第3話 ボーイミーツガールに成って欲しかった
第3話です。
今回も主人公視点で進みます。
前回までのあらすじ!!チョロ神様と変身!!ヒロイン(暫定)との出会い!!ヒロイン(暫定)に【神】様と勘違いされた(涙)←今ここ
白髪美少女ヒロイン(暫定)が目を見開き、それはもう、がんぎまった目でこちらを見ている、ヤバい、なんとかして誤解をとき、ボーイミーツガール展開に持っていかなくては、決意。
(あれ?でもどうしよ?俺、お年頃の女の子との話し方なんてわからない、どうしよう!!)
「(相棒、ここは余に任せるがよい)」
(あ〜い〜ぼ〜う!!!!)
もう!!うちのチョロ神様が頼りになりすぎる!!ありがとう!!頼む!!任せた!!
「(安心せよ、これでも余は【神】であるからして、巫女の扱いには慣れている、では一時的に身体の主導権を渡してもらうぞ?)」
(おう!!)
「(うむ、本当に躊躇がないな相棒)」
思春期男子を舐めるなよ!?女子と仲良くなるためなら命を賭けられるのが漢ってものよ!!
「(その割には、会話をするのにも臆病になっているようだが?)」
(そこも思春期男子の哀しいサガよ)
「(まぁよい、では代わるぞ)」
うぉ~、なんか不思議な感覚、自分の身体が自分じゃないみたい、でも外の様子がわかる、相棒はいつもこんな感じだったんだな~、あとは任せたぜ相棒。
「(仰ぎ見よ、余こそは神、冥界にて死の摂理を司り、万物の生の終わりを見届ける、冥府の化身なり)」
「っ!!は、ははぁ―!!」
相棒が名乗りを上げると、白髪美少女ヒロイン(暫定)が慌てて、その場にひれ伏した。……ん?
「(娘、おもてをあげよ、そのほう名を何と申す)」
「は!僕の名はシズクと申します!主よ!」
お〜!相棒ナイス!へ〜シズクちゃんっていうのか〜、しかも僕っ子じゃん、ヒャアホイ!!……いやいや、マテマテ、……え?
「(シズクよ、そなたの祈りと、貴様の捧げし生贄により、余は人界にて顕界を果たした、そなたの願いはこの場にある、人敵の殲滅で相違ないな?)」
「っぅ゙、ええ、ええ!!どうかあの怪物達に御見の神罰を!!」
「(よかろう、『異界顕現』〈地下世界シバルバー〉)」
重苦しい重圧と共に、現実世界が異なる世界に塗りつぶさられ、今この場に『冥界』が顕現する、村に蔓延る[アンノーン]が異界に次々と飲まれいき、ものの数秒で千に届くであろう夥しい数の怪物達がこの世から姿を消した。
「(願いは叶えた、娘よ、対価としてそなたの【心臓】を余に捧げよ)」
「…………………はい、主よ、皆の仇を討ってくださり、ありがとうございました、ひっく、ぅ゙、おかげで僕も家族の元へ旅立て、ます、ど、どうか僕の心の臓を、お、お受け取り、下さい」
はい!!!ダウト―!!!!!相棒!?カマソッツさん!!?ちょ!!今すぐ代わって!!今スグ!!!
「(む?まぁよいが、急にどうしたのだ、相棒?)」
(いいから、はよ!!)
身体の主導権を返してもらい、意識が戻ると同時に変身が解かれ、元の体に戻る。
「あ、危なかった、……って待て待てちょっと待って!いらない!君の【心臓】いらないから!!」
「……え?でも、対価は?」
「大丈夫だから!!」
「ぅ゙……は、はい、ひっくっ、ぅ゙ぅ」
マジでやばかった、危なくヒロイン死なすとこだった、あ〜もう泣いちゃたじゃん!!どうすんのよ相棒!!?
「(いや、しかしだな相棒、その娘の胸にあるの、目当ての貴様の【心臓】だぞ?よいのか?せっかく余が自然な流れで取り戻そうとしたのに)」
そんなもんより大切なものがあるでしょ!!美少女は世界遺産だって知らないの!?……ん?いやまて、え、この子に?俺の【心臓】がある?なんでやねん。
「(まぁ、彼奴めが考えそうな事ではあるな、おおかた特殊な生贄として利用でもしたかったのだろうが、クククッ、我々がまんまと横取りしてやった形になったな、実に愉快なことよ)」
(だ・か・ら!!駄目だって殺しちゃ!!)
美少女は大切に!!これ世界共通の常識ですよ!!とにかく、この子は俺とボーイミーツガールす・る・の!!これは決定事項だからな!!
「(むむむ、思春期男子とは難しいものだ、つまり相棒は生贄としてでは無く、《眷属》として、この娘が欲しいのだな?確かに自らの一部を分け与えているから、条件は満たしてはいるが、しかし流石に【心臓】はもったいない気がするのだがな)」
相棒の言っている事は難しいくてよく分からないが、この際殺す以外だったら何でもいいよ、もう。
「(まぁ、相棒がそれで良いのであれば、余は構わぬが、考えようでは【ヤツ】の信者を奪い取る事が出来るということ、クククッ、それはそれで愉快よな、では再度、身体の主導権を渡してくれ、きまった手順を踏まねばならぬ故)」
(おう、いいよ)
きまった手順ってなんだろう?噂に聞く合コンとかお見合い的な何かかな?そんな事を考えながら、また意識が沈んでいく、今度こそ任せたぜ相棒。
「(娘よ、先程相ぼ…コホン、余が言った対価を変更することにした)」
「ぅ゙ぅ…は、はい、なんなりと、主よ」
安心したのもつかの間、先程の神々しい姿と違い、人間の姿になった【神】によりもたらされた、新たな対価の要求にシズクは身を固くするも、続く【神】の言葉によりその心が驚愕に染まる。
「(シズクよ、汝に余の今世にて初めての《眷属》になる栄誉を与える、対価は貴様のこれからの人生、全てだ)」
「ぼ、僕が【神】の《眷属》に!?は、はい!!謹んでその大役引受させてもらいます!主よ!!」
歓喜に身を震わせ、シズクは【神】の提案を受け入れた。
「(『原初にテペウとクグマッツ、始まりにて在りて在る者よ、最初に泥を、次に木を、これなることに人はあらず、さりとて最後の穀物にて人が出来る、神が望む叡智を持つ者よ、かくも神に傅くべし』)」
【心臓】付近を中心としてシズクの身体中に紋様が浮かび、全身が焼けるような熱を帯びる、白い肌は薄黒く染まり、白髪はその色を金へと変えた、両の腕には蝙蝠の翼が生え、人の姿は【神】の似姿へと変貌した。
【神】の《眷属》として転生を果たした彼女は、その神聖な力に圧倒されるも、徐々に落ち着き、身の内側からあふれる歓喜から、主に祈りと感謝を捧ぐ。
「偉大なる我等の主よ、この命を救われ、今は亡き同胞達の仇を討ち、更にはあなたの《眷属》にしていただく名誉を賜り、誠にありがとうございました、この命尽きるまで、変わらぬ信仰と忠誠をあなたに捧げます」
その場で傅く自らの《眷属》に対し、【神】は満足げに大きく頷き言葉を投げる。
「(うむ、汝の信仰しかと受け取った、余はこれより人界に及ぼす影響を抑える為、この人の姿で行動する、貴様も普段は元の姿で行動せよ)」
「は!承知いたしました!」
少女の身体中に浮かんだ紋様が消え、姿形が元に戻る。
「(では今から人として行動する、貴様も合わせよ、そのほうが相ぼ…コホン余もやりやすい)」
「はい、わかりました」
「(よし、相棒、起きろ相棒、終わったぞ?いい感じに仕上げたから、もう大丈夫だ)」
(んあ、寝てた、ありがとう、誤解解けた?)
「(おう、バッチリだ、では変わるぞ?)」
意識がはっきりと覚醒し、状況がだんだんと把握できてきた、目の前の少女からは、先程の涙もなければ、最初の狂信者染みた、がんぎまった目もしていない、どうやら相棒は本当に上手くまとめてくれたらしい、なにはともあれ、まずは自己紹介だ。
「改めて、俺の名前はソラ!!歳は15歳!!訳あって記憶喪失で、わからない事だらけだが、なんやかんやで旅をしてます!!どうぞよろしく!!」
「なるほどそういうことですか、分かりました、では改めて僕はシズク《ただの村娘》です、不束者ですが、幾久しく、ソラさ……ん」
うん!!掴みは上々!!心なしか好感度高めな気がする!ふ、これは始まってしまうな、俺とシズクちゃんのボーイミーツガールが!!
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
次は第4話です、次回もよろしくお願いします。