第16話 忍び寄る厄災の足音
第16話です。
主人公視点で始まります。
前回のあらすじ!!意識不明の和風美少女葵ちゃんを助ける為、彼女の深層心理にダイブした俺と相棒は、彼女を守るため立ち塞がる『チャイルドエラー』達を説得し、遂に彼女と邂逅する。
実は知り合いだった事や、なんか重要そうな話がチラホラ出ていたがまぁいいや、後何故か相棒とは相性が悪いらしい、残念。
なんやかんやで無事葵ちゃんを眷属として迎える事に成功したのだった。←今ここ
「よ〜し!一件落着した所でさっさと現実世界に戻ろうぜ!」
女の子の心象風景を何時までもまじまじと見るのも気が引けるし、ほらほら相棒いつまでもいじけてないで出番だぜ!頑張れ頑張れ。
「(い、いじけてなどおらぬわ、ふんまぁよい、では現実世界の身体に意識を戻すぞ?)」
「いいから勿体ぶって無いでさっさとヤれよ駄神が」
「(……………………ひゃい)」
どうしよう威厳に満ちた巨大な蝙蝠の神様が今はとても小さく見える。
「え〜葵ちゃん帰っちゃうの〜?」
「やだやだ!遊ぼうよ〜!」
「蝙蝠様も遊ぼうよ〜!」
「「「「遊ぼう!遊ぼう!!」」」」
うぉ!?ガキ共が群がって来たんだが!?ってか多!?何処にいたのさこんな数!?
「ゴメンねぇ『チャイルドエラー』ウチ行かなきゃだから、また今度呼ぶからそん時に一緒に遊ぼうね」
「やだやだ!!今遊ぶの!!」
「遊ぶの!!遊ぶの!!」
「「「「遊んでくれなきゃ帰さないから!!」」」」
「…………おいおいウチだけの時ならいざ知らず、ソラ兄が居る時にわがまま言うなよ……………潰すぞ?ああ?」
「「「「か〜ごめか〜ごめ、か〜ごのな〜かのと〜り〜は、い〜つい〜つでや〜る」」」」
「ちっ!本気なんだな『チャイルドエラー』!?」
あれ?喧嘩しだしちゃたよ、フッ葵ちゃんも仕方がないんだから、子供ってのは駄目って言われたら余計やりたくなるものなのだ、一回発散してやらないと。
「まぁまぁ葵ちゃん、ここは俺に任せてよ」
「え?ソラ兄?」
「おっしゃー!!ガキ共ぉ!!そんなに遊びたきゃ俺が遊んでやるぜぇ!?オラァやるぜ!やるぜぇ!!」
「「「「ひぇ!?お、お兄さん!?え、えっと、うん皆バイバイ!!また遊びに来てね!!」」」」
遊びたいって言うから遊んであげようとしたのに避けられたでゴザル、ナゼダゲセヌ。
「す、すごい、あのわがままな『チャイルドエラー』を一瞬で、流石ソラ兄マジぱねぇ」
「へ?あぁうん、まぁ計算通り?みたいな?」
「ソラ兄すっげぇ〜」
あぁ何故だろう、葵ちゃんのキラキラした視線が今はしんどい。
「(おいもういいのか?いい加減意識戻すぞ?)」
ああ、ごめんごめん相棒やっちゃっていいよ。
「(うむ、では楽にするといい)」
あ、意識が段々と遠のいていく、なんだか懐かし気分。
「あ…れ?意…識…が…ウチは…?」
葵ちゃんも始まったみたいだし、後はよろしく相棒。
「(あぁ任された)」
そして俺達は意識を手離した。
◆
ゆっくりと意識が戻っていく、あれ?なんだがいい香りが?なんかあるのかな?前みたいに目を開けたら目の前に[アンノーン]が、って事無いよな?この香りが[アンノーン]だったら超萎えるんだが?やばい目を開けるのが怖くなってきた!ええいままよ!!
「おはようございますソラ様」
恐る恐る目を開けるとシズクちゃんが居た、文字通り目と鼻の先に。
「おはようシズクちゃん」
え?え?ど、どういうことだってばよ!?
「えっと、シズクちゃん?何やってるの?」
っていうか、近い近い近い近い近い!!どうしようドキドキしちゃう!!
「ソラ様の御尊顔を眺めておりました」
「へ、へ〜そうなんだ」
「ソラ様、新たに眷属に加えた葵さんなのですが」
なんか普通に会話続けてるけど近いままだからね顔!?どうしちゃたのさシズクちゃん!?…………ん?
「葵ちゃんがどうしたって?」
「はい、葵さんもソラ様同様顔を眺めていた所目を覚ましまして、僕の顔を見るなり鼻血を噴いて再度意識を無くしてしまいました」
何!?それは大変だ!!………………ん?
「ぐへへへ、シズク姉の御尊顔が目の前に、デェフフフフフ」
少し頭を横にすると、すぐ隣には幸せそうに鼻血を流しブツブツと何かを呟ながら横たわる葵ちゃんの姿があった、うん、彼女には刺激が強すぎたらしい、あぁ、ちょとだけ共感してしまった。
「葵さんもソラ様の眷属になったのですから、もう少しシャッキっとして欲しいものです、ええ僕も〝筆頭眷属〟として後輩を厳しく指導して行きますとも」
シズクちゃんはそんな事を口ずさみながら、葵ちゃんの下へ移動した、…………シズクちゃんの顔が離れたのはいい事なのに少しだけ名残惜しいと思ってしまう、男子心は複雑だ。
「さぁそろそろ起きてください葵さん、ソラ様もお目覚めになっております、眷属として主を待たせてはいけませんよ?」
葵ちゃんの頭を膝に乗せ軽く撫でながら、諭すように声を掛ける、はて厳しく指導とは?ぶっちゃけ羨ましい。
「デヘヘへ、シズク姉〜大好き〜、ふがっ」
「もうしょうがない子ですね、えい」
「ぎゃぁ~!!痛い痛い痛いぃぃ!!?」
シズクちゃんは寝ている葵ちゃんの耳の穴に指を突っ込みグリグリし始める、相当痛かったのか葵ちゃんは堪らず飛び起きた、前言撤回どうやら先輩の指導は厳しい様だ。
「シズク姉ぇ!?痛いから止めてぇ〜!!」
「まったくやっと起きましたか、でもこれはお仕置きですのでしばらく続けますね?」
「い〜や〜!!?御免なさい許してぇ〜!うわ〜ん!助けてソラ兄ぃぃ〜!!」
う〜ん、まぁあれだ、これも経験だから頑張れ葵ちゃん!あっはっは!サムズアップ!
「ソラ兄!?」
まっ流石に可哀想だから助けてやるか。
「シズクちゃんそのくらいで許してあげたら?」
「承知いたしましたソラ様、葵さん主に感謝するように、分かりましたね?」
ヌポッっとシズクちゃんは指を葵ちゃんの耳の穴から抜いた。
「う〜分かったよシズク姉、ありがとうソラ兄」
「いいよいいよ、それよりも早く本題に入ろうか?」
「本題?」
「そうそう、葵ちゃんの『神隠し』で消した人達を戻して欲しいんだ、いいかな?」
「え〜?戻しちゃうの?このままで良くない?ソラ兄達『お父様』と事を構えるだよね?いくらソラ兄とシズク姉が〝シングルナンバー〟でもこのままだと流石に勝てないと思うんだけど、他の〝ユニバース25〟の連中も相手取る事にもなるし、今のウチの『チャイルドエラー』はこの都市の全[異能力者]の[異能力]を十全に使える訳だし、今後の事を考えて『シンシア』の住民には犠牲になってもらおうよ」
う〜ん、でも流石にこのままじゃ不味いんじゃないかな?こっちの事情で都市の住民を丸ごと拉致って、どんなテロリストだよ、前代未聞だよ。
「葵さん?まさかソラ様の命令が聞けないと?」
「ひぇ、ち、違うよシズク姉ぇ、ウチはソラ兄達の事を思って〜」
「葵さん?」
「はいぃ!!分かりました解放しましゅ〜!!」
葵ちゃんはシズクちゃんの迫力に押された様だ、分かるぞ〜怒ったシズクちゃん怖いものな。
「うぅ、『もう日も落ちたよ、皆もお家に帰りましょう、家族のもとへ帰りましょう』こ、これでいい?シズク姉ぇ」
「はい、大変良く出来ました、今後ソラ様の命令には速やかに従うように、ええ次はありませんよ?」
「ひ、ひゃい」
おぉ〜都市中から光の柱が昇っている、消された人達が元に戻ったみたいだな、あぁ!思い出した!そうだよ、元々俺達がこの都市に来た時には住民の人達居たんだよ!すっかり忘れてた『神隠し』ぱねぇ〜。
「なにはともあれ、これで一件落着かな?黒幕野郎の情報源も確保したし、なぁ相棒?」
「(うむ、どうやらそう簡単には行かないようだぞ、本番はここかららしい、気を引き締めろよ相棒、濃厚な死の気配だ)」
えぇ〜、今度は何さもう。
◆
とある書庫にて、静かに読書をしていた者がふと顔を上げた。
「〔ほう、これも運命か、葵の執念がこれ程とは、よもや我が呪術を跳ね除けようとはな、この気配はソラか?〈カマソッツ〉も相当馴染んで来たようだ、いい実にいい、どれ試練のひとつも与えてやるか、ドーラ、ドーラは居るか?〕」
呼び掛けに応える様に本棚の陰から執事服の男性が姿を現す。
「お呼びでしょうか『お父様』」
『お父様』と呼ばれた存在は大様に頷き、読んでいた本を閉じる。
「〔あぁ、どうやら葵は失敗したようだ〕」
「なんと、No.22が?20番代の中でも彼女は完成形に近かったのですが、私の〝知性体〟も取り込まれましたし、『お父様』直々に操作なさっていたのですよね?何があったのですか?」
心底驚いた様に執事服の男は『お父様』に問いかけた。
「〔ソラとシズクにしてやられた様だ、御丁寧に雅楽魁蟲を返してきたよ、ふふふ、これだから人間の可能性というのは素晴らしいのだ、いつも我の想像を超える、なんと面白く愛らしいのか〕」
「No.07とNo.08が?廃棄ナンバーじゃ無いですか、それにNo.08は私の〝知性体〟に取り込ませて貰う手はずでは?その為にNo.07の【心臓】を移植したのですよ?新たな[王種]の誕生は急務です、現在の[王種]では[アンノーン]の【王】は誕生し得ない、これは『お父様』も納得していただいたと記憶しておりますが」
執事服の男が納得出来ないとムッとした態度に『お父様』は薄く笑みをこぼした。
「〔済まないねドーラ、重ねて申し訳ないが『シンシア』に[王種]を送り込もうと思う、そうだな〈ベヒーモス〉がいいな、頼まれてくれるかい?〕」
「なっ!?〈ベヒーモス〉をですか!?あれは〈リヴァイアサン〉や〈ファフニール〉に並ぶ貴重な[原種]ですよ!?勿体ないですよ![王種]が必要ならば私の手がけた[アンノーン]の特殊個体で良いではありませんか!」
焦った声を出す執事服の男を『お父様』は手で制する。
「〔それでは試練にならないよ、ソラはどうやったのか完全に〈カマソッツ〉の権能が扱えるみたいだしね、あの粗暴な【神】をどう説き伏せたのか、実に興味深い、おそらくシズクはソラの〝眷属〟になっているのだろう、ふふふ、異なる【楽園】の在り方がここまで噛み合うとはな、なんと素晴らしいことか〕」
「〈ゴッツホルダー〉が成立したと?まさか〈カマソッツ〉は真正の【神】、契約は実現不可能と判断しNo.07は廃棄処分になったのではありまけんか、万が一完成された〈ゴッツホルダー〉が居ようと〈ベヒーモス〉が出れば何もかも灰燼に帰しますよ、良いのですか?『シンシア』は防衛都市、それを越えたら『聖王国』の『聖都』です、かの国を滅ぼすおつもりですか」
「〔ふふふ、そうだね~もしソラ達が我の試練を超えられなければ、その時は滅ぼしてしまおうか、そろそろあの国は盤石になるだろう、盤石になれば人々は安寧を得るだろう、だが人は安寧の中では輝かない、困難の中でこそ、逆境の中でこそ光り輝くのだ、その為ならば多少の犠牲は仕方のない事だよドーラ〕」
「はぁ〜、了解致しました『お父様』〈ベヒーモス〉の手配はしておきますよ」
執事服の男がそう言うと『お父様』は満足気に頷く。
「〔よろしくねドーラ〕」
「しかし〈ベヒーモス〉を送り込もうにも目的の廃棄ナンバー達が都市から離れれば意味がないのでは?」
「〔あぁそれは問題無い無いとも〕」
「??」
「〔今あの都市には葵だけでなく彼女も居るからね〕」
「…………まさか」
「〔ああそうだよ、そのまさかさ楽しくなりそうだろう?〕」
「それはそれは『シンシア』の方々には同情を禁じ得ないですね、『神隠し』の次は『選別』ですか」
「〔これも試練だ、この困難と逆境の中、是非とも我に人間の輝きを見せてもらおう〕」
『お父様』は閉じた本を開き再度読み始める、何も書いていない白紙の本を楽しげに、まるで己の望む物語がそこに書き記されているかのように。
「〔あぁ、実に楽しみだ〕」
◆
突然現れた謎の子供達に何かをされ、今の今まで混濁していた意識がクリアになる、自分では無い何かになっていた感覚が無くなり、ただ不思議と楽しかったという曖昧な感情が残っていた、まるで長い夢から覚めた様な感覚が押し寄せ、自分が自分である事を自覚する。
「戻ったのか?」「私は一体何を?」「なんでオレは此処に居るんだ?」「ここは何処だ?俺は事務所にいたはずじゃ」「え?え?私は何を?」「あぁ葵さんは失敗してしまったのですね、とても残念です、わたくしはこのままでも良かったのに」「すみません、どなたか事情がわかる方は居ませんか?」「あの子供達は?」「そうだ!あの変な子供達は何だったんだ!?」「んん……なんだ?」「西の軍事施設?」「本部へ連絡を、異常事態の可能性あり」「おい貴方は[異能力者]か?なんか知ってるのか!これはどういうことだ!?」
どうやらこの不思議な出来事は俺だけに起こった訳では無いらしい、少しだけ安心した、だがもう日が高い、間違い無く仕事には遅刻だろう、どこか冷静な自分がそんな事思った、少しだけ憂鬱になった。
「もし、そこの貴方少しいいかしら?」
「え?あ、はい」
そんな事を考えていると、隣にいた女性に声を掛けられた。
「ええ!ええ!!御免なさいね?時間は取らせませんわ!わたくし今とても大切な事をやらねばなりませんの!是非とも貴方にそのお手伝いをして欲しのです!よろしいですか?よろしいですね?ありがとうございますわ!わたくしとても嬉しいです!あぁ!!この素敵な出会いに感謝いたしますわ!!」
非日常な出来事に直面して多少ハイになっているのか女性はとても楽しそうに話をしていた、その微笑ましい光景にホッコリしてしまう、なんだがとても癒やされる、このままずっと彼女の話を聞いていたい気持ちになる、だが何故だろう全身の鳥肌が収まらないのは。
「ふふふふ!素敵ですわ!!なんと素直で!なんと親切で!なんと頼もしいのか!!これならばわたくしの『選別』も無事超えられるはずですわ!!だってだって!こんなにも素敵な殿方なのですもの!!」
あぁ、なんて喜ばしいのか、この女性にもとめられる事のなんと甘美な事か、歓喜のあまり身体の震えが止まらない。
「ええ!ええ!では始めましょうか!【楽園】へ至る為の『選別』を!!あぁ!!嬉しいでね!悲しいですね!怒りますね!恐ろしいですね!誇らしいですね!!平等に!差別無く!皆が等しく!『選別』されるぅぅ!!貴方が!貴女が!あなたがぁぁ!!【楽園】へと至る為の『選別』を!今!ここでぇぇぇ!!執り行うのですぅぅ!!おめでとうぅぅ!おめでとうぅぅ!!おめでとうぅぅ゙ぅ゙ぅ゙!!」
パァンっと、彼女が激しく手を叩くと、首が落ちた。
「は?」
「……………………あぁ、なんということ、貴方もまた選ばれなかったのですわね」
自身の頭が地面に落下するさなか見た人生最後の光景は周りの人達の頭がコロンと一斉に落ち、首から大量の血液が噴水の様に吹き出る地獄のようなものだった。
「おめでとう残念でしたさようなら」
血の雨に濡れた彼女のまるで失望した様な声が耳に届き、俺の人生は幕を閉じた。
ここまで読んでくれてありがとう御座います。
次は第17話です、次回もよろしくお願いします。




