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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
魔法学校入学

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蒼との模擬戦

 何回か模擬戦をやっていく。寧音と蒼も模擬戦をしていて、二人の戦い方も見る事が出来た。寧音は堅実に動きながら魔法と魔力弾を織り交ぜて戦って、蒼は身体強化で一気に接近して近接戦で倒していた。

 私ももう一回模擬戦をしたけど、何とか魔力弾の制御が、まだ上手く出来ずに気絶する人を増やす事になった。

 そして、体育の時間最後の模擬戦で、私と蒼が戦う事になった。蒼の戦い方は見ているけど、正直勝てる気はしない。


『勝つ気でいきなさい。最初から負ける気で戦ったところで、水琴自身のためにならないわ』


 師匠に心の奥で思っていた事を読まれたらしい。でも、実際その通りだと思うので、勝つ気で頑張る事にする。

 蒼と対面で立つ。蒼は杖を出さずに拳を握っては開いている。ここでも身体強化を使った近接戦で戦うみたいだ。師匠と組み手の修行はしているけど、どこまで蒼についていけるか。


「始め!」


 西宮先生の合図と共に、蒼が突っ込んでくる。魔力弾を連射してみるけど、蒼は魔力弾を拳で弾いた。それに驚くけど、魔力弾は止めずに、私も身体強化を使いつつ蒼から距離を取るように動く。これでも段々と距離が詰められる。


「【煙幕】」


 私を隠すように『煙幕』を使う。同時に、後ろではなく横に向かって移動する。これで蒼も私を見失うはず。そう思っていたら、煙幕の中から蒼が出て来た。


「なんっ……!?」

「ん」


 蒼の拳が振われる。この距離での魔法は意味がない。杖を体内に戻すのと同時に部分強化でお腹を強化して腹筋を固める。そこに蒼の拳が命中して、衝撃が身体を抜けていく。かなり痛いけど、あの黒い熊の攻撃の方が痛かったので、我慢は出来る。

 蒼の拳を耐えたところで、蒼の襟首と服の袖を掴んで蒼を投げる。蒼は投げられている途中で私の手から抜け出して、足から着地した。

 その間に杖を取りだして魔力弾を放つ。蒼は魔力弾を避けるように横に動いて、私が出した煙幕の中に入り込んだ。自分で出したものが自分を苦しめる結果になった。やっぱり、『煙幕』は使いどころをよく考えないといけない。


「【突風】!」


 強烈な風を出して、煙幕を吹き飛ばす。でも、そこに蒼の姿はなかった。


(地面にいないという事は……上!)


 顔を上に向けると、高く跳躍した蒼が落下の勢いを乗せて踵落としをしてくる。腕を部分強化して、踵落としをクロスした両腕で受ける。ズキッとした痛みが腕に走る。折れてはいないけど、かなり痺れていた。その中で、蒼が着地する場所に向かって、蹴りを放つ。蒼は着地と同時に地面にべたりと倒れ込んだ。開脚するように倒れ込んだので、身体の柔らかさがよく分かる。

 蹴りが空振りしたところに、蒼が跳ね起きてきて、私の軸足に足払いを掛ける。


「っ!」


 私が尻餅を付いたのと同時に、私の目の前に真っ黒な杖が突きつけられる。


「そこまで!」


 ここで模擬戦が終わった。実際に蒼と戦ってみて分かったけど、魔法使いに対して体術などの近接戦は、割と有効なのかもしれない。蒼の対応力と速度があっての事かもしれないけど。


「大丈夫?」

「うん。ちょっと腕が痺れてるけどね」

「ごめん」

「模擬戦なんだから、謝らないで」

「そうそうこれからも同じような模擬戦をするんだから、一回一回謝ってたらキリがないから。それに、このために私がいるわけだしね」


 そう言って美玲さんがやってきた。そして、私の手とお腹を治してくれる。


「これで良し。蒼さんは……怪我は無しね。手は大丈夫? 違和感とかない?」

「ん。問題ない」


 私の魔力弾を弾いた手も問題ないらしい。美玲さんが診ても問題ないみたいなので、本当に大丈夫みたい。


「何で魔力弾を受けても平気だったの?」

「部分強化」

「なるほど」


 いつもの言葉足らずな蒼の答えだけど、普通に理解は出来た。部分強化をした手なら魔力弾もちゃんと弾けるみたい。


「いや、普通に部分強化だけじゃないから。魔力弾を真っ向から受けないで、横から弾くって方法よ。魔力弾も横からなら、逸らす事が出来るから。それだけ部分強化で手をコーティングしないといけないけどね」


 美玲さんが慌てたように補足してくれた。部分強化に加えて、ちょっとした技術も必要だったみたい。ちらっと蒼を見てみると、こっちを見て頷いていた。その通りと言わんばかりだ。最初から説明して欲しいと思うけど、それも蒼らしいとも思う。

 治療も終わったので、二人で西宮先生の元に戻る。


「良い模擬戦でした。ただ、水琴さんの『煙幕』は余計でしたね。あれなら、他の攻撃系の魔法の方が牽制にもなって距離を保てたと思います。加えて、あまり真っ正面から攻撃を受けるのは良くありませんでしたね。ここら辺は、蒼さんの魔力弾への対処のように上手く弾くか受け流す方が良かったかもしれませんね。ですが、受け止めてから反撃に移るのは良かったです。ここら辺はアリスさんからも指導があると思います」

「はい」


 ちゃんとしたダメ出しを受けた。確かに、『煙幕』は余計だったと思ったので、そこは反省する。


「蒼さんは正面から突っ込みすぎです。攻勢に出るのは良いと思いますが、少々危ない場面もあったと思いますが?」

「ん。思ったよりも水琴の反撃が素早かった。後、魔力弾の密度も高い。弾けたのはギリギリ」

「ちゃんと自覚出来ているのであれば良いです」

「ん」

「それでは、今日の体育は終わりとします。お昼休みの前にちゃんと制服に着替えてくださいね」


 西宮先生がそう言うと、皆がわらわらと解散していく。私のところに師匠が帰ってきた。さっきまで人だったけど、猫に戻って私に飛び乗ってくるので抱える。


『基本的には渚が言っていた通りね。少し組み手の時間も作るわ』

「は~い」


 組み手の修行が増えるとの事で、また転がされる事になるみたいだ。さらに、白もやってきた。


「中々に面白い模擬戦だったな」

「そう?」

「ああ。だが、魔力弾主体で戦うなら、魔力弾の種類を増やした方が良いな」

「種類?」


 腕の中にいる師匠を見る。私がまだ習っていない事だったからだ。


「魔力の繊細な操作が必要だから、まだ教えていないのよ。操作に長けている水琴でも少し難しいくらいには繊細よ」

「魔力操作の修行の一環になるだろう。教えてやっても良いと思うがな」

「そうですね……確かに、今後の事を考えれば魔力弾の強化はしておいた方が良いでしょうから、次の修行から取り入れます」

「うむ。それが良い。それと体術も課題になるな。私には応援する事くらいしか出来ないが、自分の身の安全のためにも励んでくれ」

「うん。ありがとう、白」

「うむ。では、またな。時間がある時にお茶でもしよう」

「うん。いつでも誘って」


 白と手を振って別れてから、先に歩いている寧音と蒼の元に走って向かう。大分魔法使いとして成長していると思っていたけど、この模擬戦で自分がまだまだという事が分かった。上には上がいるし、戦い方も人それぞれ。私は私なりの方法で強くならなくちゃ。

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