表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ジュカル学園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/79

60:obedience

 

 誰かに頭を撫でられている感覚がした。

 それからゴトゴトずっと揺れている感覚もしてきた。

 段々意識が覚醒し出すと、意識を失う直前の記憶も思い出してきた。

 

 ……たしか、アーヴァインにインシスを嗅がされて……


「!!」

 私はガバッと手をついて上半身を起こした。

 どこかの座席で眠っていたようで、座って辺りを見る。


 すると、すぐ隣にいたアーヴァインと目が合った。


「…………」

「おはよう。よく眠っていたね」

 アーヴァインが優しく微笑んだ。


 ここは馬車の中で、アーヴァインと2人きりだった。

 どうやら眠っていた私は座席に横たわり、彼に膝枕をしてもらっていたようだ。


 外は真っ暗になっており、馬車は森の中を進んでいる。


「……どこに向かってるの?」

「僕の国に帰ってるんだよ」

 余裕の笑みを浮かべるアーヴァインが、私の頬の横の髪を手先で(もてあそ)びながら言った。


「帰る? 大賢者になるのはいいの?」

 私は喋りながら必死に考えていた。

 

 腕輪が無くなっている。

 アーヴァインに取られたのかな?

 指輪は無事みたい……

 どうやって逃げようか。


「大賢者にはもうなれたんだ。僕は魔法の使い方がルミネージュ国とは違うから、エクセブルが2冊あるんだ」

 アーヴァインがそう言って、転移魔法でエクセブルを2冊出した。

「こっちは僕の国のエクセブル。これはルミネージュ国の黒いページのエクセブルにあたるんだ。実はルミネージュ国に行く前にすでに自国で集めててね。ルミネージュ国の必須項目を集めれば、全て集まることになるんだったんだ」

 柔らかく微笑んだ彼が、嬉しそうに続ける。


「本当は僕、一国の王子なんだ。大賢者にもなれたし、ラズベリーをお嫁さんにしようと思って連れて帰ることにしたよ」

「私の気持ちは無視なのね」

 私はアーヴァインを睨んだ。

「……僕は王子だからね。欲しいものは何としてでも手に入れるよ」

 アーヴァインが冷ややかな目線を投げかけてきた。


「僕はラズベリーにサキュバスの血が流れていても気にしないし、大賢者だから魅了魔法もすぐ解除出来る。本当に君を愛しているのは僕だけだよ」

「そんなの決めつけないで」

「……話し合っても分かってくれないなら仕方ないね……〝obedience(オビディエンス)〟」


 アーヴァインが呪文を唱えると、黒い粒子が発生し私の頭を包みこんだ。

 そしてサラサラと形を変えて細長くなり、今度は首に巻きついた。

 すると、体の中に入ったようにジワっと消えた。


 一瞬の出来事だった。

 無駄だと分かっていても、思わず首元を触りながら私は唇を震わした。

「なにを……」

「僕の王家に伝わる禁忌の魔法、服従の魔法だよ」

「!!」

「この魔法は面白くってね、魔法をかけられた人の自我はちゃんとあるんだ。だけど魔法をかけた人の命令は聞くようになる。『ラズベリーは呪文を唱えることを禁止する』……とかね」

「あっ……!」


 やばい。

 非常にやっかいな魔法をかけられてしまった。

 これ以上命令される前にどうにかしなきゃ。



 でも、どうやって?


 ……このままだとアーヴァインの国に連れていかれてしまう。


「……ノア……」

 私は思わず声に出して、助けを求めてしまった。


「…………魅了魔法をかけて手に入れたノアのことなんて、すぐに忘れてしまうよ。本当は疑ってるんでしょ? 魔法で愛してくれてるだけだって。……『心の奥底に思っていることだけを喋って』」

 

 また命令が追加されてしまった。


 私は自分の意思に反して口を開いてしまう。


「……私はサキュバスよ。手に入れたい相手を魅了魔法で手に入れて、どこが悪いの? インシスで弱らせて、私を無理矢理自分のものにしようとしているアーヴァインと、どこが違うの?」


 …………

 

 私は自分の本心を聞いてキョトンとした。


「あはははははは!」

 そして、おかしくて笑ってしまった。

 

 そっか。

 私のサキュバスの部分は、何としてでもノアを自分の物にしときたいんだ。

 

 本当だ。

 アーヴァインと一緒だ。

 

 私は、自分の気持ちのもう一つの在り方に気付いた。

 ノアを好きだっていう、あまりにも強くて純真な気持ち。

 それはそれとして、心の内にあっていいんだという妙な納得。


 うん。

 サキュバスが混ざった私らしい気がする!


 何だかとってもスッキリした。

 本心を引き出してくれたアーヴァインに、感謝したいぐらいだった。



 

「何が面白いの?」

 アーヴァインが眉をひそめて不機嫌になった。

「フフッ。ノアのこと、とっても大好きだなぁって思って……だから、今はすごく寂しい。ノアに早く会いたい……」

 私は目を伏せてまつ毛を震わせた。

 悲しくて目の奥が熱くなる。

 

 そして、私は涙で潤んできた瞳をアーヴァインにゆっくり向けた。

「気付いてる? アーヴァインは見落としていることがあるよ」

 心の奥底で思っていることがスラスラ出てくる。

「……何を?」

「私も大賢者に近付いているってこと。レベルだけ見れば、私の方がアーヴァインより上よ」

「そうだとしても、ラズベリーは魔石を持ってないよ。指輪は他人が外せない魔法のせいで、まだつけているけど、ラズベリー自身に外してもらおうかな。『指輪を……』っ!」

 アーヴァインが命令を追加しようとするので、私は人差し指でシーっとするように彼の口を押さえた。


「もう一つあるの。私は魅了魔法をかける時、かけたいって気持ちを上乗せすると、より強くかかるらしいの。……大賢者レベルの私の本気の魅了魔法とアーヴァイン、どっちが強いかなぁ?」

 私は目を細めながら口元に弧を描いて、ゆったり微笑んだ。

 それと一緒に涙が頬をつたって落ちる。

 

 そして射抜くような視線をアーヴァインに向けた。

 光を反射したかのようにピンクの瞳が(きら)めいた。


 彼は私の魅了魔法が、どうやって発動するのかを知らない。

 多分呪文が必要だと思ってるのだろう。


 ーー私はアーヴァインに魅了魔法をかけた。

 

 


 ………………


「……ラズベリー、愛してるんだ」

 アーヴァインの雰囲気が変わった。

 目が少し虚ろになって、私をギュウっと抱きしめた。


「ラズベリーと分析の魔法で自分のステータスを見た時、君の名前が載っていたんだ。その時からずっとずっとラズベリーを想っていたんだよ」

 アーヴァインがステータスを見た時に、何故か照れていた時があった。

 確かにあの時に、自分の好感度が1番高い相手の欄を見たのだろう。


 アーヴァインがそっと抱きしめる力を緩めて、私の顔を覗き込む。


「だから、どうかこれからずっとそばにいて欲しい」

 そう言って彼は穏やかに優しく微笑んだ。


 私はアーヴァインを柔らかく抱きしめ返した。

 そして顔を寄せて頬にキスをした。

「おやすみなさい。いい夢を。……そしてさようなら」


〝誘惑のキス〟にかかったアーヴァインは、ゆっくり目を閉じて眠りの世界へと入っていった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ