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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ジュカル学園

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53/79

53:インシス

 

 トルハの森の残雪もほぼ無くなり、エクセブルに載っている植物系集めには、うってつけの季節になった。


「あれー? ノア??」

 今日は私とノアも張り切ってトルハの森に入り、いろいろな植物を集めていた。

 けれど気が付くと、はぐれてしまっていた。

 ちなみにキャロルはヘルプリクエストで駆り出され中だった。


 ーー困ったなぁ。

 もう少し探して会えなかったら、ジュカル学園に帰ろうかな?

 

 私はそんなことを考えながら、森の中を歩いていた。




「あ、アーヴァインだ! ノア見なかった?」

 森の中でたまたまアーヴァインに会った。

 彼は従者と、ヘルプリクエストを申請したと思われるクラスメートと一緒にいた。


「見なかったけど……はぐれたの?」

 アーヴァインが、心配そうに眉を下げて首をかしげた。

「そうなの。ノア、こっちには来てないんだね」

「僕たちと一緒にいる?」

「ありがとう。でも、もうちょっとだけ探してみるね」

 私はアーヴァインにお礼を言ってその場を離れた。




 またノアを探しながら森を歩いた。

 彼の目立つ赤い髪がチラリと見えないかな? 

 と思いながらキョロキョロする。


 すると、甘くていい匂いがあたりに漂った。

「?? なんだろう?」

 私は匂いのする方へ歩いて行った。


 どんどん歩いていくと、匂いも濃くなっていくように感じた。

 何かに誘われているみたいだ。


 しばらく歩くと開けた場所に出た。

 そこに一際(ひときわ)大きな木が生えており、その根元に黒い薔薇のような花がたくさん咲いていた。

「うっ……あの花の匂いだ。近くにくると甘ったるすぎて、気持ち悪いな……」

 私は腕で、自分の鼻や口を押さえた。


 そしてエクセブルを転移魔法で取り出して、しゃがみ込んで膝の上に置き、空いている片手でペラペラめくった。


「……あった……これだ!」

 あの花はエクセブルに載っていた。

 『インシス』という植物で、魔物を誘う匂いを出しているらしい。

 また、近づいて嗅ぎすぎた魔物は、混乱や眩暈(めまい)といった状態異常を起こすと解説されていた。


「うぅ……だから気持ち悪くなっているのかな……」

 私は頑張って息を止めて、インシスを一輪つんだ。

 そしてエクセブルに挟む。


 本が一瞬光って登録が完了した。




「良かった」

 私がホッとしたその時だった。


「グルルルル……」

 キツネに似た魔動物が私の背後に来ていた。


 どうやらインシスの匂いに誘われて来たらしい。

 混乱状態でいきなり私に襲いかかってきた。


「!!!!」

 私は避けようとしたが、息も吸ってしまい、体の動きが鈍くなる。


 クラクラする……腕も引っ掻かれて痛……くない。

 ノアにうつったのかな……


 フワフワ波打つ視界の中、ノアにもらった青い魔石の入った指輪が輝きだした。

 私が怪我したのを察知したノアが、複雑な複合魔法を発動してくれたらしい。


 すると、幾重にも張られたプロテクトの魔法が、私を中心に半円状に展開された。

 さらにプロテクトの半円よりも2回り大きな半円内に、魔法が無効になる空間が発生した。

 指輪タイプに変更した時に、ノアがいろいろ強化してくれていた。

 

 ……これで魔動物に襲われる心配はなさそうだ。


 私は安心して目を閉じながら倒れた。




 ーーーーーー


「……ラズ……ラズ!!」

 私が次に目を覚ますと、ノアの腕の中だった。

 まだ頭がクラクラする。


 辺りを見ると、私がさっき倒れた場所だった。


「どこか怪我してるのか? でも怪我なら俺にうつるのに……」

 ノアがぐったりしている私を、泣きそうな目で見ていた。


「……インシスが……」

 私は、近くの地面に置き去りにされているエクセブルを指差した。

「……何?」

 私の声が小さすぎたのか、ノアが私の口元に耳を近付ける。


「……インシスっていう花が……魔物に効くらしくて……」

 私は目を(つぶ)ったまま喋った。

 ノアは私を抱きかかえながらエクセブルをめくり、インシスについて調べた。

 それが終わると、私を抱き上げて歩き出した。


「早く離れるぞ」

「……ノアの……エクセブルに…………とうろく……」

「そんなの後でいいから……」

 ノアから呆れた感じのため息が聞こえた。

 



**===========**


 次に目を覚ますと、寮の部屋のベッドの中だった。

 辺りは暗くなっており、月明かりを頼りにぼんやりと部屋の中の輪郭が見えてくる。


 私は窓の近くに立ち、カーテンをそっと開けて夜空を眺めた。

 

「おい、外には行くなよ」

 部屋の中から声がした。

 振り向いてよく見ると、ベッドで私を抱っこして眠っていた赤髪の男の子が、いつのまにか起き上がっていた。

「こっち来いよ」

「?」

 男の子に呼ばれたので素直に従い、彼の胸の中に飛び込む。

 

 ギュッと抱きつくと男の子も抱きしめ返してくれた。


「……あっつ。まだ熱が下がらないな……」

「?」

 赤髪の男の子が、たまらずそう言った。

 私は焦点の定まらない目を彼に向ける。


「インシスの近くで気を失っていたから、匂いを嗅ぎすぎたんだ」

「??」

 熱に浮かされている私は、思考が上手くまとまらない。

 体が熱く、視界がフワフワするのは理由があるそうだ。


 私は今、混乱状態だった。


「今のラズは、闇属性が強すぎて、聖魔法を弾き返すから治せないし……」

 男の子が少し(うつむ)いて考え事をしていた。

 私は男の子に顔を近付けて、彼の唇をハムっと柔らかく噛んだ。


 よく分からないけど、彼のことは大好きだった。


「??」

 顔を離して笑顔で彼を見た。


「……(たち)が悪いし……」

 男の子が項垂(うなだ)れながらため息をついた。


 男の子が悲しそう?

 悲しそうだと、私も悲しい。


 私はポロッと涙を流した。

 混乱状態なので情緒不安定だ。


「うっ、闇属性が強いから、魅了魔法も強いのが来る……酔いそう……」

 男の子が眉をひそめてそう言った。


 ……分かった。ノアだ。

 私の頭の中が少しだけクリアになった。

 彼の名前を思い出す。

 

「……ノア?? ごめん……ね??」

「!! ちょっとだけ治ったのか? ……闇魔法を使うと、闇属性の高まりが減ってく?」

 ノアが(うつむ)いてまた考えこみ出した。


 ??

 私のせいで悩んでる??

 迷惑かけてるの?


 今度は不安になって涙が出て来た。

「……」

 涙を流しながらノアを見る。

 ノアは、口元を手で覆いながら顔をしかめ、気分が悪そうにしていた。

 

 魅了魔法が効かない?

 ……魅了魔法をかけたい!


 混乱する意識の中、私は確かにそう思った。

 すると、私の瞳が一瞬だけきらりと光った気がした。


「……ラズ……やめろって。強力な魅了魔法が発動してるけど、俺には効かない……」

 ノアが苦しそうに目線を逸らして言った。


「……何で? 何でノアにはかからないの? 私に魅力を感じてないの?」

 私はポロポロ涙を流した。  

 悲しい気持ちが強くなっていたが、どんどん意識はクリアになっていくのを感じた。


「それは違う。多分初めて会った時から……」

 ノアがそっと私の顔を両手で包んだ。

 優しく笑って私の瞳を覗き込んでいる。


 私が照れて思わず目を閉じると、それが合図だったかのように唇にキスをしてくれた。

 私はもっとノアをそばに感じていたくて、彼の背中に手を回してしがみ付くように抱きしめた。

 ノアもそんな私を柔らかく抱きしめてくれた。


 しばらくして、そっと顔を離すと、私は抱きついたままノアを見上げた。

「……初めて会った時から?」

 何を言おうとしたのか気になったので、続きを聞いてみる。


「…………」

 何故かノアが頬を赤くしてフイッと顔を逸らした。

 

 ……照れてる?


「……だいぶ混乱状態が治ったな。今日はもう寝てろよ」

 ノアがそう言いながら、私をベッドに横たわらせてブランケットをかけた。


「??」

 私はそそくさとし出したノアに少し困惑した。


 けれど魅了魔法を使いすぎたのと、混乱状態で疲弊していたからか、ちょっとずつ瞼が重くなってくる。


 ……まぁいいや。

 いつかまた、聞いてみよう……


 そう思ったのを最後に、私は深い眠りへと(いざな)われていった。





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