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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
君のひとみに恋してる★

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77:私の大好きな護衛魔導師


『明日刑を実行する』と告げられたその日の夜。

 私は泣き疲れて牢屋の床で丸まって寝ていた。

 

 すると、光の伝達魔法の光の鳥が部屋の中に入ってきて、私の周りをぐるぐる旋回し、赤く輝いてパッと弾けた。


 それと同時に回復魔法が私にかかった。


「…………」

 私は目を開いた。

 床に手をついてゆっくりと上半身を起こす。


 そして横に手を振ってノアに返事を送った。

 光の伝達魔法は、大賢者になると魔石無しで使える魔法の1つだった。

 だから今の私でも難なく使えた。


 そしてこれが、光の伝達魔法を使った私たちの最後のやり取りとなった。




**===========**


 次の日、私は木で出来た手枷(てかせ)をはめられた。

 この日のためにどこからか用意された、魔法を無効にする力のある布で目隠しをされる。


 それで魅了魔法が防げるのかは分からなかった。

 無いよりマシだと思われたのかもしれない。

 私は素直に従うしかなかった。


 そして王宮の兵士らしき人に、手枷を引っ張られながら歩いた。

「さっさと歩け!」

「…………っ!」


 目隠しで前が見えないから、つまずきそうになりながらも兵士についていく。


 しばらく歩くと、どこか外についた。

 人々に見せしめにするための処刑場として作られた、広い会場についたのだろう。

 辺りに多くの人の気配を感じる。


「あいつが魔女か」

「王子様2人を(たぶら)かしたそうよ」

「たいそう美しいと聞いていたが、哀れな姿だな」


 好き勝手言ってる周りの声が聞こえた。


「セシリア、いる?」

 私は近くにいるであろう聖女に話しかけた。


「あなたに伝えたいことがあるの……私の手を握ってくれないかな?」

 そう言って私は手枷がついた両手を広げた。


 どうしても彼女に早く伝えておきたかった。

 フェリックス王子とは何も無かったことを。


 セシリアだけはとても傷付けてしまったから、私なりの懺悔(ざんげ)だった。



「止めときなよ」

「でも……」

 ひそひそとフェリックス王子とセシリアが、話し合っているのが聞こえた。


 そして私の手を、誰かの温かい手が包んでくれた。


「ありがとう」

 私は目隠しされたまま微笑んだ。


「…………っ!!」

 セシリアが息を呑むのが聞こえた。

 彼女は〝真実の瞳〟で私のことを見たのだ。


 これで何があったか、本当のことが分かったはず。

 フェリックス王子が私と関係を持ったと思っているのは、全て〝誘惑のキス〟による魔法だ。


「……ラズは悪くない!! だってラズは!!」

 セシリアが取り乱し始めた。

「全て……婚約者のために……!!」

 彼女の涙声が聞こえてきた。


 本当に優しい子だ。

 自分のことより、私のことを考えてくれている。


 おそらく、私たちが昔から大聖者(グレートセイント)になりたかったこと、それを王族が自分たちの威厳や利益のために反対したこと、それらの事情をセシリアは初めて知ったのだ。

 

 実際セシリアは、ラズベリーを王太子妃の補佐として王宮に無理やり留め置いており、補佐ではなく王太子妃の地位が欲しくなったラズベリーが、魅了魔法を使ったと聞かされていた。

 それで昨日の檻の前では、フェリックス王子たちがラズベリーを無理やり軟禁していたことには非難していたのだ。


「セシリア、大丈夫? やっぱり何か悪い魔法でもかけられたんじゃ……」

 フェリックス王子の声が聞こえた。

「違う! ラズの瞳を取っちゃダメよ!」

 セシリアはずっと抗議してくれていた。


「聖女様がご乱心だ……」

 いつまでも騒ぐセシリアは、私が変な魔法をかけたと思われ、周りの人に(なだ)められだしたようだった。

 私から距離を取るように引き離されたのを感じた。



 

 しばらくしたのちに、フェリックス王子の声が静かに響き渡った。

「これから……大賢者ラズベリーの刑を執行する」

 

 私は2人の兵士に両肩をそれぞれ押さえ付けられ、膝立ちをさせられた。

 そして夢で見たように、上を向くように顔を固定させる。

 目隠しの布を外されると、眩しくて一度目をつぶった。

 

 


 目を開けると振り上げられたナイフが見えた。


 周りの観客たちの声や雑音が聞こえなくなる。


 ーーーーーー


 スローモーションのような時の中、見上げた空に白い筋が見えた。




「やっと来た」

 私は目を潤ませて微笑んだ。


 空にはテールハイトに乗った私の護衛魔導師がいた。


 ノアは昨日の夜、光の伝達魔法で伝えてくれていたのだ。


『迎えにいくよ』と。




 次の瞬間、ノアがテールハイトから飛び降りた。

「ラズッ!!」

 処刑場に降り立つ寸前で少し浮き上がりスピードを殺す。

 背中には光の翼が見えた。

 その時にはもう、魔法で作り出した光の剣を手に出現させていた。


 一瞬の出来事だった。

 ノアは着地と同時に身を低くして剣を横に振り抜き、周りのものを全て薙ぎ払った。


 私だけは防御の魔法(プロテクト)がかけられており、剣から放たれる風圧と聖なる光の攻撃を受けても無傷だった。

「ノア!!」

 涙を浮かべたピンクの瞳で彼の動きを追う。


「〝lost time(ロストタイム)〟」

 ノアが手を振りかざして呪文を唱えると、周りから一切音がしなくなった。

 時間を止めたようだ。


 私にも一瞬かかったけど、ノアがすぐに解除してくれた。



 

 ーーノアと私だけが動ける世界が出来上がった。


「ノア、それって……」

 私は目を見開いて泣きながら彼を見ていた。

 大賢者の目で感じとることが出来たし、何より私が泣いているのに周りに魅了魔法の気配を一切感じない……


 ノアは大聖者(グレートセイント)なんかじゃなかった。


「ラズのために()()()超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になってやったぞ」

 ノアがいつものようにフイッと顔をそむけた。

 彼の照れている時の表情が見える。


 私は涙をポロポロ流しながら笑った。

「ううん。最高にカッコいいよ!!」




 ーーーーーー


「ラズ、ケガはないか?」

 ノアが光の剣を消して、私に近付いてこようとした。

「待って!!」

 私は手枷のついた両手を広げ、ノアに向けた。

 ストップのジェスチャーだ。


「??」

「私汚いから……お風呂に入れてない」

「今、そこ?」

 ノアが呆れながら呪文をとなえた。


 すると私の周りに光の粒子が発生し、柔らかい風とともに回りながら頭上へと舞い上がっていった。


 私は綺麗な状態になっていた。


「時間を巻き戻したの?」

 私は自分の状態を見下ろしながら確認して言った。

 またノアから呪文が聞こえ、次は手枷を外してくれた。

 私の手首から自然と手枷が落ちていく。


「あぁ。超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になると、使える魔法がいきなり増える。時間系もそれの1つだ」

 ノアが説明してくれながらも「もう大丈夫だろ?」と言って私を抱きしめた。


「いいなー。他には? 魔石を作るのが難しい概念系の魔法が増えるのかな? 自分に付加するんでしょ? 腕輪にその魔石ないもんね。手抜き感半端ないなぁ。」

 私もノア背中に手を回して胸の中に顔をうずめた。

 背中の翼は光で出来てるので、手を通すとすり抜けた。

 超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)のエフェクトっぽいな……


「〝gravity(グラビティ)〟とか?」

 ノアが説明しながら呪文を唱えた。

 さっき光の剣で吹っ飛ばされた人たちに、更に重力の魔法をかける。

 圧をかけられ地面に押さえつけられた人々は、時間を止められているので、どうすることも出来なかった。


「!! せめてセシリアはやめて!」

 私は抱きしめている力を思わず強めた。

「…………」

 ノアが眉をひそめたまま顔をフイッとそむける。

 

 ……これは、すごく怒っている!!


 私は困りながらも嬉しくなって笑ってしまった。

 そして抱きついたまま彼を見上げて尋ねた。

「どうやって超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になったの? ていうか大聖者(グレートセイント)もどうだったの?」 

大聖者(グレートセイント)は簡単になれたな。ディアジェラス国まではテールハイトでひとっ飛びだったし、女神からの洗礼を受けるだけだしな」

 ノアが私のおでこにキスをしながら喋った。

 私はノアとイチャイチャするのが久しぶりすぎて、嬉しくてフフフッと笑ってしまう。


「そのあと女神から謎かけみたいなのをされて……それの答えがこれだったんだ」

 ノアが腕輪にセットした聖魔法の魔石を指差した。

 私がディアジェラス国に出発する前に渡した魔石だ。

「これが?」

 喋ってる私の頬にノアが手を添える。

 久しぶりの私の感触を確かめているように、ちょっとムニムニされた。

 くすぐったい。

「あぁ。この魔石を腕輪にセットすると超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になれる」

「それだけ?」

「そうだ」

 ノアが(うなず)いた。


「え? 大賢者になるのにあれだけ苦労したのに……最後雑すぎない!?」

 

 シンドーさん!

 役職名は長ったらしくてダサいのに、設定は適当すぎませんかー!!

 

 私は久しぶりに心の中でシンドーさんに思いをぶつけた。


「ラズが作った魔石が無かったらなれなかったから、雑ってわけじゃないと思うけど……謎かけの答えが『穢れなき乙女の聖なる涙から出来た光』って感じだったから」

「え? 私魔物の血が流れてるのに穢れなき乙女に判定されたの? 良かった!」

 私は役に立てたことも嬉しくて、顔をほこらばせた。

「違う意味だと思うけど……早く作ってて良かったな」

「?? それってどうゆう意味??」


 その時だった。

 頭上から懐かしい声がした。


「ラーズー!!」


 空を見上げると黒い竜が見えた。

「キャロル! ヴィンセント!!」

 私が叫ぶと、それに応えるように黒い竜が降りてきた。

 地面に到着すると、相変わらず背中に大剣を背負ったキャロルが飛び降りた。

 その少しあとでヴィンセントがボンッと大人の姿に変身した。


「キャロル!!」

「ラズ! 無事で良かった!」

 私とキャロルはひしっと抱き合った。


 小柄なキャロルが私を見上げながら喋る。

「リーネル国の悪女、大賢者ラズベリーが処罰されるって聞いて、文字通り飛んできたわよ! 何メインストーリーを進めているのよ!」

「アハハ! ありがとう! ヴィンセントもありがとう」

 私はキャロルを抱きしめたままヴィンセントに笑いかけて、お礼を伝えた。

 するとヴィンセントがゆっくりと口を開いた。

「……魔王様も控えてたみたい。気配を感じたけど、今はもういないぞ」

「え?」

 ヴィンセントが無表情のまま空を指差した。

 

 ……お母様がお願いしてくれたのかな?

 お父様が体が弱くて家を出れないから、2人共ここには来れなかっただろうし。

 

 ちなみに家族の無事は確認出来ていた。

 捕まった時に、気になった私はすぐに伝達魔法でノアに伝え、彼が調べて知らせてくれていた。



 ノアが光の剣をまた出現させて、空を見上げてキョロキョロしながらヴィンセントに聞いた。

「何? どっち?」

「……今はいないって……戦う気なのか?」

 ヴィンセントが少し呆れた目でノアを見ていた。


 ……ブランジェ家にたまに魔王様が来てるらしいけど、言わないでおこう。

 けれど戦おうとするのは、私と同じだからちょっと嬉しい。


 抱き合っていた私から自然に離れたキャロルが、周りを見渡しながら聞く。

「……これってランドールが時間を止めているの?」

「そうだ。超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になると出来るぞ」

「え? そのダッサい役職になれたの? ラズのために? 愛だね〜」

 キャロルがニヤニヤ笑った。

「ラズも今からなりに行くけどな」

 ノアが『な?』って感じで私を見た。

「えー、ノアがなってくれたから私は大聖者(グレートセイント)でいいかな……」

超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)になりたいって言い出したのはラズだろ?」

「……私に光の翼が生えるのかな? サキュバスだから黒い翼とかになったりしない? やだなー」

 私は眉を下げて嫌がった。

 隣のキャロルが思わず吹き出す。

「クフフッ! ラズ似合う!!」

  

 もう。相変わらず失礼だ。


「ちなみに魔石を腕輪から外すと……大聖者(グレートセイント)の状態に戻る」

 ノアが実際に魔石を外してみてくれた。

 背中の光の翼も途端に消えた。

  

 それを見た私はホッとため息をついた。

「良かったぁ。夜でもずっとノアの背中が眩しいのかと、心配してたんだ」

「アハハハハ! 確かに!」

 さっきからキャロルは笑い続けていた。


 私は眉をひそめながらキャロルを見ていたが、ふと気付いてノアの方を見た。

「そう言えば、ディアジェラス国への入国は1人だけなんだけど、ノアと私は一緒に入れるのかな?」

「あぁ。大丈夫だ。大聖者(グレートセイント)になったら神聖な存在だからって、役職名だけでパスすることが出来る」

「そっか。良かった! また離ればなれになるのかと思ってだから」

 私は安心してニッコリ笑った。


「じゃぁ行くか?」

 ノアがそう言って、空をゆったり旋回しているテールハイトを呼び寄せた。

 白い竜はゆっくりと地面に降りてきてくれた。


「待って、1度ブランジェ家に帰りたいな。私の許可証って家だよね? あ、キャロルとヴィンセントもうちに来ない?」

 私は2人に向かって首をかしげた。


 すると辺りをチラリと見たヴィンセントが口を開いた。

「この時間が止まったやつらは解除しないのか?」


「あ」

「「忘れてた」」

 私とノアの声が仲良くハモった。



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