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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
立派な魔法使いへ

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襲撃から二ヶ月

 クライトンによる襲撃から二ヶ月が経った。学校敷地外へ出る事は禁止され、授業、修行、宿題、掃除などの軽い仕事という代わり映えのしない生活を送っていた。まぁ、学校生活なんて、基本的にそんなものだろうし、つまらない生活というわけではないから問題はなかった。

 この二ヶ月でいくつか変わった事もあった。それは、修行の種類が増えた事だった。実戦を想定した修行に加えて、言霊の制御などの修行だ。実戦を想定した修行では、師匠達の魔力を増やしていき、それらを切り替えながら戦うという私独自の戦い方を確立していっている。魔力の切り替え速度など、課題は沢山あったけど、ある程度は解決していた。元々魔力操作に関する才能があったらしくて、苦労らしい苦労がなかった。

 この実戦訓練に関しては、寧音と蒼も一緒にやることになった。こっちからお願いしたというよりも、向こうから師匠に頼み込んでいた。師匠も渋るのかなと思っていたら、これにあっさりと快諾。おかげで有意義な修行が出来ていた。

 言霊の制御に関しては、小さい事からちまちまとやっていった。自分に出来る限界もある程度知る事が出来た。生死に関わる事は絶対に出来ないけど、動きを止めるくらいなら造作もない。数が増えると、負担が増すけど、それは魔力を増やしていけばカバー出来るという事で、魔力増加も継続している。

 そんなこんなで、十二月に入り、冬本番を迎える。雪が沢山降る土地じゃないから、ただただ寒くて乾燥している感じだ。学校支給のコートを着て登校し、普通に授業を受ける。クラスメイトとは、大分打ち解けてきたけど、男子達からはまだライバル視されている。それもこれも模擬戦で毎回負かしているからだ。師匠の修行で、さらに強くなっているという自覚はあるので、大分手加減しているのだけど、それが向こうにもバレているみたい。本気でやったら、クライトンの仲間みたいに誤って殺してしまうかもしれないし。

 そう。あの時の襲撃で、私は人を殺してしまった。何度かあの時の事が夢に出て来る。師匠や茜さんは気にするなというけど、さすがに割り切る事が出来ないでいた。

 あの日の襲撃は、一般社会に一切影響していない。報道など一切されないし、それ自体がなかった事になっているかのようだった。これに対して、師匠は『向こうからしても世間に知られるという状況を避けたいのでしょうね。死体が見つかれば騒ぎになるから、すぐに処分したのだと思うわ』と言っていた。これが師匠達にとっての当たり前。つまり、過去の魔法使いにとっては人の命を奪い奪われるは当たり前の日常だったという事だった。

 これから先、クライトンと戦う事になった場合、再び殺し合いに発展する可能性もある。命を奪う事に慣れないといけない。これは、裏世界でも悩んだ事だ。ちゃんと向き合わないと。まぁ、そもそも犯罪という事も意識しないといけないのだけど。

 そんな悩みを抱えながら、今日も学校に行く。そして、今日は西宮先生との個人面談の日だった。師匠も冷音さん達の元に行っているので、一対一での面談となる。


「さて、学校に通い始めて三ヶ月になるけど、もう慣れてきた?」

「はい。基本的に普通の学校と変わらないので。魔法の授業は、追いつくのが大変ですけど」

「そこは水琴さんに頑張ってもらわないとだから、頑張ってね」

「はい」


 こればかりは西宮先生の言う通りなので、自分で勉強して頑張るしかない。そのための宿題でもあるし。


「宿題は、順調に消化出来ているみたいね。実技の方も問題なさそうだから、そろそろ階位試験を受けても良さそうかな」

「ああ、そういえばそういう制度もありましたね。それって、学校で受けられるんですか?」


 学校の敷地から外に出られないので、学校の外で受けるとなると私は受けられない。なので、そこはしっかりと確認しておかないといけない。


「学校で受けられるから大丈夫。事情も軽く聞いているしね。それで、個人面談では毎回訊いているのだけど、将来的にはどうするつもり? 魔法の道を進む?」

「一応はそう考えていますけど、そうなると大学進学ですか?」

「そうね。学部によって難しさは変わるけど、試験を受けてもらう事になるかな。まぁ、後二年もあるから、目指すのなら頑張ってみて」

「はい」


 大学にはめぐ姉がいるから、今度話を聞いてみようかな。


「内申とかは問題ないかな。まじめに授業は受けてくれているから。まぁ、時々アリスさんや寧音さん、蒼さんと話しているようだけど、分からないところを教えてもらっているんだよね?」

「あ、はい。師匠がいれば師匠に訊くんですけど、いないときは二人に訊いてます」

「そこは向上心という事で、評価を下げるという事はないから、安心して。事情が事情だしね。取り敢えず、そのくらいかな。あっ! 模擬戦で男の子達にライバル視されているみたいだけど、大丈夫? 何かトラブルになってない? 私も全てを見る事は出来ないから」


 いじめに発展してないかとかかな。あり得ない話だろうし、西宮先生もこの学校の全てを把握しているわけじゃないだろうから、そういう事があればちゃんと申告して欲しいって事かな。


「全然大丈夫ですよ。仲良くはなっていないですけど。でも、いじめとかがあったら、白が気づくんじゃないんですか?」

「そう……ね。白の君なら……把握していてもおかしくはないだろうけど……」

「完全把握は難しいが、調べようと思えばいくらでも調べられるぞ」

「うわっ!? 白!?」


 いつの間にか白が背後に立っていた。道理で西宮先生が、ちょっと歯切れ悪くなるわけだ。噂をすれば影がさすっていうけど、ここまでタイミング良く登場するとは思わなかった。


「水琴の面談をしていると聞いてな。ちょうど良いから寄ってみたんだ」

「そうなんだ。何か久しぶりだね」

「そうだな。少し外に出ていたからな。だが、朗報を持ち帰ったぞ。ようやく政府が魔法を認め、世間に知らせるという事を決めた。当然、化物のこともな。これからは、対策に国の戦力も当てに出来る」

「へぇ~、でも、それって私達も軍事力って事にならない?」


 魔法使いを戦力として数えて戦争に発展する可能性もある気がしたので、ちょっと確認してみた。


「ない。私達はモンスターと化物相手にしか動かないという事を伝えてある。そもそも私達は、そういった組織に参加しない。命令権を向こうに持たれると危ないしな。また過去の二の舞にならないように、私が上に立つという事になっている。万が一、戦争が起きて我々を投入すると言われたら、この国から滅ぼすつもりだ」

「色々と危ないから、それは止めておこうね」


 本当に白ならやりかねないので、やんわりと止めておく。


「そうか。水琴がそう言うのなら止めておこう。渚。面談は終わりか?」

「あ、はい。聞きたいことは全て聞けていますので、大丈夫です」

「なら、連れていく」


 そう言って白が歩いていってしまうので、西宮先生に頭を下げてから、白の後を追って隣に並ぶ。


「どうかしたの?」

「ここ一、二ヶ月忙しかったからな。久しぶりに水琴と過ごしたい」

「そうなんだ」


 お茶とかも全然出来なかったし、寂しかったって感じかな。せっかくなので、白と手を繋いで歩く。手を繋いだら、白は少し嬉しそうな雰囲気になっていた。やっぱりちょっと寂しかったみたい。

 今日は、久しぶりに白と長く過ごす事になりそう。

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