XX1
「おいミサ、いつまで寝てるんだよ」
今の時代に、荒廃した土地に似つかわしくない近未来的拳銃を放ちながら、同年代の男子がこちらに近づいてきた。
【ボク】は木陰に寝そべり空を見上げるが、そこに普通の空はない。
数年前、本格的に【宇宙】が攻めてきた。人類の八割以上が滅亡し、人工物はおろか、自然もボロボロ。
ただ、それでも不思議なことにボクの頭上の大樹だけは多少ボロボロながらきみ悪いほどに現在で木陰を作ってそよ風に葉を鳴らしていた。
「…1258日目。いや458日前は神側まで来て両ばさみ。幸い【神】と【宙の民】が歪みあってるだけ。」
「だけって、それで被害被ってるのこっちな。神ってのも今の俺らを救済してくれねーとかやってらんないぜ」
「……なに、【ユウ兄】になりきってるつもり?」
ボクは上半身をあげ速攻で拳銃を向けた。
「ちょちょちょ、ストップストップミーちゃん!?」
と、ひょこっと男子の背後から顔を出して手を両手にあげて振る女子に、ボクはため息と共に腰にさす。
彼は引きつった笑みで頰をかく。
「いや、マジでユウマさんの憧れはあったけども、そこまでおごってねぇって。……この銃だってお前ありきだしな。」
「ほんとほんと!さすが世界最高峰の頭脳ってだけあって超科学の宙の民と渡り合えてるのもミーちゃんのおかげだしさ!」
と女子も持ち上げるように賛同する。そんな二人を、多分ジトーッとした目で、再度ため息をつく。
「てか、それこそミサの方がそうだろ?ユウマさんを兄みたいに慕って」
「と言うかもう信仰レベル? 恋愛感情ホントはあったんじゃないのー?」
「…ない。ボクは【マオ姐】を応援してたから」
「うー、そうだったー……」
と思った回答を得られなかったからか口を尖らせる彼女に三度、ボクはため息をついた。
「……それに、超能力も、科学も………まだあの人の【魔法】には届いていないんだから」
夕暮れの空に手をかざし、ボクは___ミサは今は届かない背中に思いを馳せる。
これは英雄となった少女の、数多の可能性の【起源】
とある一人の【魔導師】の物語