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それはまるでラブコメ漫画のように(あまり読んだことはない)、扉から大声で彼を呼ぶ女子が、次の瞬間に彼のお腹目掛けてタックルして、机と共に崩れてしまった。
「ユウマ〜、待っててくれたんだよね! 大好き!!」
「いって……待つかバカ、手が離れやがれ。」
「うー、いけずー。」
「どこで覚えてきやがったそんな言葉……」
とユウマは抱きつく赤髪の女子を引き剥がそうと頬を押し返している。
ある程度満足した表情で離れた女子に、ミサの時と同じ動揺が周りに湧き立つ。無理もない、彼女もこの学校では一年生ながらに有名人なのだから。
『煤野 麻央』
一見して美少女。彼女もユウマ同様招待枠ではあるが、同時期彼女からも裏から入学手続きをしてきた。ユウマの後だったからか丁度送ったタイミングで話が来たから驚きいたのが最初の印象になる。
裏で、ということで分かることから彼女は『お嬢様』と呼べる身分である。それもつい最近、一月の半ばごろから突然沸いた『凰巻財閥』の表向きは身内の令嬢なのだ。
そんな令嬢様がユウマと繋がりがあるのを知ったのは最近。ユウマが借りてるアパートの隣に先月引越してきて、彼らの会話から『幼馴染』だと分かっている。
しかもまだ驚くことがあり、
「マオ、カバン忘れてる。」
とまたも扉から入ってきた藍色の髪の女子が困り顔で入ってくる。
『傘木 優華』
同じく一月半ばに医学革新で一躍大企業になった『雨城製薬』の令嬢。
彼女も同時期にユウマの隣に引っ越してきた。
ユウカはマオほど彼に固執はしてなく、どちらかと言えばマオを世話している感じだ。それはまるで姉妹のような関係性で。
「あ、ごめんねユウカ! ありがと。」
「はあ…あれ、コナカさんは?」
「ああ、アイツは午後からバイトだから先帰った。」
「……キキ、教室で待ってたよ?」
「「………終わったな。」」
マオとユウマはそう呟きヤレヤレと首を振る。
「…ま、俺もバイトだしついでに声かけて帰るか。」
「えー、今日は一緒に遊ぼうよー」
とユウマは既に帰る支度を済ませてた鞄を持って席を戻して扉に向かった。
「んじゃ、また明日なハジメ、サトシ!」
と二人に声をかけるとダダっと走っていった。
「あ…ごめんユウカ、先行ってて。」
てっきりそのまま追いかけるかと思ったが、マオはそう言いユウカを見送る。
美少女二人が彼と知り合いということがクラス内でちょっとした騒ぎとなる中、マオはユウカの背中が見えなくなったのを確認するとニコッとした表情で、ミサの近くに、耳元で囁く。
「……ほどほどにね?」
ゾッとした。声音は普通なのに背筋が凍る。初めての戦慄。
「かめら、だったかなー? 殺意以外にも感情って分かるんだよ? 彼の守備範囲外だから観察するのはいいけど、少し考えたほうがいいからね?」
と、言いたいことを言い終えたからか、マオはスッと離れスタタっと走り去った。
「……こわ〜」
と、ミサは窓から見える空を見ながら、次の瞬間には力が抜けて近くの椅子に座った。




