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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
君のひとみに恋してる★

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69:セシリア・ジェンナー


 フェリックス王子とセシリアとの話し合いのあと、私とノアは連れ立って王宮の庭園を歩いていた。

 ノアだけブランジェ家に帰るので、私は馬車まで見送るために出向いていた。


 少し離れた背後には、私に付けられた護衛という名の監視がいた。


「……理由は分からないけど、今は大人しくしといた方が良さそうだね」

 私は前を向いて歩き続けながら喋った。

「あぁ、そうだな。……何かあったら必ず助けにくるから、1人で突っ走るなよ」

 ノアも前を向いたまま喋った。

「……うん」

「魔石は揃ってるか?」

「ひと通りは。腕輪にセットしてるもの以外に、いつもルミネージュ国で持ち運んでいたやつは王宮にも持ってきてたの」

「分かった。……気をつけるんだぞ」

 ノアがそう言って歩みを止めて振り返った。

 丁度ブランジェ家の馬車の前に到着していた。


「…………」

「…………」

 どちらからともなく私たちはギュッと抱きしめ合った。


 ノアが私の耳元で囁く。

「……連れて帰りたい。このまま魔法で飛んで逃げようか?」

「フフッ。さっき今は大人しくしようって言ったばかりだよ」

 私はノアから身体を離した。


「またね」

 そしてノアを安心させるために無理矢理、笑顔を作った。




**===========**


 次の日から、私はフェリックス王子に言われていた通り、セシリアと一緒に過ごすことになった。

 そのため今は、セシリアの部屋でソファに座り、紅茶をいただいていた。


 向かいにはセシリアも座っており、紅茶を一口飲んだ彼女が私の様子を(うかが)いながら喋りかけてきた。

「大賢者様?」

「ラズでいいよ。私もセシリアって呼ぶね」

 私はカップをソーサーの上に置きながら、まだ不安そうに瞳を揺らしているセシリアに微笑んだ。


「……ごめんなさい。なんだか私の事情に巻き込んでしまって……」

 セシリアが(うつむ)いた。

「大丈夫だよ。私、レナルド王子の護衛もしたことがあるんだよ」

「そうなの? 大賢者様ってそんな感じのお仕事もしてるの?」

「そうそう」

 私は返事をしながらクスクスと笑った。


 あの時はノアと一緒に護衛ごっこをした感じだったし、楽しかったなぁ……


 私はつい、いつもの癖で隣の空間を見た。

 そして目線を落とす。


 それから彷徨わせた視線をセシリアに戻した。

「セシリアはまだこの生活に戸惑っているようだね?」

「……実はそうなの。聖女の力が目覚める前はただの市民だったから……貴族のマナーのお勉強から始めさせられているのよ」

 セシリアが眉を下げながら言った。


「……聖女の力ってどんな感じなの?」

 私は首をかしげた。

「なんだか悪いものや嫌なものが、ある日突然モヤみたいな感じで見えるようになったの。それを追い払おうと思ったら消せることが出来ちゃって……」

 セシリアはその時を思い出しているのか、驚いた表情をしながら続けた。

「私の瞳が片方黄色いでしょ? 元々はこっちも緑だったんだけどね……消そうと思って力を使う時、この瞳が熱くなる気がするの……」

 セシリアはそう言って少し(うつむ)いた。


 私はそんなセシリアに思わず尋ねた。

「……怖い?」



 ……私もそうだったから。

 このピンクの瞳で魅了魔法をかけてしまうことが分かった時、とても怖かったから。


 セシリアが扱うのは聖魔法で良いイメージの魔法だけど、いきなりそんな力を持ってしまったら怖い思いを抱いてしまうはず。


「……少し……ね。……でも、聖女の力が私に宿ったのは何か意味があるはずだから、みんなを幸せに出来るように頑張ろうと思うんだ」

 セシリアはそう言って顔を上げニコッと笑った。


 ……儚げな……少し気弱そうな雰囲気だけど、芯の強い女の子。

 私が乙女ゲームとしてプレイしていたセシリアそのものだった。


「フフッ。セシリアは優しくって強いね」

 私は正直に思ったこと言った。

「そーお? ……ラズの瞳はとても綺麗ね。何か不思議な感じがする……」

 セシリアが好奇心を宿した目で、私のピンクの瞳を覗き込んできた。


 ……そうだった。

 セシリアが聖女の力に完全に目覚めてしまうと『真実の瞳』という触れた相手の全てを見透してしまう能力も手に入れるんだった。


 それで見られてしまうと、この瞳に魅了魔法の力が宿っていることがバレてしまうだろう……


 セシリアには、触られないように気を付けなきゃ。


 私は笑顔を作ってセシリアに答えた。

「ありがとう」

 笑うことで少しでも目を閉じて、セシリアに瞳を見られることから逃げたかった。



 ……このままセシリアといると、目を無くしてしまうコース確定な気がする。


 うーん。

 困ったな……


 私は和やかにセシリアと喋りながらも、心の中でずっと嘆いていた。




**===========**


 セシリアは言ってたように、貴族のマナーのお勉強を受けさせられていた。

 いわゆる淑女教育だ。

 

 私も護衛なので一緒に隣に座らされて、授業を受けた。


「ラズ、さっきのここ分かった?」

 授業終わりに、開いていた本の一部を指差して、隣のセシリアが尋ねてきた。

「一応ね。これはーーーー」

 私はさっき教えられたことをセシリアに説明する。


「ありがとう。さすが大賢者様だね」

 私の説明で理解出来たセシリアが、嬉しそうに微笑んだ。

「……魔法の勉強は好きだけど、こういった勉強、実は苦手なの……」

「そうなんだ」

「うん……だから前向きに取り組むことが出来てるセシリアってすごいなって」

「……あー。確かにラズぼんやりしてる時多いものね。先生によく名前呼ばれてるのは、集中してないからだったんだ。フフッ」

 そう言ったセシリアが思い出し笑いをしていた。

「フフフッ。そうだね」

 私もクスクス笑った。


 それからもセシリアと私は2人で励まし合いながら、淑女教育を受けた。

 



 ーーーーーー


 ……あれ?

 おかしくない?


 ………………??


 おかしいと気付いた時には1日が終わっていた。

 割り振られた自室で休んでいた私は1人で慌て出した。


「……何で私まで隣で受けてるの? 隅っこでいれば良くない??」

 私は独り言を呟きながら首を捻った。 

 

 何故セシリアの隣で待遇が一緒なんだろう?

 セシリアが分からない所をフォローするためなら、離れた場所で聞いていればいいだけだし……

  

「んー??」




 私が考えすぎてウンウン唸っていると、小鳥の形をした光が窓の外から舞い込んできた。


 私の周りをぐるっと回って、少し赤く光ってからパッと消えた。


「あっ……」

 ノアからの魔法だ!


 ダライアス様と同じ大賢者になったから、光の伝達魔法が使えるようになっていた。


 ダライアス様の所でいる時は魔導師としてのレベルが低かったから、呼ばれてるなぁぐらいしか分からなかったけど、大賢者の目で見ると、もうちょっと詳しく感じとることが出来た。


 誰からの知らせで、どんな気持ちをのせているのか。




「……私も会いたい……」


 私は目を伏せながらそう呟いて、手をゆっくりと横に振った。

 

 手の先から小鳥の形の光が生まれ、窓の外に向かって飛んでいった。

 



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