6:thunder
ノアに魔法を教えてもらって、早1ヶ月。
私はどんどんいろんな魔法を覚えた。
相変わらず魔石を生成するのは得意だが、魔法を使うのは普通だった。
今日も初めに魔石を生成した部屋で、私とノアは机を挟んで立っていた。
「今日は魔法の威力を高める方法を教えるぞ。それは魔石生成時に言葉を追加するんだ」
ノアはそう説明しながら呪文を唱えた。
目の前の机に用意されていた蝋燭に火がともる。
「この蝋燭の火から魔石を生成してみろ」
「うん」
私は言われた通りに赤い魔石を生成した。
それを確認してからノアが説明を続ける。
「じゃぁ次に同じように生成する時、『generate』の後の魔石が出来ていく時に『strong』という呪文を重ね書きしろ」
私は頷いた。
そして言われた通りにした。
するとさっきよりも濃い赤色の魔石が出来た。
「このように言葉を追加したものの方が威力の強い魔石が出来るんだ。追加する言葉は数種類あるし、自分だけの強化する言葉を見つけてもいいぞ」
ノアがそう言いながら魔法に関する書物のページをめくり、強化する言葉の一覧を見せてくれた。
ふーん。なるほど。
すごい設定凝ってるなぁ。
ここまでくると他のゲームって感じがする。
まぁ楽しいからいいけど……
「聞いてるか?」
ボーっと考え込んでいた私の顔をノアが覗きこむ。
「!! ……何?」
随分ノアが近くにいてビックリした。
ノアは攻略対象者なだけあって端正な顔立ちでとてもカッコいい。
まだまだ少年だから幼さも残っているけど、近すぎるのはドギマギする。
「だから、この魔石を使いに行こうぜ」
ノアがさっき私が作った2種類の魔石を指差した。
ようはノアが試してみたいのだ。
私が作った魔石はノアが使うと威力が格段に強くなる。
なんだかんだ言って魔法が大好きなノアは、私の魔石を使うのが楽しみな様子だった。
「フフッ。いいよ!」
私は勢いよく立ち上がった。
「何笑ってんだよ。いいか、ラズの上達のために練習しに行くんだぜ」
ノアがムスッとしながら言う。
「……ありがとう。でも僕、ノアのカッコいい魔法も見たいな」
「!! ……ったく。分かったよ」
ノアが照れながらぶっきらぼうに言った。
相変わらずちょっと可愛い。
私はまた心の中で微笑ましく思った。
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数日後、今日は私1人でノアと勉強している部屋にいた。
だいぶ魔法の基礎も勉強出来たので、1人で練習する時間も増えた。
今日は実験したいこともあったし、ちょうど良かった!
私はいそいそとポケットから風船を取り出した。
そしてプウッと膨らます。
うーん……静電気を起こしたいんだけど、どうしようかな……
その時、部屋の扉が開いて人が入ってきたので、私はその人に向かって挨拶をした。
「オスカーこんにちは」
「こんにちは。……何してるの?」
オスカーは3つ上の男の子で、茶髪に赤い瞳の落ち着いた少年だった。
ダライアス様の話では、若手の中でノアの次に有望だ。
魔法を学ぶ場所には自然と赤い瞳の人が集まってきてしまうのかな?
魔力が高い証拠だもんね。
私はそう思いながらノアと同じ赤い瞳をしたオスカーを見た。
そして困っていたことを相談した。
「ちょっと魔石を生成してみたくて……そうだ! オスカー、手伝ってくれませんか?」
「……いいけど、何するの?」
オスカーは微笑みながら私の近くに来てくれた。
そして「敬語じゃなくていいよ」と優しく言ってくれた。
「……ありがとう! じゃぁここに座って」
私はオスカーを椅子に座らせて前に立った。
そしてさっそく砕けた喋り方をしだした。
「ちょっと髪の毛借りるね。こうやって風船で擦ると……髪の毛がくっ付いて静電気がおこるの」
私はそう言ってオスカーの髪で実践しながら静電気を起こした。
「静電気?」
オスカーが不思議そうに尋ねてきた。
「弱い電気みたいな……」
「電気?」
「……弱い雷のことかな?」
この世界ではまだ電気は発明されてないんだった。
私は言葉を濁しながら説明した。
そして、風船を両手の親指で支えながらオスカーの頭と風船の間の空間に手をかざす。
「〝examine〟」
私がそう唱えると光の粒子が静電気部分を捉えて巻き起こる。
よしよし、いい感じ!
「〝generate〟」
私の手のひらの上で光の粒子が集まっていく。
支えられなくなった風船が粒子が集まってくる時に起こる風に乗って遠くに飛んでいった。
いつ見てもこの魔石生成の光景は綺麗だ。
今回は私が電気をイメージしているので黄色くほんのりと光り出す。
黄金のような光が収束すると、細長い楕円に似たマーキスカットの黄色い魔石が現れた。
「!! ……噂に聞いてたけど、ラズすごいね」
オスカーが目を大きく見開いて驚いていた。
ノア以外の人に初めて魔石生成を見せたかもしれない。
そしてオスカーが立ち上がりながら私に言った。
「さっそく使ってみようよ!」
ダライアス様の元にいる人はみんな魔法が大好きなので使ってみたくて仕方ないのだろう。
もちろん私もそうだった。
上手く言った電気の魔石を早く使ってみたい。
「うん!」
私はニコッと笑って答えた。
ちょうどそこにノアが部屋に入ってきた。
「何してるんだ?」
オスカーでノアが見えなかったから私は体を傾けてノアの方を見た。
「新しい魔石が生成できたんだ。上手くいけば新しい魔法が使えるかも!」
すると、オスカーがノアの方に振り向いて喋った。
「ノア、お前こんな楽しいこといつもしてたのか!? ラズの魔石生成力、すごいじゃないか! 今日はオレがラズを指導するよ」
オスカーがそう言って私に「行こう」と声をかける。
「なっ! 俺が師匠に言われて教えてるんだぞ! 勝手なことすんなよ」
ノアが怒りながら部屋にづかづか入ってきて、私の腕を掴んだ。
「ほら、行くぞ!」
ノアがそう言って歩き出そうとした。
「あ、ノアこそ勝手なことするなよ」
オスカーがノアとは反対側の私の腕を掴む。
そして2人は口喧嘩しながらも足早に外へと向かった。
……何これ?
連行??
私はひとまず、なすがままに足を運んだ。
「じゃぁまずはラズからな」
魔法を使っても安全な開けた外にくると、ノアがそう言った。
「うん!」
私はワクワクしながら腕輪にさっきの魔石をセットした。
そして片手をかざしてスーッと息を吸う。
「〝thunder!〟」
私はノリノリで叫んだ。
すると空を切り裂くような音と共に稲光が一筋落ちた。
……よし!
成功した!
雷から魔石を生成したわけじゃないが、電気的な魔法と言えばサンダーだよね。
よかった。
ちょっとゆるゆる設定だ!!
さすがシンドーさん!
私が読んでいる魔法書にはサンダーが載ってなかったから、上手くいってよかったぁ。
私はそう思いながらも、雷の魔法が出せたのでニヤッと笑いながらノアとオスカーを見た。
「「貸して!!」」
ノアとオスカーが同時に叫んだ。
弟が2人に増えたみたいな気分だ。
私はそう思いながら「いいよ」と笑顔で返事をした。




