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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ジュカル学園

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61/79

61:お迎え

 

 私は眠ってしまったアーヴァインを、馬車の座席に横たわらせた。


 彼は気持ちよさそうにグッスリ眠っていた。


 ……けど、いつ起きるか分からないよね。

 

 どうやって逃げようか。




 私は走り続けている馬車の中で考えていた。

 

 馬車を降りてしまっても、夜の森だ。

 危ないし寒いしで無事にいれるか分からない。

 けどこのまま乗っているとアーヴァインの国に行ってしまう。


 …………

 よし。

 降りよう。


 私は目を潤ませて、馬車の前方に座る御者に声をかけるために扉を開けた。


「〝お願い〟があるんだけど、私だけ馬車から降ろして下さる?」

 いきなり喋りかけた私に御者の男性はギョッとしたが、私と目が合うとトロンとした表情をした。

 そして(うなず)いてゆっくり馬車を止める。


「ありがとう。中でアーヴァインが寝てるから、静かにして国に帰ってね」

 私は馬車から降りて、再び馬車が動き出して去っていくまで見送った。


 軽い魅了魔法が上手くかけれた。

 目をウルウルさせるだけなら〝お願い〟に従わせるレベルの魅了魔法がかけられる。


 ダライアス様のところで、ノアに協力してもらって調べた私の能力だ。




「寒い……」

 ルミネージュ国の夜の森だ。

 辺りは真っ暗で凍えそうなほど冷えている。

 雪が積もってはいるが、幸い雪自体はまだ降っておらず、なんとか歩ける状態だった。


 私は自分で腕を抱きかかえてさすりながら、立ち尽くしていた。


「……ノア」

 そしてノアにもらった指輪を見た。

 これがあるから、いつかは私を見つけ出してくれるはず。


 今の私には、この指輪と瞳を使った魅了魔法しかない。


 森の中にあるものから魔石を生成できるが、めぼしいものは土と雪といった魔石の媒体しかなく、本当は体を温めるために火や光の魔石の媒体になるものが欲しかった。


 馬車が通ってきた道を戻った方がいいのか……

 ここでじっとして体力と魔力を温存した方がいいのか……


 私がそんなことを迷っていると、遠くから、けたたましいエンジン音が聞こえた。


「? エンジン音?」

 音が聞こえる方に目を向けると、薄っすら明るく光っている。


「いた! あそこだ!!」

 ノアの声がしたと思ったら、いかついバイクが目の前に現れた。

 バイクの側面を後ろに走るパイプのようなパーツから、後方に向けて炎が吹き出しており、回転している前後のタイヤにも薄っすら炎がまとっているのか赤く光っていた。

 そのためか、そのバイクが通った跡は地面の雪が溶けている。


 その大型バイクがものすごいスピードで走ってきて、私の横をスライディングするように斜めに滑り止まった。

 

「キャロル!? ノア!?」

「フッフッフッ。キャロルちゃん作の炎のバイクだよ!!」

 運転席に勇ましく座っているキャロルが、不敵な笑みを浮かべた。




「大丈夫か!?」

 バイクから飛び降りたノアが、私に駆け寄った。

「…………わー!! 怖かったよー!!!!」

 私はノアの胸に飛び込んだ。

「いきなりっ、インシスを嗅がされて……気がついたら馬車の中で……なんかすっごい魔法かけられて……!! うえーん!」

 私は涙をボロボロこぼしながら、ノアの腕の中で説明した。


「すっごい魔法?」

 隣からキャロルの声がした。

 バイクのスタンドを立てたりしていたキャロルが、少し遅れて私の元に来てくれていたのだ。

「キャロル〜〜!」

 今度はキャロルに抱きついた。

「アーヴァインの王家の禁忌の魔法だとかいって、支配の魔法をかけられた! ……呪文を唱えることを禁止されて……心の底で思ってることしか喋れなくて……もうダメかと思った!! うううっ……」

「……それでよく逃げられたわね」

 キャロルが号泣している私をヨシヨシしてくれた。


 私は顔をあげて2人を見た。

 多分涙でぐちゃぐちゃの顔だけど、そんなの気にしてる余裕はなかった。

「魅了魔法を発動させて……誘惑のキスで眠らせたの……上手くいって良かったぁ!」

 そう叫ぶと「びえーん!」と泣き喚いた。


「…………」

 私の発言を聞いたノアが、眉間にシワを寄せて不機嫌な顔をした。

「……ヒック……もしかして、アーヴァインのほっぺにキスしたから怒ってるの……? 生きるか死ぬかぐらいの非常事態だったんだよ!?」

 私はもっと泣き喚いた。


「……その禁忌の魔法は解けたのか?」

 ノアが泣きすぎている私の背中を撫でながら聞いてきた。

「……ヒックヒック……分からないの……」

「ラズの腕輪持ってきたから、何か唱えてみろよ」

「……うん」

 

 私はノアから腕輪を受け取った。


「……うぅ……〝fly(フライ)〟」

 まだまだ気持ちが落ち着かずに、泣きながら呪文を唱えると、私の体は浮き上がった。


「!! 良かった。解けてる!」

 私は空中で1人バンザイをした。


「……本当に解けてるのかしら? ラズの話だとアーヴァインは今寝てるんでしょ?」

「んー、距離が離れてるからも、あるかもしれないな……」

 私と違って冷静な2人はブツブツ相談し合っていた。


「とりあえず帰るか」

「そうね」

 そして、いそいそと動き出した。


「あ、待ってよー! 私も帰る!」

 私は空中を移動して急いで2人に近付いた。


「そのバイク、2人乗りだよね?」

 私は宙に浮いたままキャロルに尋ねた。

「ラズは飛んで帰ろうよ」

 キャロルがそう言ってバイクにまたがった。

 ノアもバイクの後ろに乗って私に言った。

「近くに街があったから、今日はそこに泊まるぞ。学園に戻るにはもう遅いからな。そこまでなら飛べるだろ?」




「……なんか2人とも冷たくない?」

 私は目からポロポロ涙をこぼしながら聞いた。

 2人に会えた安心感からか、涙腺が壊れているみたいだ。


 するとキャロルとノアが、口々に喋り出した。

「ラズが号泣するから……」

「俺たち魔力を大量に使って疲れてるし……」


「「強力な魅了魔法で酔った」」

 

 そう言って、青白い顔をした2人はバイクを走らせ出した。


「えー、そんなぁ!」

 私は嘆きながらも、追いてかれないように急いで空を飛んだ。

 



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