出てきそうな鉱物で作られていたり、薬品も効き目が異常なこと。
「……どちらも今のところ不明だが油断できないことだ。一般生徒一人に手間取ってる暇ないだろ、うち?」
サトシの言うことに、しかしカスミはキッと睨まれてしまう。
「……ほぼ同時期、三人の関係性、そして何より……『総督』の反応。危険視するのは『平和 湧磨』の方よ!」
と冷静さを取り戻したカスミは、しかしそれでもしかめる。
『…『平和』、か……こちらは君達は不干渉で構わない。』
それは俺も思うところはあった。だが、
「あくまでも俺たちは公的組織だ。上の判断を無視するのは厳罰物だ。」
「もう、ハジメま……で…………」
と困った顔をしていたカスミは、途中で目を見開いていた。その視線は、俺の、後ろに向かって。
「ねえねえ君たちさー。」
その瞬間冷気が駆け抜ける感覚をおぼえた。その声は数分前に聞いた。
振り返ると、『煤野 麻央』が灼眼に似つかわしく無い冷たい瞳で、一点を見据えて口を開く。
「君達は、ユウマの敵?」
「違う! 俺たちは彼に危害は加えるつもりなどない!!」
考えるより先に口にしていた。数巡、迷った瞬間が命取りのような気がして。
「……そっちの子は、そうは見えないなー?」
と、見据えられてたカスミに問う。振り返るとカスミは先ほどと比べられないほどに動揺して、
「……信用できるものがない。だから、私、は__」
しかし嘘偽りなく彼女はそう答える。
マズイ、そう思った時には
「あ、動かないでね?」
マオは瞬間移動したかのように瞬きした瞬間カスミの前に立っていた。
「…おどし? そ、そんな事……で、私は引かないから!」
振り絞るように啖呵をきるカスミに、背中を向けられて表情は見えない俺とサトシは、覚悟を決めて動くべきか迷ってしまった。
「……いいね、この世界にもいるんだね」
マオは軽くチョップした。呟く言葉を聞き取ることはできなかったが、次の瞬間には寒気が嘘のように消え、先ほどの活発そうな令嬢に戻っていた。
「いーよいーよ! ま、君ならちゃんと彼の事判断するでしょ?」
とカスミの横を抜け、スタタっと走っていった。
角を曲がる直前振り返り、
「あ、でも恋愛感情持ったら死ぬ覚悟してね?」
と笑って消えた。カスミはそれを見届けるとパタン、と倒れてしまった。




