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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
立派な魔法使いへ

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覚悟を決める

 襲い掛かってくる敵から、取り敢えず逃げる。身体強化を使って駆け出すと、当然のことながら追ってきた。向こうも身体強化をしているからか、追いつかれはしないけど、一気に振り切る事が出来ない。


「【爆破】!」


 背後に杖を向けて、敵の足元を爆発させる。足止めになると思ったけど、それで相手のスイッチを入れてしまったらしく、どんどん魔法が飛んでくる。


「【防壁】!」


 飛んでくる魔法に対して、魔力で出来た壁を乱立させて防ぐ。そのまま走り続けて森の中に入る。魔力視で魔力の動きを見て、周囲の確認をしていく。


「【煙幕】!」


 森に入ってから、『煙幕』を使い、身を隠す。森の中という事もあり、向こうも混乱しているみたいで声が聞こえてくる。


「おい! どこに行った!?」

「このまま真っ直ぐだろ! お前達は煙幕を迂回しろ!」


 煙幕を迂回して私を追い込む作戦らしい。あんな大声で言うから、私も筒抜けだ。私はブレーキを掛けて、反転して来た道を戻る。魔力視で敵の位置を何となく把握して、その顔面に膝蹴りを入れる。


「ぐあっ!?」


 煙幕の中で唐突な膝蹴りを食らって、男が鼻血を出しながら仰け反る。その首に向かって杖を向ける。


「【鎌鼬】」


 喉を細かい砂利を纏った旋風が削っていった。男は、血を吐き出しながら絶命した。着地したところで、杖を持つ自分の右手が震えている事に気付いた。左手で自分の手を押えつつ、深呼吸する。


「大丈夫……大丈夫……」


 自分に言い聞かせていると、正面から別の男が現れた。


「いたぞ!」


 周囲に顔を巡らせている男の顎を蹴る。私を子供と思っていて油断していたみたい。馬鹿だ。顎をやられた事で、膝から崩れ落ちる男に杖を向ける。


「【石弾】」


 男の首を尖った石が貫いた。血を吐きながら倒れる男の首を思いっきり踏みつけて倒す。男が大声を上げたので、すぐにその場から離れる。離れる方向は、白が建てた塔の方向だ。

 煙幕を抜けると、こっちで待機している敵が五人もいた。さすがに、全員で追い掛けてくる程馬鹿ではなかったみたい。


「【鎌鼬】」


 地面すれすれを通るように『鎌鼬』を放つ。


「おい! こっち……痛っ!?」


 大声で呼び掛けようとしていた男は、脛に『鎌鼬』を受けて地面に倒れた。ちょっとした旋風程度にしか見えていなかったのかな。それはそれで好都合だ。地面に倒れたところで、首を踏みつけて倒す。


「てめぇ!!」


 仲間がやられた事で、別の男が杖をこっちに向けてくる。


「【炎弾(ファイアバレット)】」

「【防壁】」


 杖を向けてきた時点で攻撃をしてくる事は分かったので、すぐに『防壁』を張る。そこに炎の弾がぶつかって消える。そのまま身体強化と部分強化で脚の力を上げて、一気に接近して鳩尾に拳をめり込ませる。


「うごぁ……」


 勢いがつきすぎて、男が白目を剥いて倒れた。


「【石杭(いしくい)】」


 倒れた男の心臓を突き刺すように、石の杭が地面から生えた。一人一人確実に倒していかないといけない。


「この野郎!」


 他の三人が一気に襲い掛かってくる。かなり近くにいるから当然の如く近接戦となる。拳を振ってくるけど、それらは簡単に受け流せる。蒼との模擬戦の成果だ。蒼は、本当に近接戦のスペシャリストだったみたい。

 相手の動きをよく見て、攻撃を防ぎつつ、隙を見て急所を蹴り上げる。


「はぅ!?」


 気味の悪い悲鳴を上げて、一人の男が膝を突いた。そこで別の男が拳を振ってくるので、その拳を受け流しつつ膝を突いた男の後頭部に命中させる。殴られた方は前のめりに倒れて、殴った方は拳を痛めていた。

地面に倒れ込んだ男の首を踏んで折りつつ、拳を痛めた方の男に杖を向ける。


「【鎌鼬】!」


 喉に向けて放ったけど、男は首の前に腕を入れて首の切断を防いでいた。その代わり、腕はズタズタになっている。痛みで苦しんでいるので、すぐに攻撃はしてこない。

すぐにトドメを刺そうと思った私に対して、別の男が後ろから首に腕を回してくる。ギリギリで反応して、絞めようとする腕の中に自分の腕を潜り込ませた。これのおかげで、完全に絞まるのを防ぐ事が出来た。でも、力一杯絞められると、さすがに苦しい。なので、もう片方の手に握った杖を男の身体に付ける。そして、魔力を大きく込めた魔力弾を撃ち込む。


「がっ!?」


 脇腹に魔力弾を受けた男は、私の首を放す。当たり前だ。脇腹に高速で飛んでくるボウリングの球を受けたようなものなのだから。脇腹を押えて膝を突く男の顔に向かって同じように魔力弾を撃って、首をへし折る。『鎌鼬』を受けて腕をズタズタにされた男にも同様に魔力弾を撃って倒した。


「ふぅ……」


 短く息を吐いた後、森の方に目を向けると、さっき追い掛けてきていたクライトンの仲間達が戻って来ていた。煙幕も晴れて、私がいない事に気付き戻って来たという感じだろう。人数は、全部で十人くらいいる。


(表に戻るにしても、私はまだ門を作った事がないから、ちゃんと作れるか分からない。戦いの最中で構築出来ないとかなったら、隙を晒して攻撃を受けるだけだ。ひとまず、走って逃げよう)


 体力だけには自信があるので、無限に逃げ続けて頃合いを見て表に戻ろうと考えた。


「【氷霧世界(ニブルヘイム)】!」


 私が逃げようとした瞬間、森の一部まで凍り付く氷霧が現れて、クライトンの仲間達が氷漬けになった。幽霊退治で襲撃された時に、茜さんが使っていた魔法だ。


「水琴!」

「めぐ姉……?」


 『氷霧世界』を使って助けてくれたのは、私の従姉妹で、茜さんの弟子のめぐ姉だった。めぐ姉は、私の傍に来ると、身体のあちこちを触る。


「怪我は……ないね。塔に登るよ。裏世界なら塔が安全だから」


 めぐ姉は、私の手を引いて塔の方向へと走る。


「でも、表世界には師匠が……」

「大丈夫。それは、水琴がよく知ってるでしょ。この戦いで、一番重要なのは水琴なの。水琴が奪われないようにしないと」

「というか、なんでめぐ姉がいるの?」


 私が裏世界に飛ばされたのは、師匠しか知らない。あの現場で、門を作って通るには、クライトン達が邪魔だろうし、すぐにめぐ姉が駆けつけてこられたのは不思議だった。


「塔で待機していたの。もし仮に、水琴が裏世界に連れて行かれた場合に、すぐ対応出来るようにって。水琴を助けるためにいたから、皆が殺されるところを見ている事しか出来なかったけど……」


 めぐ姉の表情は暗い。私を助けるという使命を背負って、他の人達が殺されるところを、ただただ見ているしかなかった無力感のせいかな。確かに、それを思えば暗くなるのも分かる。でも、私はどちらかというと、めぐ姉が助けてくれた事が嬉しかった。裏世界でひとりぼっちというのは、本当に心細いから。


「塔にいたら、クライトン達は手を出せない?」

「それはない。でも、塔は外部からの攻撃を防ぐ結界を塔の壁に沿うように張られてるから、外から攻撃される分には大丈夫」

「侵入を防ぐ事は出来ないの?」

「魔法で施錠するけど、すぐに壊されると思う。下っ端の実力はないに等しいけど、多分クライトンに近い人達は、結構強いだろうから」


 現状塔にいた方がマシ程度なのかな。めぐ姉と会えたからか、裏世界に飛ばされた焦りが完全に取り除かれた気がする。落ち着いて現状を確かめられる。


(めぐ姉の言う通り、現状表世界に戻るのは悪手だ。自分から、クライトンのいる場所に行くようなものだし。それを考えれば、裏世界の安全な場所にいる方が良い。森の中に入って逃げ続けるという方法もあるけど、そうすると師匠達がこっちに来た時に見つけられない可能性も出て来るし……師匠、大丈夫かな)


 塔の中に入った私達は、一息つく事が出来た。めぐ姉が扉にテキパキと施錠の処理を施していた。取り敢えずは、ここで籠城だ。

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