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猫魔女と弟子と魔法の世界  作者: 月輪林檎
魔法学校入学

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初めての模擬戦

 ポンチョを仕舞ったのと同時に、本鈴が鳴った。一応、校庭の近くにいるけど、先生の元にはいないので、そっちに向かわないと行けない。


「あっ、じゃあ、私達は行くね」

「気を付けてな」


 白と手を振り合って、西宮先生の方に向かう。


「お師匠さん繋がり?」


 白と離れたところで、寧音が訊いてきた。


「まぁ、そんなところかな。凄い人とは聞いていたけど、私としては、ただの女の子にしか見えないから」

「はぁ……」

「私達とは前提が違う」


 寧音は、あまり納得出来ていなかったけど、蒼がそう言った事で頷いた。


「確かにね。私達は昔から親に色々と吹き込まれてたからなぁ……認識としては、王様とかそういう立場の方って感じかも」

「ん。粗相はしちゃ駄目」

「やっぱりそういう認識なんだ。まぁ、そうなってると、いきなり見方を変えろって言われても難しいよね」

「そこの三人! 早く来なさい!」


 話しながら歩いていたからか、西宮先生に怒られた。普通に本鈴が鳴っているのに、のんびりしていたので怒られるのも当たり前だった。三人で急いで西宮先生のところに行く。


「はい。では全員揃ったので、模擬戦を始めます。基本的に魔法を使っても良いですが、相手を殺害してしまうようなものは控えるように。判定は私が下します。模擬戦が終了したら、攻撃の手を止める事。良いですね?」


 先生の説明に皆で返事をする。


「それでは、最初は横山一と栗花落水琴」


 いきなり私の番だった。相手は、クラスの男子だ。どういう基準で決めたのか分からないけど、男女の組み合わせも普通にあるみたいだ。その方が現実的だからかな。

 私と横山君は、校庭の中央の方に向かっていく。そして、先生に言われた通りに距離を取って立つ。


「今日は、俺が上ってところを見せてやる」

「ん? どういう事?」

「…………」


 急に何を言っているのか分からなくて聞き返すと、横山君は複雑そうな顔をした。


『体力測定の持久走で負けたから、こっちでは勝つという事だと思うわよ』


 師匠からの念話でようやく理解出来た。こんなところで、耳が良いという師匠の猫らしさが出て来るとは思わなかった。


「それでは杖を持って」


 西宮先生の指示を受けて、互いに杖を持つ。いつもの握り慣れた白い杖を出して握る。横山君は茶色の木の枝っぽい杖だった。


「始め!!」


 西宮先生の合図と共に杖を前に向けて魔力弾を連射する。


「【(ファイ)……】えっ……? がっ!」

「あれ?」


 てっきり魔力弾の撃ち合いから始まると思っていたから、弾幕になるように連射したのだけど、最初から魔法を撃とうとしていた横山君は、魔力弾を防ぐ事も出来ずに全身に魔力弾を受けて気絶してしまった。


「えっと……」

「そこまで! 上田先生、お願いします」

「はいはい」


 美玲さんが横山君に近づいて状態を確認し、治療を始める。私も美玲さんに近づいていく。


「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫。全身に野球ボールを受けたみたいなものだから」

「それは、ヤバいのでは……?」

「このくらい治せないと、医者にはなれないからね」


 美玲さんがいる前提の大丈夫だったみたい。ただの魔力弾でもこうなるなんて、魔法を人に使うのは、本当に危険みたい。


『杖の制御を、しっかりとしなさい。いつもよりも魔力が込められた魔力弾になっていたわよ』


 師匠から念話でダメ出しをされる。元々私の杖は威力を上げたがる性格みたいなので、戦闘という事もあって、張り切ってしまったのかもしれない。ちゃんと気を付けないと、もっと大怪我させてしまうかもしれない。


『魔法と違って、魔力そのものを飛ばす魔力弾は、複数の魔力を持っている水琴でも威力があまり変わらないわ。魔力を魔法に変換せずに直接撃ち出しているからかしらね。身体強化はしつつ、魔力弾に使う魔力を微調整しなさい。それが後々の役に立つわ。杖の制御も含めてね』

「は~い」

「ん? ああ、師匠か」


 私が急に返事をしたから、美玲さんが私の方を振り返ったけど、すぐに自分の頭の上に乗っている師匠と話していたのだと気付いた。師匠が念話で話す事を知っているから、気付くのも早かった。


「はい。治療終了」


 美玲さんはそう言うと、横山君を魔法で浮かして連れていった。そして、その辺の芝生に寝かせる。私も西宮先生の元に戻る。


「最初に魔力弾を選択したのは正解でした。本来牽制の役割を持つものですが、魔力を込めれば実用に足りますから。ただ、模擬戦としては、ちょっと威力を出し過ぎですね」

「師匠にも言われました」

「そうなの? 私よりもアリスさんの方が、水琴さんの事を知っているだろうから、基本的にアリスさんの教えの方を優先して良いから」


 先生モードから普段通りの口調に戻った西宮先生がそう言った。先生として、ちゃんと教えてくれるけど、私を直接教えている師匠がいるから、そっちを優先して良いって事みたい。皆にも魔法を教えてくれた師匠的な人もいるだろうから、皆に言っているのかな。


「分かりました」


 西宮先生との批評を終えて、寧音と蒼の元に戻る。


「おつかれ」

「おかえり」

「あまり疲れてないけど。ただいま」


 ちょうど蒼が近くにいたので、蒼の隣に座る。


「早かった」

「魔力弾だけで倒せちゃったからね」

「ほぼ全弾当ててたんじゃない?」

「ん。正確」


 確かに、撃ち出した魔力弾は横山君にほぼほぼ命中している。いくつかは外れているけど、大分正確に撃てたとは、私も思う。


「修行の成果かな」

「どんな修行?」

「的撃ち。滅茶苦茶速く出て来るし、動くから当てるのも一苦労なんだよね。ちゃんと当てられなかったら、筋トレの罰付き」

「うわっ……しんどそう」

「まぁ、筋トレは身体強化を使って良いから、若干楽ではあるけどね」


 寧音は信じられないという表情でこっちを見てくる。蒼の方は納得したように頷いていた。寧音は、運動が得意じゃないから、そもそも筋トレが楽という事が信じられないみたい。

 そんな話をしているうちに、他の人の模擬戦が始まった。そっちは、魔力弾ではなく魔法による攻撃が主になっている。


「魔力弾って、あまり使われないの?」

「魔力を込めれば威力があるけど、普通に魔法にした方が強いからかな。先に魔法を当てるのが、魔法使い同士の戦いにおける重要な点だしね。水琴みたいに鬼みたいな連射をする人は少ないと思う。魔力の量も限られている訳だし」


 確かに、消費する魔力が少ないとはいえ、魔法に使う魔力も必要なわけだし、節約したいって気持ちが出ちゃうのかな。まだ高校生だから、そういう部分を気にしてしまうとかかな。後は、魔法を使いたいだけとかもあるかもしれないけど。


────────────────────


 水琴達の背中を見ながら、白の君は美玲の隣にいた。


「あまり戦い方を見られなかったな」

「初手で倒せてしまいましたからね。高校生とはいえ、まだ皆子供のようですね。魔法に拘りを持っているように思えます」

「そこばかりは、どうにもならん。当人の考え方の問題だ。だが、水琴の存在が転換点になるだろうな。その点ではアリスに感謝しなければならんな」

「選択したのは、水琴自身ですから、水琴に感謝してあげてください。ですが、蒼の存在もある意味異質なのでは?」

「気付いていたか」


 白の君が横にいる美玲が抱いているアリスを見る。それを受けて、アリスは頷いた。


「確証はありませんでしたが、体力測定での身のこなし方で多少は」

「蒼が、得意としているのは魔法よりも近接戦だろうな。だが、近接戦が得意な魔法使いなど、その辺にもいる。水琴と同様の意味で転換点にはならないだろう」

「あっ、終わった。師匠、白の君と話すなら置いていくけど」

「ええ、行ってきなさい」


 美玲から降りたアリスは、人の姿になって白の君に並ぶ。


「私としては、水琴は近接戦が得意かと思ったのだが、そっちはどうなんだ?」

「この前まで、ただの中学生でしたから、普通程度でしょうか。蒼と戦えば負けるでしょう」

「そうか」

「蒼との模擬戦は、水琴にとっても良い刺激になるかもしれませんね」

「そうだな」


 アリスは模擬戦を、白の君は時折水琴を見ながら話を続けた。そんな姿をちらっと見た水琴は、


(何話しているんだろう?)


 と思いながら、寧音達と会話していた。

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