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第四話 迷宮の古代魔鳥


「本当に一匹も魔物がいませんね………」

「今回のお相手はよほど強いんだろうね。竜とかだったらいいなあ、素材持って帰りたいなー」

「竜に勝てる前提で話進めないでください」

「アヨくんは自分を過小評価しすぎ!」


激励の意味でティアさんに背中を叩かれつつ、一層の最深部を目指す。魔物が出現しないおかげで、驚くほどスムーズに進むことができた。

そして、最深部で待ち受けていたのは…………


「なんですかあれ?」

「私にも見覚えがないな……鳥っぽさはあるけど、魔力の質が違う」


壁に隠れつつ、二層に続く大扉の前に立ちふさがる巨大な鳥を観察する。ティアさんも知らないという、鮮やかな赤い羽根を持つそれは、気が立っているのかくちばしを壁に打ち付けたり甲高い声で鳴いたりと、かなり好き放題している。

ダンジョンが崩れるのは想像がつかないが、あれだけ強い衝撃を何回も与えているのを見ると心配になる。


「……ああ、思い出した!アヨくん、あれは古代魔鳥だよ!故郷の姉さんたちが話してるのを聞いたことがある。ものすごく昔に狩って食べたら、筋肉質で頬が落ちるほど美味だったらしい」

「ティアさんの故郷の人たち、あれを狩って食べまでしたんですか……」


というか、エルフ基準の「ものすごく昔」って、何千年前の話なんだ……?


「でも不可解な点がある、あれは絶滅したはずなんだ」

「もういないはずの古代魔鳥が、このダンジョンに急に現れた……ティアさんが喜びそうな内容ですね」


ティアさんが満足げにニッと笑う。どうやらご名答なようだ。次に彼女が言う言葉も想像がつくが、無茶ぶりに応えるのも俺の仕事だ。深呼吸し、俺は剣を握りしめた。


「私はあれを食べるなんてもったいないことはしない。アヨくん、あれを次創る合種の素材にしよう。体を傷つけずに倒せるかい?」

「なるべくやってみます。123の合図で奇襲するので、サポートよろしくお願いします」


もう一度標的をよく見て、狙いを定める。生き物である以上頭を吹っ飛ばせば死ぬだろうが、ティアさんはあれの頭が無くなったら落胆するだろう。やるなら綺麗に切り落とさなくてはいけない。魔力で体を覆って装甲にしているようだが、大丈夫。俺ならやれる。

俺は、古代魔鳥の首に目を据えた。


「1」


深呼吸。隣でティアさんが魔法の準備をしている。


「2」


剣に魔力を流し込む。魔力の装甲を突破するためだ。


「……3!」

加速(アクセル)!」


俺が壁から飛び出すと同時に、ティアさんによる加速魔法がかかる。体が軽くなり、一瞬で相手の喉元に到達した。そして剣を振りかざし……


「なっ……」


魔力装甲を破り、首を切る……はずだった。


(なんつう筋肉してるんだ……!)


あろうことか、とてつもない筋肉に阻まれ、剣が通らなくなってしまったのだ。まずい、反撃の翼打ちが来ているのが見える。このままじゃ……


強化付与(エンチャント)!!」


間一髪、ティアさんが俺の剣に強化付与を施した。鋭さと魔力を増した剣は魔鳥の筋組織を切り裂き、魔鳥が断末魔をあげる瞬間さえ与えず一気に首を落とす。首が床に転がり落ちると共に、俺も着地した。ふうとため息を吐いた後振り返り、今回一番の功労者に礼を告げる。


「ありがとうございました、強化付与がなかったら危なかったです」

「なんで私に感謝するんだ?私は無茶ぶりした側だし、一番体を張ったのはアヨくんだろ。こちらこそ礼を言うよ」


逆にこちらが礼を言われるとは思わず、少し恥ずかしくなってしまう。頬を掻きながら剣を鞘に納めると、倒した魔鳥から異音がすることに気付いた。


「ティアさん離れて!なにか来ます!」

「ええっちょ、死骸に保存魔法まだかけてないのに……っ!」


轟音とともに、凄まじい量の蒸気が出てくる。思わず目をつむってしまいそうだ。


(クソッ、首を落としたのにまだ何かあるのか……!?)


風に押されつつも剣を抜き、未だ正体の掴めない相手に突きつけようとする。

それとほぼ同時に音と蒸気が止み、クリアな視界に飛び込んできたのは………



先程まで古代魔鳥の死体が転がっていた場所で眠る、傷だらけの女の子の姿だった。

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