表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ジュカル学園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/79

64:大賢者


「だから、お前たちは合格したんだ」

 ヴィンセントが『何度も言わせるな』というように不機嫌な表情をして言った。


「僕たち竜は審判なんだ。ジュカル学園の生徒が大賢者に相応しいか、審査を任されている」

 そしてやれやれとため息をついて、説明を続けた。




 ヴィンセントが合格だと言い出したあと、私たちは地上に降りて話し合っていた。


「え? 大賢者になれるの? やったー!」

 私は両手を上に掲げて喜んだ。


 そんな私をヴィンセントがじとっと見ながら言った。

「一つだけ聞きたい。どうして魔物のお前には、今回僕の命令が効かなかったんだ?」

 彼は片手を腰にあてながら、首を少しかしげた。


「あらかじめノアに〝支配〟の魔法を私にかけてもらっているの。強い状態異常の魔法がかかっていれば、それより弱い状態異常の魔法は弾かれるから」

「……なるほど。じゃぁ今もお前は〝支配〟されているのか」

 ヴィンセントの質問には、ノアが答えた。

「そうだ。〝いつものラズらしく〟という支配の魔法をかけてある。……〝 erase(イレイス)〟」

 ノアが説明しながらも、支配の魔法を解除してくれた。


「よく考えたな。まぁ良かったんじゃないかな」

 ヴィンセントは無表情のままだったが、褒めてくれたようだった。




 そして腰の手を下ろして真っ直ぐ立ち、威厳に満ちた態度になった。

「では、僕との戦いの勝者には、何でも望むものが与えられる。望みはなんだ?」

 ヴィンセントがニヤリと笑った。


「はい! はい! はい!」

 それを待ってましたと言わんばかりで、キャロルが手を挙げた。

「……言ってみろ」

 ヴィンセントが怪訝(けげん)な表情をしながらもキャロルを指名した。

「私は……ヴィンセント様を望みます! いつまでも一緒にいて下さい!!!!」

 キャロルが顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「あれ? ウロコ貰わないとエクセブルに登録出来なくて、大賢者になれないよ?」

 私は思わず、キャロルの大告白に水を差した。


「大賢者なんていいの! 私はヴィンセント様がいい!!」

 キャロルがそう言って、ヴィンセントに詰め寄っていく。


「…………『何でも望むものが与えられる』だから仕方がないな」

 ヴィンセントがため息混じりに言った。

「やったー!!」

 キャロルが感極まってヴィンセントの腕に抱きついて、横にピッタリくっついていた。

 ヴィンセントは少し迷惑そうな顔をしていた。


「じゃぁ早速、この国の外に旅行に行きましょう! 私、ヴィンセント様と、世界を見て周るのが夢だったんです!」

 キャロルがはしゃぎながら言った。


 その発言を聞いた私は青ざめた。

「え? え? キャロル行っちゃうの?? 卒業までは一緒にいようよ!!」

 私は必死でキャロルを引き留め続けた。

「卒業式に出たくなかったら、前日まででいいから! 今日で最後なんて、寂しすぎるよ!!」

 私はたまらず泣き出してしまった。

 瞳に溢れた一雫の涙が、頬を伝って流れていく。


 ノアとキャロルはもちろんだけど、ヴィンセントも同じ魔物だから魅了魔法は効かなかった。

 何という奇跡のメンバーだろう。


「ラズ……」

 キャロルも涙ぐんでいた。

「……僕は審判者だから、今から卒業までのシーズンはここを離れられないぞ」

 ヴィンセントが私をフォローするためではなく、当たり前の事実として告げた。


「……しょうがないわね」

 キャロルがため息をつきながら笑ってくれた。

「よかった!」

 私はひしっとキャロルに抱きついた。




「で、お前らは何が望みだ?」

 ヴィンセントが、私とキャロルは話にならないとふんだのか、ノアに聞いていた。


「普通にウロコで」

「だろうな」

 そう言ってヴィンセントが、ウロコをノアに渡していた。

「あ、私もウロコで!」

 泣き止んだ私は、慌ててウロコを頼んだ。


「…………」

 無言のヴィンセントが、私にもウロコを渡してくれた。


 黒くてキラキラ光っている竜王様のウロコだ。

 ……これで!

 大賢者になれる!!


 私とノアは揃ってエクセブルを開いた。

「全部揃ったね!」

「あぁ、やっとだな!」

 私たちは笑い合いながらエクセブルをパタンと閉じた。


 途端に本が輝きだし、辺りが暖かい光に包まれていく。

 だんだんと光が強くなっていき、物の輪郭も曖昧になっていった。

 そして一際(ひときわ)輝くとパッと飛散し、先程までの風景に戻った。




 ーーけれど何やら見える景色が違った。

 意識すると魔力の流れや(よど)みが見える。

 

 キャロルを見ると聖属性の魔力が感じ取れた。

 同じようにヴィンセントは闇属性を感じる。

 何となくだが、分かるようになった。


 そして、ノアを見た。

 彼も嬉しそうに、いろいろな所に視線を向けていた。

 そして私の視線に気が付くと、ニッと笑いかけてくれた。

「すごいな! いろんなことが分かるようになった!」

 そう言って私に近付き「よく頑張ったな」と頭を撫でてくれた。




 私はそんなノアをジッと見つめていた。

 

 アーヴァインに言われて、ずっとずっと気にしていた。

 (ゆる)やかに、継続的にノアに魅了魔法がかかってしまって、私への想いも形成されたんじゃないかということ。


 サキュバスの部分の私は、たとえそうだとしてもノアを繋ぎ止めていたかった。

 でも人間の部分の私は、やっぱり魔法によって作られた気持ちじゃ納得出来なかった。


 私はゆっくりとノアに向けて手をかかげた。

「〝blake(ブレイク)!〟」

「?? どうしたんだ?」

 ノアが訳が分からず困惑している。


「〝blake(ブレイク)!〟〝blake(ブレイク)!〟」

「ラズ? 俺は今魔法なんかかかってないぞ」

 ノアが少し眉をひそめた。


 ……これで魔法は解けたはず。

 大賢者になったから、魅了魔法も解くことが出来るはずだから。

 もし魔法が解けて正気に戻ったのなら、私への想いも勘違いだったってそのうち気付くのかな?

 …………


「ノア、私たち距離を置こうか」

「は? どうゆうことだ?」

「離れていても、ノアの気持ちが冷めないか確かめたい……」

「冷めるわけないだろ。しかもなんでいきなり……」

 

 私たちの成り行きを、心配しながら見守っていたキャロルも話に入ってきた。

「ラズ、どうしたの?」

「……アーヴァインに言われて、ずっと気にしてたことがあるの。ノアだけが理由もなく魅了魔法が効かないから……」

 私はキャロルへの説明の途中で、辛くなって(うつむ)いてしまった。


 するとヴィンセントが口を挟んできた。

「お前の魅了魔法が効かない相手? そんなの理由は簡単だ。魔法をかける前から、お前のことを心より愛している相手には効かないぞ。もうすでに強い気持ちがお前に向いているからな」

 ヴィンセントは、そんなことも知らなかったのかというような、呆れた目つきで私を見ていた。

 そして「サキュバスの間では有名だぞ」と付け加えられた。


「……待って、待って! じゃぁそれってだいぶ昔から……」

 私は真っ赤な顔を左右にフルフル振った。


 そしてあることに気付いて、目を大きく開いて思わずノアを見た。

「あ! ……あの時から? だってあの時は……!」

「分かってるから言うなって!」

 頬を染めて赤くなっているノアが、私の口を塞いだ。

 そして彼は、自分の口の前で人差し指を立てる。


「え? なになに? ランドールが珍しくめちゃくちゃ慌ててる! 気になる〜」

 キャロルがニヤニヤしながら聞いてきた。

「絶対アイスラーには言わない!」

 ノアがフイッと顔をそむけて怒っていた。


 私は口を塞がれたままノアを見続けていた。

 動揺して瞳が揺れる。

 

 その視線に気付いたノアが、照れて顔を逸らしたまま私に言ってくれた。

「多分、初めて会った時から好きだったんだよ」


 インシスの花で混乱していた私に、言おうとしていたセリフの続きだった。


「これでこの話はおしまいだぞ」

 ノアがそう言いながら、口を塞いでいた手を離してくれた。



 …………


 ノアに初めて魅了魔法をかけてしまった時、彼の中で私はまだ男の子の認識だった。


「え? それって喜んでいいのかな??」

 私はちょっと複雑な気持ちなので眉をひそめた。

 しかも気になり過ぎて、ノアにおしまいと言われたのに話をほじくり返してしまった。


「……いや俺、薄っすら気付いてたし」

「嘘だー! あの後ダライアス様のところで、ビックリしてたじゃん」

「そりゃちゃんと分かれば誰だってビックリするって…………ラズを好きだって気付いたのだいぶ後だったし、多分無意識だったんだと思う……」

 珍しく、ノアが照れながらも困り果てて(うつむ)いていた。

 

 なんだか可哀想になってきた。

 初めて会った時から愛されてた事実は素直に嬉しいから、この話題にはこれ以上触れないでおこうかな。


「フフッ。ありがとう。理由が分かったし距離なんて置かない! わがまま言ってごめんね」

 アーヴァインに言われてずっと悩んでたことが解決した私は、スッキリしてニコニコ笑った。


「そうだ、アーヴァインに何を言われてたんだ?」

「んー、理由が分かると全然たいしたことないんで、この話題は掘り下げないで下さい」

 私は照れながらお願いした。


 気になっていたけど何もしなかった期間の説明が、恥ずかしくなってきた。

 だって『魅了魔法に頼ってもいいからノアを繋ぎ止めていたかった』になるんだもん!!


 私は勝手に想像して更に赤くなっていた。


「絶対あとで聞くからな!」

 さっきほじくり返したのを根に持っているのか、ノアに仕返しのように宣言された。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ