※※※
「…ぱーいせんっ、暇っすねー。」
「…………」
「何すか本なんか顔に乗せて。汚れますよー?」
「…………」
「……はあ、ホントのどかっすねー。」
深夜3時、後輩が愚痴るのがうるさく無視しているが、構わず話すから結局うるさいまま。
「……ぱ、い、せ、ん! 暇なんでなんか話しましょーよー。」
「…部長さん、こいつ叱っていいっすからね。俺ら表向きは部下ですし。」
「あはは、はいカナヤちゃん、喫茶カミキのサクラタルトだよー。」
「わー! 部長さんありがとっす!」
「サイカァ!!」
と、今日も派出所の部長に甘やかされる『金谷 才加』に俺は眉間に親指をトントンとさせ怒りを抑える。
「まあまあサトウ君もどうぞ。あ、コーヒーはブラックだったね。」
「わーパイセンおとなー!」
「……あざ__ありがとうございます。」
「ふふ、じゃあ僕は少し仮眠をとらせてもらうね。ごめんね二人とも、何かあったら遠慮なく叩き起こしてね?」
「ぶちょー、このバカは本気にするのでそんな冗談はやめましょー。」
「ぶ、そんなことしませんよ!! もー、私をなんだと思ってるんすかパイセンはもー。」
それについて、あげればキリがないからあえて無視して俺はポケットから【警察手帳】を取り出す。
そこには俺の半年前の警察服姿と、『佐藤 敦』と書かれていた。
そう半年、まだ半年しか経ってない若造が二人、今は私服警官として、表向き派出所半年の警察官をしているが、とある事を機に先月辞令がおり、特殊な事件の専門捜査官となった。
だがそれは一箇所にとどまるものではないのだが、ここ【粉吹市】は別。まして俺たちはその中でもかなり重要な案件の渦中に巻き込まれた経験から今こうしておかしな経歴を歩みかけているわけで、堅実に行きたかった俺はいま、すごくモチベーションが下がっていた。
そう、決してこのような電話を受けるためにいたわけじゃないのだ。
「はい、粉吹市派出所です。」
瞬時に人格が切り替えたかのように、サイカが電話をとる。
「……わかりました、今すぐ向かいます。」
サイカは受話器を置くと同時に椅子にかけた上着を羽織る。
その動作に瞬時に理解し、俺も立ち、目だけで合図する。
「部長、すみません俺ら出ます。」
「そうか、気をつけてな。」
「「はい!!」」
俺たちは大きく返事をして、派出所を後にした。