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今日はアーヴァインとの最後の勉強会だった。
いつものように図書室で落ち合い、隣同士で座っていた。
アーヴァインは、勉強会のおかげか、元々賢いからか、魔法語への理解がかなり深まった。
私が教えられることが無くなってきた程だった。
「ラズベリー。魔法語をいろいろ教えてくれてありがとう。とっても助かったよ」
アーヴァインがいつものように穏やかに笑った。
「お役に立てたのなら良かった。でも、これからも分からないことがあったら、何でも聞いてね」
私もアーヴァインに微笑み返した。
「じゃぁラズベリーも、困った時はいつでも頼ってね」
アーヴァインが、私としっかり目線を合わせて言ってくれた。
いつも笑って目を細めているからか、ジッと見つめられると綺麗な赤い瞳がハッキリ見えた。
「あはは! 心強いね。うん、よろしくね」
私は満面の笑みを浮かべた。
勉強会も無事に終わり、私とアーヴァインは図書室から出るために、扉へ向かって歩いていた。
「ラズベリー」
アーヴァインがふと立ち止まって呼んだから、私も立ち止まって彼を見た。
「どうしたの?」
「君さえよかったら、僕の……」
アーヴァインが真剣な表情で何か言いかけた時に、図書室の扉が開いた。
私がそちらを向くと、ノアが立っていた。
「ノア! 迎えに来てくれたの?」
私は嬉しくて、タタタッとノアの方に駆け寄った。
「あぁ。今日は魔石の合成をするんだろ?」
ノアがそう言いながら、アーヴァインをチラリと見た。
それで、アーヴァインが何かを言いかけていたのを思い出した私は、後ろを振り返った。
「ごめんね。話の途中だったね」
「……ううん。何でもないよ」
アーヴァインはいつもの優しい笑みを浮かべた。
「そっか。じゃぁまたね!」
私もニコッと笑い返した。
そしてノアと手を繋いで図書室を出て行った。
私とノアは使われていない講義室に入った。
ノアが言ってたように、今日は魔石合成をするつもりだったからだ。
あらかじめ持ってきていたいろいろな魔石を、私は机の上に広げた。
「じゃぁ思い付くの片っ端からやっていくね!」
私は腕まくりをして、魔石を3つ握った。
ーーーーーー
「やっと……やっと出来た!!」
私の手の中にはトリカラートルマリンのような、3色が綺麗に分かれた四角い魔石が出来ていた。
何度も何度も『hybrid』を行ったので、私は額に汗をかいていた。
「ちょっと休憩……」
疲れてしまった私は両手を机について、項垂れた。
机の上に、先ほど出来た魔石をそっと置く。
「大丈夫か?」
ノアがそう声をかけながらも、3色の魔石を持ち上げて眺めていた。
「うん。まだ大丈夫。あとはこの全体魔法の魔石に、何か基本魔法を『hybrid』したいんだけど……ノアは何がいい? 炎?」
「ラズの俺に対する火のイメージ強すぎないか? 雷とかどうだ?」
「いいね!」
私はやる気が出たので、背筋を伸ばして立った。
そして『君のひとみに恋してる』呪文で強化した雷の魔石を取り出した。
それと先ほど作った全体魔法の魔石を、ノアに渡してもらって手に握る。
「無理すんなよ」
「うん。ありがとう」
私はノアを見て笑顔を浮かべた。
そして前を静かに向く。
「〝hybrid!〟」
私は気合いを入れて呪文を唱えた。
ーーーーーー
全体魔法の魔石のフチが、フレームがついたように黄色になった魔石が、手のひらの上に完成していた。
「出来たよー!!」
私は魔石を片手で握りしめて、ノアに抱きついた。
「良かったな」
ノアがいつものように抱きしめかえして、オデコにキスしてくれた。
「フフッ。さっそく使いにいこうよ!」
私は好奇心でキラキラした目をノアに向けた。
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トルハの森にさっそく私たちは向かった。
私にとってはすごく久しぶりだった。
アーヴァインと入ってから初めてかもしれない。
深い雪が降り積もっているので、ノアが炎の魔法で溶かしながら道を作ってくれた。
その道を転ばないように慎重に進んでいく。
しばらく歩くと、ちょうどよく魔動物の群れがあった。
エクセブルで調べると、集めたことのある魔動物だった。
まだエクセブル集めをしてはダメな期間なので、ちょうど良かった。
「じゃぁお願いしていい?」
私はノアに全体雷魔法の魔石を渡した。
「いいのか? ラズがせっかく作ったのに……」
「うん。ノアが使う所を見てみたいし、私の魔力が無くなりそうだから」
「じゃぁ見せてやるか」
ノアがニッと笑って、魔石を腕輪にセットする。
「あ、呪文は『multi-lightning』で」
私はいつものように、魔石を作った時に頭に思い浮かんだ呪文をノアに伝えた。
「分かった。〝multi-lightning〟」
ノアが手をかざしながらそう唱えると、稲妻が空から降ってきた。
けれど、私たちの目の前だけでなく、トルハの森の広範囲に稲妻が落ちた。
ランダムな場所に大量の光の筋が降り注ぐ。
凄まじい音と光に、私は思わずノアに抱きついた。
稲妻の量に驚いたノアも、私を守るかのようにギュッと抱きしめ返してくれた。
…………
どうやら、トルハの森にいる、ターゲットにした魔動物全部に稲妻が落ちたみたいだった。
「……忘れてた」
私は驚いた表情のままノアを見た。
「アーヴァインの全体魔法のイメージしかしてなかったけど、私も賢者になって魔石作る威力増し増しだし、それを扱うノアも賢者になって威力増し増しなんだった……」
「……でも、全体魔法上手くいったな」
ノアが苦笑しながら私をフォローしてくれた。
…………
「「逃げよう!」」
私とノアは一緒のタイミングでそう言うと、急いでトルハの森からジュカル学園に帰った。
けれどジュカル学園の敷地に入ると、レックス先生が待ち構えていた。
「……何の話か分かっていそうだね」
レックス先生が苦笑しながら言った。
「バレるの早くないですか?」
私は思わず聞いてしまった。
「ランドールのレベルが一瞬で2上がったからね、さっきの稲妻と関係しているんじゃないかな?」
「…………」
私たちは観念して大人しく叱られた。




