55:竜王戦に挑む
私とノアとキャロルの3人はジュカル学園に戻ってきて、寮のコタツでぐったりしていた。
「……疲れたね……」
コタツに突っ伏したまま、私は誰に言うわけでなく呟いた。
学園に戻るとすぐにレックス先生に呼び出された。
そして長い間取り調べを受けた。
その長さにウンザリとして疲れ切っていた。
「そりゃぁ、あれだけ派手に魔法を使えば呼び出されるよね……」
私はボソボソ喋った。
「あめふりの歌を歌ったらイシュケールが呼び出せる裏技、先生たちもビックリしてたわね……」
キャロルもボーッと遠くを見ながら喋った。
けれど、しばらくしたらクスクス笑い出した。
「でもその時ラズの、あめふりの歌の誤魔化し方……クククッ! 何だっけ? 『ブランジェ家にある古い書物で読んだことがあるフレーズが、いにしえの呪文だったんです!』って必死に言うもんだから、笑いを堪えるのに大変だったわよ」
キャロルが「アハハ!」と大声で笑い出す。
「何かの時に、師匠にも似たような説明してなかったっけ?」
横に座っているノアが呆れながら私の顔を覗き込む。
「言った言った。ブランジェ家には秘蔵の書物がたくさんある設定なの」
私もクスクス笑いながら答えた。
そして笑い終えると、目を伏せながら喋った。
「でも、イシュケール強かったね……先生たちも森の一部を焼け野原にしたことより、私たちが無事だったことを喜んでくれたし……」
「他の竜も同じぐらいの強さなのか?」
ノアがコタツ机に頬杖をついてキャロルを見た。
「んー、なんか裏技で会うと気性が荒いような? さっきエクセブルでイシュケールの項目見たら、無理矢理起こすと竜たちは怒るみたいな説明があったから、それかなー?って」
キャロルがニシシッと笑いながら言った。
そして「さぁ、他の裏技が無いか、エクセブル見てみようよ!」と言って自分のエクセブルをめくりだした。
「……裏技で会うと怒って強いってこと? イシュケールとの戦いも危なかったのに、次勝てるかなぁ」
私はハァっとため息をついた。
「大丈夫! エクセブル見たら弱点とか対策書いてるし! 準備していったら余裕でしょ」
「……本当かなぁ?」
私は疑いの目を竜王様に会いたくてウキウキしているキャロルに向けた。
けれど結局は純真な彼女の手助けがしたいから、裏技を探すためにエクセブルにゆっくりと手を伸ばした。
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次の日の朝、私が個室の部屋を出るために扉を開けると、コタツに座って真剣にエクセブルに目を通しているキャロルと目があった。
「おはよう!」
キャロルが元気に挨拶した。
「昨日も夜遅くまで探したのに、今日も早いねぇ……ふわぁぁぁ」
「うわっ! ラズがあくびするから、濃いのムワッときた!! 当然でしょ? 昨日は裏技出来そうな名前のやつが2個見つかったから、あと1個だし!」
キャロルはそう言いながらエクセブルをめくって見ていた。
「…………元気だね」
昨日、一度キャロルは自室に帰ったのに、もう活動している……
私はまだ目が半分閉じた状態で歩き出して、顔を洗いに向かった。
扉を開けて洗面台がある部屋に入ると、すでにノアがいて、タオルで顔を拭いていた。
「おはよー」
私は目を擦りながら挨拶した。
「おはよう。……大丈夫か?」
ノアが私の頭を撫でながら聞いてきた。
「……うん」
「無理すんなよ」
そう言いながら私の頭をポンポン優しく叩いて、ノアは部屋から出ていった。
「……ノアも私と同じ時間まで起きてるのに、なんで眠くないんだろ?」
私は一人で首をかしげた。
「何かめぼしいのあった?」
私はキャロルの隣のコタツに入った。
ルミネージュ国的には暖かい季節なのだが、朝は冷えて寒い。
「うーん……どれもこれも、難癖つければ裏技に見えてきちゃう……」
キャロルが頭を抱えていた。
「先に見つけた2つも合ってるか分からないから、何個か候補に挙げとけば?」
「そうだね……それか今日は先に見つけた2つを試そっか!?」
「……ちょっと今日は休ませてほしいなぁ……」
「えー? ……まぁ仕方ないか。ラズたちがいないとクリア出来ないし……」
キャロルは唇を尖らせながら、しぶしぶ納得していた。
「じゃぁやっぱりあと1個裏技見つけなきゃ!」
キャロルはまたエクセブルを眺め出した。
体が温まった私は、着替えるために自分の部屋に向かった。
キャロルを邪魔しないようにそっとコタツから離れる。
真剣にエクセブルに向き合うキャロルの背中を見ながら、私は部屋の扉を開けて入っていった。
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数週間後、私たちは祠の前にいた。
小さな神殿みたいな中央に、ミニチュアの神様の像みたいなのが飾られている。
その手前に4つ丸く窪んだところがあり、どうやらここに魔石をセットするみたいだった。
「やっと……やっとここまで来れた!!」
キャロルが感極まって少し目がウルウルしていた。
「……頑張ったよね、私たち。……死ぬかと思った……」
私は今までの竜たちとの戦いを思い出していた。
弱点に合わせて対策をバッチリしたためか、イシュケールの時よりは楽だった。
……ほんのちょっとだけだけど。
竜から得られた魔石が1番効果があり、私はよく魔法の銃にして撃ちまくったりもした。
風の竜はアレがないとキツかったな……
最後の竜王様……火属性らしいけど、どーなるかな?
私はドキドキしながら、キャロルが魔石を祠にセットするのを眺めていた。
それからノアと目を合わせ、お互い頷きあう。
……エクセブル、全部は集まってはないけど最終決戦だ!!
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「…………あれ? 何も起こらない」
キャロルの間の抜けた声が聞こえた。
「おかしいなぁ……ゲームではこれで竜王様が出てくるんだけど……」
彼女は半泣きになりながらも、セットしている魔石を外したり、また入れたりしていた。
ノアがおもむろに自分のエクセブルを転移魔法で呼び出して、ペラペラめくりだした。
「……竜王は出現時期が決まってるって書いてるんだけど、アイスラーがしてる呼び出し方って裏技じゃないから、エクセブルに書いてる通り時期にならないとダメなんじゃないか?」
ノアが該当ページをキャロルに見せながら言った。
「そ、そんな……やっと会えると思ったのにー!!!!」
青ざめたキャロルが空を仰ぎながら、めいいっぱい叫んだ。




