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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
君のひとみに恋してる★

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71/79

71:乙女ゲームが進行中?


 今日も私は王宮で、セシリアと一緒に過ごしていた。

 元気に一緒に淑女教育を受けて、お茶をしてお喋りしてと、変わらない毎日だった。


 セシリアとはよく喋り、よく笑い合っているので、とても仲良くなった。


 けれど少しづつ、セシリアの黄色い瞳は濃くなってきていて、聖女の力が完全に覚醒する日が近付いている。

 私の警戒する気持ちも高まっていっていた。




 ーーーーーー


 お茶会の席で、フェリックス王子が隣に座るセシリアを優しく見つめながら笑った。

「順調そうだね」

「えぇ、そうなの。ラズのおかげだわ」

 セシリアもニコッと笑い、王子を見つめていた。


「…………」

 私も微笑みながら紅茶が入ったカップを持ち上げる。


 ……乙女ゲームが始まっているから、セシリア目当てでフェリックス王子が会いに来てるんだけど……なんで私も参加してるんだろ?


 私は首をかしげそうになるのを必死に我慢しながら、カップに口をつけた。

 毎回、私はこの2人のお茶会に呼ばれてしまっていた。

 何とも言えない甘ったるい空気の中、1人紅茶を飲む苦行を与えられている。


 ……私、邪魔じゃない?

 勝手に仲を深めていって欲しい……

 

 そう何度も思いながら、目の前で楽しそうに話す2人を見ていた。





**===========**

 

 またまたセシリアからお茶会に誘われたので、庭園に出向いてみると、そこには先に来ていたジュードが座っていた。


「久しぶりだね、ラズベリー。いや、大賢者様?」

 蜂蜜色の瞳を細めて見下したように笑いながら、ジュードが話しかけてくる。

「すごいね。ノアと一緒に大賢者になるなんて……王太子妃の座を蹴ってまで頑張ったかいがあったね」

 彼はそう言って楽しそうにクスクス笑いだした。


「……ジュードは何も変わってないね。側近にはなったんだっけ?」

 私も呆れ顔で、ちょっとした嫌味を返しながら席に座った。

 ジュードは昔会った時から成長していたが、童顔年下系キャラはそのままだった。

 そしてこの感じは腹黒さも同じままなのだろう。


「そうだよ。それから魔法省の管轄も任されだしたんだ。大賢者様の管理も僕が行っているんだよ」

 ジュードが猫を被っている方のキャラで、爽やかに笑った。

 遠くからセシリアが向かってくるのが見えたからだった。


「遅れてごめんなさい」

「大丈夫だよ。待ってないから」

 慌ててやってきたセシリアに向かって、ジュードが人懐っこい柔らかい笑みを浮かべる。


 それを見たセシリアも、安堵の表情を浮かべて席についた。


 私は口をあんぐり開けそうになるのを必死で我慢しながら、笑顔を貼り付けていた。


「セシリア、何か困っていることはない?」

 ジュードが眉を下げてセシリアを覗き込む。


 …………

 ここでセシリアにジュードがどんだけ腹黒か暴露しようかな?

 その役?

 私はセシリアが正しい選択が出来るようにいる、お助けキャラのポジションじゃない??


 私は遠い目をしていた。

 2人の前で喋れないので、頭の中で騒ぐしかない。


「……困っていることは沢山あるの。私、まだこちらでの生活に慣れないし、何をしても上手くいかないから……迷惑かけないようにしないと」

「そんなことないよ。セシリアが一生懸命頑張ってることを僕は知ってるよ」

 ジュードが柔らかく笑って首をかしげた。

 頬を薄っすら染めて熱がこもった目でセシリアを見る様子は、恋をしている青年だった。


「フフフッ。ジュードありがとう。ここの皆は本当に優しいから、それだけが救いだわ。……けど、授業の先生はさすがに厳しくって……」

 セシリアが、先ほど受けた淑女教育のことについて喋り出した。


 ……セシリアは誰を選ぶんだろう?

 さっき正しい選択とか思っちゃったけど、人によって正しいかなんて違うからなぁ。

 

 私の思考は、そんな哲学的なことにまで(およ)び出した。

 



「ーーーーという事なんで本を持ってきてくれませんか? ラズベリー様」

 名前を呼ばれたのでジュードと見ると、彼は可愛いらしく、はにかみながら首をかしげた。


 …………

 

「……分かったわ」

 なんでジュードにパシらされるの? と思いながらも、この場を抜け出したいから了承する。


 セシリアが『授業の中で分からない所がある』とジュードに相談したらしく、それについての本を持ってこいということだった。


 私は席を立って書庫に向かった。




 王宮内では私に護衛という名の監視はつかなかった。

 つけられそうになったので、そこは嫌だと突っぱねたからだった。

 

 嫌だよね。

 知らない男の人がくっ付いて回るの。

 

 1人、ため息をつきながらで廊下を歩くと、書庫の前についた。

 扉を開けて中に入ると、先約がいた。


「あっ」

「……やぁ、ラズベリー。何か用事?」

 そこにはフェリックス王子がいた。

 何か調べ物をしてるらしく、机の上に数冊の本が広げられている。


 あー……

 2人きりは気まずいかも。


 私は勝手に照れて下を向いた。


 3年前に魅了魔法をかけてしまい、婚約の申し出を断った時以来、フェリックス王子ときちんと話したことは無かった。


 私だけだと思うけど、あの時のことを思い出すと気まずい。

 

 この前ダライアス様の所に行くために直談判した時には、まわりに人がいたから、2人っきりって訳じゃ無かったしなぁ……


 私は意を決して顔を上げた。

 何事も無かったように、気にしないのが1番だ。

 

「セシリアが分からない所があるらしいから、それについての本を借りに来ましたわ」

 私はニコッと笑い、務めて明るく振る舞った。


「そうなんだ。セシリアのためにありがとう」

 フェリックス王子も優しく微笑んだ。




 しばらくすると、目的の本を見つけた。

 けれど、私の背じゃ届かない上の棚にあった。

「…………」


 なんであんな所に?

 最近、淑女教育で使ったのに……


 私は試しに腕を伸ばしてみた。

 

 ……届かない


 私は踏み台か何か無いかと思って、キョロキョロした。


「取ろうか?」

「……お願いします」

 そんな私の様子を見ていたのか、フェリックス王子が代わりに本を取ってくれた。

「あれ?……うわっ!」

 彼の焦った声が聞こえた。

「きゃっ!」

「危ないっ!」

 その時、取った本の周りが崩れ、数冊の本が上から落ちてきた。

 フェリックス王子が、とっさに私を腕の中に閉じ込めて(かば)ってくれた。

 私はじっとしているしかなかった。




「……大丈夫だった?」

 しばらくすると、私から離れたフェリックス王子が、心配そうに聞いてくれた。

「大丈夫です。……フェリックス王子こそ、お怪我をしていませんか?」

 私は頬を薄っすら赤く染めた。

「大丈夫だよ。……それにしても何で落ちてきたんだろう?」

 フェリックス王子が首をかしげながら、落ちてきた本をもとに戻し始めた。

 

 私も床に落ちた本を拾って、王子に渡す。

「守って下さってありがとうございます」

 私は本を渡しながら、お礼が言えて無かったので感謝の気持ちを伝えた。

「どういたしまして。今は君の護衛魔導師がいないから、あのぐらいだったら守ってあげるよ」

 フェリックス王子がはにかみながら続ける。

「はい。探してた本」

 穏やかに笑った彼は、欲しかった本を差し出してくれた。




「ありがとうございました」

 私はフェリックス王子に、再度お礼を伝えながらお辞儀をし、書庫をあとにした。


 ーービックリした!

 そしてめちゃくちゃ気恥ずかしかった。


 私は本を胸にかき抱きながら、廊下を進んだ。


 あんなハプニングがあると、少しときめきそうになるよね!

 本が落ちてきちゃったから、仕方無いよね。

 

 ……そっか。

 飛翔の魔法で飛んで本を取れば良かったんだ。


 私は思わず腕輪を見た。

 せっかく魔法がいつでも使えるようになったのに、最近あんまり使ってなかった。

 ノアとやり取りしてる光の伝達魔法だけかもしれない。




 そんなことを考えながら、セシリアたちのもとに戻った。

「あれ? セシリアは?」

 私はキョロキョロしながらジュードに尋ねた。

 セシリアが居なくなっており、ジュードだけがいたからだった。

「ちょっと呼ばれて席を外してるよ。すぐに帰ってくるんじゃないかな」

「ふーん。……この本よね?」

 私は座りながらジュードに本を手渡した。


「ありがとう」

「どういたしまして…………はぁ」 

 私はモンモンとした思考の最後でノアを思い出してしまったので、ため息をついた。

  

「?? 何で元気が無いの?」

 ジュードが眉をひそめて怪訝(けげん)な目つきになった。

「……片時も離れたくない婚約者に会いたくなりました」

 私はお返しにじっとりした目線を向けた。


 〝片時も離れたくない〟は以前にジュードに言ったセリフだ。

 ジュードは覚えてないかもしれないが、少し嫌味をこめて言った。


「フェリックス王子と書庫で会ったのに、どんな話をしたんだよ」

 ジュードの雰囲気が少し変わった。

 笑顔をいっさい消して、私を少しだけ(にら)む。


「なんでフェリックス王子が居たことを知ってるの?」

 私も(いぶか)しんで(にら)む。

「お膳立てしてあげたんだ。フェリックス王子はずっと昔からラズベリー様のことが好きだったから」


「ーーーーっ!」

 ジュードがそう言った時、私たちの近くで誰かが息を呑むのを感じた。


「セシリア!」

 私が慌てて声をかけると、青ざめた顔をしたセシリアは、背中を向けて走り去って行った。


 私はジュードをキッと(にら)んだ。

「わざとセシリアに聞かせたわね!? 嘘をついてセシリアを傷付けたなら許さないわよ!」

「嘘じゃないよ」

 ジュードが不敵に笑った。


「3年前に王宮の庭園で会う前から、王子は君のことを想っていたんだ」

「……本当なの?」

「幼いころに、たまたま何かの集まりで君を見かけたらしい。レナルド王子から話を聞いて君に会いに行ったと3年前は言っていたけど、本当はずっと君に会いたがっていたんだ」

「……じゃぁ何故、あの時もっと早くに会いに来なかったの?」

「僕が君にまず会って、害がないか確かめただろ? その後に喋るぐらいならと判断したのは僕だ」

「…………」

 私は思わず黙り込んでしまった。

 

「あの時、魔法省に来る報告書を僕が読んでいるって言ったけど、本当はフェリックス王子が読みたがったんだ。だから僕も一緒に読んでいた」

 ジュードが冷たい目でニッコリ笑いながら続ける。

「ルミネージュ国に留学してからも、王子は学園から来る報告書にわざわざ目を通していたよ」

 私に近付いて、秘密話を打ち明けるように小声でジュードが囁いた。


「……フェリックス王子を私にけしかけて……目的はセシリアね」

「…………」

 今度はジュードが黙り込んだ。


「ジュードはセシリアの気持ちを手に入れたいのね」

 私は彼を真っ直ぐ見つめて言い放った。




「……3年前、君が護衛魔導師のノアを慕っているって聞いた時に、何を一生懸命になっているんだろうって呆れてた。フェリックス王子からの婚姻の命令で引き離される運命なのにって」

 ジュードがゆっくりと語り出した。 


「けれど、どうやったのか分からないけど上手く切り抜けていたね。そして今でもその気持ちを貫いている。王命なんて物ともしない君に、僕は強く憧れを抱いたのかもしれない……」

「…………」

「だから僕も、自分の気持ちを大事にしたい。例えフェリックス王子がライバルだとしても……王族だからって譲りたくない。……いけないこと?」

 彼は意地悪く笑いながらも首をかしげた。




「!!」

 私はジュードの本心のようなものを聞いて、動揺してしまった。

 揺れる瞳でジュードを見つめてしまう。


 そんな私を笑いながら見ているジュードが、肩に手をかけて顔を近付けてきた。

「だから、フェリックス王子が君に抱いてた恋心を利用させてもらうよ」

「!!……やり方が間違ってる! それに私にはノアがいるんだから、フェリックス王子には(なび)かないわよ」

 私は椅子から立ち上がり、セシリアを追いかけるためにその場を去った。




「ラズベリーがどう思ってるかなんて、関係ない所まで話は進んでるんだけどな」

 小さくなっていく私の背中を見つめながら、ジュードはつぶやいた。





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