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「…おいおい、また見てるのか?」
頭を拭きながらサトシが入ってきた。中は少し広めのリビングで、しかしその大半を機材が占領していた。
ハジメはホットココアとブラックコーヒーを手にキッチンから戻ってきて私とサトシにそれぞれ渡す。
「げ…砂糖はいってねーじゃん。」
「文句言うなら自分で作りなさいよ。ハジメ、ありがと。」
「…う……ハジメと他で温度差がすげーけど、ヒラナゴはもっと冷てーな。そんなに悪いやつじゃねぇと思うが?」
「そうだね。……僕に比べれば、彼はただの普通の高校生だよ。」
「ハジメまで! あいつのあの手品見てまだ信じるの? あいつ、絶対何かやるわ。早めに手を打たないと!」
「……俺ら的にはススノが危険な気がするがな。」
その一言、いえその人名に一瞬学校での一件を思い出しゾワッと背筋に悪寒が走る。
「…でも、少なくとも煤野 麻央も手玉に取れるヤツとも言えるのよ。注意すべきはやはり彼よ。何より、アレは絶対『手品』で証明できない……『特異対策』案件よ。」
と、私は再度、とあるネットに上がっていた動画の最初に戻した。
『…タネも仕掛けもございます』
「…タネなんて、『異能』でしょ。」
ここまで執念深くなってしまったことが、この時起こった事件に遅れをとることに、悔やむ事になることを知るのは翌日のことだった。