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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
立派な魔法使いへ

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頼もしい助け

 増援として来たクライトンの仲間を倒した事で一息ついていると、再び足音がした。ただ、今回は階段からじゃなくて、この階から音がした。つまり、私が開けた穴から入ってきたという事だ。

 私は、すぐに穴の方に向けて杖を構える。でも、すぐに杖を下げる事になった。そこにいたのは、冷音さんだったからだ。


「冷音さん!」

「水琴さん、恵さん。二人とも無事ですか?」

「えっと、一応、応急処置はしてあります」


 私もめぐ姉もあの厳つい男の攻撃を身体に受けている。めぐ姉は魔法で、私は美玲さんの魔力を使って治療したけど、それでも完治しているかは怪しい。なので、応急処置という風に伝えた。


「そうですか。美玲程の腕はありませんが、確認はしましょう」


 冷音さんが私とめぐ姉の診断をしてくれる。冷音さんは器用な人なので、色々と出来る事が多いみたい。師匠と少し似ている。


「私が治療をする必要はなさそうですね。一応、二人ともこのネックレスを掛けておいてください。マーキングと自然回復力を上げる効果を付けてあります」


 冷音さんからネックレスを受け取って首に付ける。少しだけ身体がぽかぽかするような感じがする。自然回復力が上がっている証拠なのかな。


「それにしても、塔の壁に穴が開くとは思いませんでした。余程の強敵がいたようですね」


 冷音さんは塔に穴を開けたのは、敵の仕業だと考えたみたい。


「あっ、それ私です……」


 私が手を上げながらそう言うと、冷音さんは驚いた表情をしていた。私の修行は、冷音さんも見学した事がある。だから、私に穴を開けるような実力がなかった事も知っている。そこで、現状と一致しないから困惑しているのだと思う。


「どうしてか分かりませんけど、私の中の魔力が融合したみたいで……」

「っ! 身体に異常は!?」


 冷音さんが私の両肩を掴みながら訊いてくる。冷音さんが焦るという事は、それだけ危険な事があるという事だ。これまで融合の気配すらなかった状態からの融合だからって事もありそうだけど。


「いえ、特には」

「そう……ですか……茜がいないのは痛手ですね。水琴さんの現状がわかりません。魔力の制御は出来ていますか?」

「多分、出来てないです……」


 その結果が、冷音さんが入ってきた塔の穴なので、正直に答える。すると、冷音さんは、少しだけ眉を寄せていた。魔力を制御出来ていない状態が危険である事を知っているからとかなのかな。


「そうですか……ん? 水琴さん、髪に白髪は交ざっていましたか?」

「え? 白髪ですか? なかったと思いますけど……」


 これまで白髪が生えていた事はなかったはずだ。誰にも指摘された事はないし、自分でも確認した事はないから、それは間違いないはず。

 めぐ姉も気になったのか私の近くで、髪を凝視していた。


「あっ、本当だ。白髪が交ざってる」

「えっ!? 嘘っ!? さっきの戦いのストレス!?」


 めぐ姉も確認出来たという事は、本当に白髪が交ざっているという事だ。昨日も鏡で髪を見ていたけど、白髪は見つからなかった。意識して見ていないからとも考えられるけど、昨日時点ではなかったと仮定する。

 今日起きてからの短時間でと信じがたい気持ちになりつつ、収納魔法から鏡を取り出して確認する。すると、本当に白髪が交ざっていた。パッと見て分かるくらいには主張している。

 束で白髪になっているわけじゃないから、ちらほらあるという感じだ。遠目には目立たないけど、近くで見ていると、ちょっと気になる。


「いえ、ストレスではないと思います……少し失礼しますね」


 冷音さんが、私の頬に手を添えて、至近距離まで顔を近づけてくる。茜さんに散々キスされているから至近距離は慣れていると思っていたけど、冷音さんがここまで近いのは初めてなので、ちょっと緊張してしまう。

 冷音さんの方は、全く気にした様子もなく、私の目を凝視してくる。


「瞳には現れていない。まだ髪だけなのか……私の考えすぎか……」

「えっと、どういう事ですか?」


 冷音さんの呟きが聞こえて、聞き返す。冷音さんが何を疑っているのか全く分からないからだ。


「いえ、確証はないのですが、白の君の呪いと同じような症状かと思いまして」

「白のですか? でも、あれは白だけのものじゃ……」


 白の身体の全てが白く染まっているのは、呪いのせいだという風に白自身が疑っていた。私は、あれを白に限定された呪いと解釈していた。


「はい。現状、白の君でしか確認されていません。ですが、急に白髪になるという事が引っ掛かりまして……いや、考えすぎでしょう。取り敢えず、周囲への影響を考えながら、魔法を使ってください」

「はい。分かりました。そういえば、何で、冷音さんが裏世界にいるんですか?」


 私の髪の毛に白髪が交ざった理由も気になるけど、冷音さんが裏世界に来た理由も気になっていた。冷音さんも表世界で戦闘をしていると思っていたからだ。私達にマーキングが付いたネックレスを渡すくらいだから、まだ戦闘自体は終わっていないはず。それでも、裏世界に来て、私の無事を確認しに来たという事は、何かしらの理由があるはずだ。


「白の君の指示です。思いの外、生徒と教員達が善戦しているので、今の内に水琴さんを保護するようにと。白の君は、生徒達を結界で守るのに忙しいので、私に命じた形ですね」

「なるほど。師匠は大丈夫そうですか?」

「はい。私達との修行が活きているようです。圧倒しています。ですが、クライトンが隠し球を用意していないとも限りません。安心するには早いかと」


 私が転移させられた後、師匠はクライトンと戦い始めたみたい。今は圧倒出来ているみたいだけど、冷音さんの言うとおり、クライトンが何かを隠している可能性はある。それに、師匠には時間制限もある。本当に無事だと良いけど。


「私達は、ここからどう行動すれば良いですか?」


 めぐ姉が冷音さんに指示を仰ぐ。この場で、一番戦闘に慣れていて、状況を知っているのは冷音さんだからだ。


「塔の扉は破壊されていました。簡単に侵入されるでしょう。ただ、このまま表世界に戻るのは、より危険です。戦闘が続いていますから」

「では、塔から離れますか?」

「いえ、このまま塔に残りましょう。外で全方位警戒しないといけない状況よりも、塔という狭い空間の方が動きやすいですから。ですが、もっと上に行きましょう。お二人とも動けますか?」


 冷音さんの確認に、私とめぐ姉は頷いて答える。それを見て、微笑んだ冷音さんが先導して階段に向かおうとする。その時に、いつもの癖で身体強化を使ってしまった私は、前に思いっきり投げ出されて転んだ。


「痛つつ……」

「水琴さん、大丈夫ですか?」

「はい……つい身体強化をしちゃって……」

「融合した事で、魔力の総量に加えて性質も変わってしまっているのかもしれませんね。使用する魔力は最低限にして身体強化をしましょう。それでも、同じようになるのであれば身体強化は使用しないように」

「はい」


 即座に改善点なども出してくれる。さすがは、師匠の一番弟子って事なのかな。


(使う魔力の量を減らすか……より繊細な魔力操作が重要になってくる感じかな。慎重にやっていこう)


 言われた通りに使用する魔力の量を減らして最低限にしたら、何とか制御出来るくらいの身体強化になった。確かに、魔力の性質とかが変わっているのかもしれない。こんな少しの量で、ここまで強化される事はなかったから。

 私が走れる事を確認した冷音さんが、階段を駆け上がっていく。私とめぐ姉は、その後に続いて上っていった。

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