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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
魔法学校入学

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撤退と説明

 車が走り出し、国道に出たところで、ようやく安堵できる状況になった。


「水琴、身体の方は大丈夫かしら? かなり無茶をしたようだけれど」

「ん? うん。ちょっと喉が痛いけど。美玲さんの魔力で治癒も促進してるし、取り敢えずは平気」

「そう。説教は家に着いたらにしましょうか」

「えっ……あっ……うん」


 さすがに、お説教回避は出来なかった。使うなって言われているものを使ったわけだし、これは仕方ない。家に帰るまでというのが、唯一の救いのように見えて、何も救いではなかった。


「ジル、魔力は?

「ほぼ空かなぁ。一応回復は促進してるけど、次に戦闘になったら役には立てなさそう」

「そう。お手柄だけれど、魔力量と消費効率は問題ね。帰ったら修行よ」

「はぁい」

「後は、水琴から話さないといけない事があると思うわよ」

「あっ、うん。二人とも、ごめんね。巻き込んじゃって」


 師匠の言うとおり、まずは二人に謝らないといけない。クライトンの狙いは、私だった。それに巻き込んでしまったのだから。これを私から言わせるのは、師匠なりの気遣いだと思う。話をする起点を作り出さないと、私から話し掛ける事は難しかったから。


「それは大丈夫。どう考えても仕方ない事だし。それより、ヤツデの魔力が身体に混ざってるって本当なの?」

「あ、うん……本当」


 やっぱり、気になるのはそこだったらしい。こればかりは当たり前の事なのだけど、それを答えるのに、ちょっと歯切れが悪くなった。これを聞いた二人が、どんな反応をするのか怖かったから。


「それって大丈夫なの? 魔力が混ざると魔法の威力が弱まったりするって聞いた事あるし、混ざってるのがよりにもよって、ヤツデの魔力なんでしょ?」


 思っていた反応と違って、寧音は心配してくれているみたいだった。その事が嬉しくて、ちょっとだけ泣きそうになったけど、それは我慢する。


「あ、うん。一応、大丈夫。師匠の魔力で抑えつける事が出来るから」

「そういえば、色々魔力が混ざってるって言ってた」


 蒼がクライトンの言っていた事を思い出したみたい。


「うん。今は、私、師匠、茜さん、美玲さん、冷音さん、ヤツデの魔力があるよ。その中で師匠の魔力がヤツデの魔力を抑えるのに使える感じ」

「へぇ~……でも、普通は融合するんじゃなかったっけ?」


 そこから、私の身体に入り込んでいる魔力が、今どんな状態なのかを寧音と蒼に説明していった。二人は、所々で質問をしながらも、ちゃんと聞いてくれた。


「なるほどね……そんな状態で安定する事もあり得るんだ……」

「凄い」

「でも、それと襲撃は、何の関係があるの? ヤツデの魔力を持っているからって、狙われる理由になるとは思えないんだけど」

「それは、私も分からない。師匠?」

「そうね。私も分からないけれど、アレの魔力を集めているというところかしら。恐らく、そこに何かしらの答えがあると思うのだけど……」

「アレっていうのは、ヤツデの事ですか?」

「そうよ。昔は、ヤツデなんて名前がなくて、基本的にアレ呼びだったから、そっちで呼んでしまうのよ。次から気を付けるわ」


 師匠が柔らかい口調でそう言ったかと思えば、一瞬大きく目を見開いてから、真剣な表情になった。何かに気付いたらしい。


「そういえば、クライトンの馬鹿もヤツデの魔力を持っているって言っていたわね」

「言ってた。クライトンが何かしたら、私の中のヤツデの魔力も暴れだそうとしてたもん」

「えっ……もしかしてだけど、クライトンは、ヤツデの力を自分の中に吸収しようとしてるとか?」


 茜さんが強張った声でそう言った。そして、それに対して、師匠が頷く。


「可能性はあるわ。わざと封印を弱くして、段階的に解いていき、そこから溢れ出てくる魔力を自身の身体に吸収する。そうして、少しずつヤツデの力を得ようとしているのかもしれないわね」

「でも、水琴のような特殊な体質じゃないと魔力が定着しないのでは?」

「そうね。クライトンの今の身体が、水琴と同じ体質の可能性はあるわ。特殊な体質と言っても、絶対に一人だけという事はないのよ」

「なるほど……」


 私や茜さんみたいな体質は珍しくはあっても、唯一無二というわけではない。だから、クライトンの今の身体が私の魔力受容体質を持っていてもおかしいとはならないという事らしい。確かに、師匠の言うとおりだと私も思う。


「ただ、私としては、そうじゃないと思っているわ。何百年も前から念入り計画を練っていたという点から考えて、自分の身体を改造する術を研究していたという線の方が有力よ」

「そういえば、クライトンの論文に肉体改造の論文があったっけ。リスクとか現実的かとかで、呆れられてたけど」

「あの肉体改造を改良して、自身に使ったのかもしれないわね。ヤツデの魔力を受け入れ、自身の力へと変えるために」

「あの……何で、そんな事をするんですか?」


 話を聞いていて、そこだけが謎だったからか寧音が質問した。


「自己顕示欲ね。さっきの論文の話もあるけれど、クライトンは、何かと否定されたりしていたから。その実力を認めている人はいたし、ヤツデのような化物を封印する大役に選ばれているのだけど、それじゃあ満足しなかったみたいね」

「何をしても、師匠っていう格上がいたからね。それに、白ちゃんだっているし、自分が一番っていう風になりたかったんだよ」

「何か、子供っぽい理由ですね」

「そういった子供っぽさが有利に働く事もあるのよ。一位に拘る姿勢っていうのは、それだけ向上心の塊という風にも捉えられるから。ただ、それが人に迷惑を掛けるような事になれば、話は別になるわね」


 ヤツデに封印耐性を付けさせてしまい、既に討伐以外の方法でしか対処出来なくなった。これは、完全に人に迷惑を掛けるような行為だ。例え、そこに向上心などがあろうとも許される事じゃない。だから、師匠も茜さんもクライトンを肯定する事はないのだと思う。


「それじゃあ、さっきの人が諦めない限り、水琴は狙われ続けるということですか?」

「そういう事になるわね。今の私だと足止めは出来ても、仕留める事は出来ないから、他の人にどうにかしてもらう必要があるわね」

「クライトン相手だと、私は無理だよ? 戦闘は得意じゃないから」


 私達の誰よりも敵を倒していたのにという言葉は胸にしまっておく。茜さんの基準は師匠達基準だろうからだ。


「そうね。そこは、学校に戻ってから考える事になるわ。そういえば、ビビ達には連絡しておいたの?」

「うん。簡易的にだけど、信号は飛ばしておいたよぉ。だから、私達が逃げられた事は知ってるはずだよぉ」

「なら良いわ。水琴、喉の方はどう?」

「痛みはなくなってるから、治療は終わったよ」

「そうだ! 水琴って言霊も使えるの!?」


 これまでが私の魔力やクライトンの話という重く重要な話だったからか、寧音が思い出したように訊いてきた。


「うん。一応ね。師匠からは、まだ使っちゃ駄目って言われてるけど……」

「あっ……だから、説教……でも、私達を助けるためには仕方なかったと思います。それで説教っていうのは、ちょっと可哀想な気もします」

「終わりよければ全て良しとはならないのよ。例え、あの状況では、それが最善だとしてもね。例えば、寧音は言霊の反動については、知っているかしら?」

「……知らないですね。特殊技能って事で授業でもあまり取り扱われないですし、私の身の回りに持っている人もいないので」

「水琴の場合、魔力そのものの量が多い事もあって、多少の事では反動を受けないようだけれど、それでも竜みたいな上位存在に対して使えば反動によって身を削る事になるわ。それに掛ける対象の数でも反動がくる事が分かったわね。この反動が大きければ大きい程、水琴の命を脅かす。だから、しっかりと境界線を見極めないといけないのよ」

「なるほど……」


 師匠の説明を聞いて、寧音も納得していた。言霊の代償。今回は喉への負担として現れたけど、下手をしたら、もっと危ない事になっていたかもしれない。それを承知で、私は言霊を使う事を選んだ。

 ただ、私の反動がこれで済んでいるのは、茜さんが、私の負担を最大限減らすために魔力を沢山消費してまで数を減らしてくれたからだ。これが無かったら、言霊の対象が増えて、反動が大きくなっていただろうし。


「そういう事があるから、言霊に頼りきりにならないようにする必要があるのよ。そのためには、魔法を学び強くなるしかないわ。今は、そういう時期なのよ」

「便利な力って聞いてたけど、大変なんだね」

「まぁ、痛い目は見てるしね。私自身、危険って感じなきゃ使わないようにはしてるけど」

「そっか。あっ、そうだ。お礼を言いそびれてた。助けてくれてありがとうね」

「え? ああ、うん。どういたしまして」


 一瞬何の事だろうと思ったけど、寧音がクライトンの仲間に捕まりそうになった時に、私が言霊で助けた時の事だと気付いた。その話があったから、私も一つ思い出した。


「そうだ。師匠、クライトンの仲間なんだけど、私じゃなくて寧音を捕まえようとしてた」

「そういえば、魔法で攻撃すれば良いのに、私に向かって手を伸ばしてたかも」

「手前にいた奴等は基本的に倒していたはずよね?」

「うん。茜さんが次々にね」

「つまり、クライトン達は情報の共有をリアルタイムで行っていなかったという事になるわね。どういう層の集まりなのかと思っていたけれど、意外と寄せ集めだったのかもしれないわね」

「転生した人達で集まったんじゃないって事だよね?」

「そういう事ね。そこから探る方法があるかもしれないわ」


 クライトンの野望を止めるために、色々と大変なことになりそう。でも、基本的には、師匠達だけ進めていくのかな。私達は、まだ子供だし。


「取り敢えず、三人とも寝て休んでいなさい。学校に着いたら、起こしてあげるわ」

「あ、うん。分かった」

「はい」

「ん」


 幽霊退治はともかく、クライトン一派との戦いは結構疲れた。裏世界で一人行動していた時よりはマシだけど、眠いのも事実。ここは師匠に甘えて寝る事にする。

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