44:私が悪役令嬢役?
「昨日はごめんね。大丈夫だった?」
図書室で隣に座るアーヴァインが首をかしげながら、私の顔をのぞきこんだ。
「うん。大丈夫だったよ。寮で長々とお説教されたけど」
私は笑いながら答えた。
「アーヴァイン、今日もエクセブルの順位上がってたね! このままいけば、私の順位を追い抜きそうだね」
「昨日ラズベリーのお陰で、たくさん集められたからね」
私とアーヴァインは穏やかに笑い合った。
なんかあれだな。
アーヴァインの成長が素直に嬉しい。
『私が育てました』的な親の目線かもしれない……
そして私は気付いたのだ。
アーヴァインのエクセブルの順位が上がると、私たちがエクセブル集めを再開した時に集めやすいことに。
再開した時、私たちはどうしても他のクラスメートと差がつかないように、気を付けなくてはいけない。
けれどアーヴァインも同じぐらい、もしくは私たちより多く集めていれば、そこまで気にしなくてよくなる。
結局、レックス先生の戦略にはまってるようで、シャクだけどね。
……なので、ぜひぜひアーヴァインにはこのまま順調に、順位を上げてほしい。
私は、熱心に魔法語の勉強を続けるアーヴァインの横顔を見ながら、そんなことを考えていた。
その時、私に声をかける人がいた。
「ラズベリー、ここを教えて欲しい」
私は、アーヴァインとは反対隣に座る人の方に振り向く。
「……何ですか、ライオネル王子」
私は不貞腐れた顔を向けた。
「ここの魔法語の文章なんだけど……」
ライオネル王子は、私の機嫌の悪さに気付くことなく話を進めた。
ーー昨日、私とノアが魔法をかけ合いながら、追いかけっこを開始したあと、残されたアーヴァインとライオネル王子、ディアナの3人でお喋りしてたらしい。
それで、アーヴァインが、私から魔法語のサポートを受けていることを聞き、ライオネル王子も何故か参加してきたのだ。
私は乙女ゲーム『甘い魔法と魅惑の王子』の攻略対象者2人に挟まれて、魔法語の勉強会をしていた。
絶対これ見られたら、クラスの女子の私へのヘイトが溜まるよ……
てかすでに、ディアナからのヘイトが溜まってそう……
そしてノアにも何故か私が怒られそう……
「はぁ……」
ライオネル王子に教え終わった後に、私は思わずため息をついてしまった。
「どうしたの?」
優しいアーヴァインが手を止めて、私の方を心配そうに見た。
「ううん。何でもないよ」
私は慌てて微笑みながら、首を横に振った。
そこに図書室の扉を開けてレックス先生が入ってきた。
「お! ちゃんとやってそうだなー」
私たちの様子を見にきたのだろうか。
「ライオネルも参加してるのか。勉強熱心なのはいいことだね」
レックス先生が爽やかに笑いながら言う。
「先生。私は教師じゃないんですけど……」
私はジト目でレックス先生を見つめた。
「ブランジェは教えるのが上手だからな。ガルトナーが分かりやすいって喜んでたぞ」
レックス先生がそう言うと、隣に座るアーヴァイン・ガルトナーが頬を染めて照れながら俯いた。
うっ、可愛い反応だなぁ。
私まで照れてしまいそうだ。
私はアーヴァインを横目で見つつ、レックス先生に向かって言った。
「でもこれ以上私の負担が増えたら、大変すぎて、体調崩すかもしれませんー。風邪とか引いて、勉強会出来ないかもー」
レックス先生とライオネル王子に対して嫌味を込めた。
「え? ラズベリーそんなに大変だった? ごめんね」
標的じゃなかったアーヴァインが、私をすまなそうに見つめて謝ってきた。
「違う違う、アーヴァインに言ってるんじゃないの」
私は慌てて手を振った。
すると、廊下からキャロルの大きな声がした。
「ラズ〜! もう勉強会の時間過ぎたけど、終わったー??」
気付けば勉強会の終了時刻がとうに過ぎていた。
「近くにきたから、一緒にランチ…………」
キャロルが図書室のドアを開けて、中の様子を見て固まった。
そしてすぐさま、きびすを返して、元来た道を走り出した。
「キャロル! 待って! 私もランチ行く!!」
私は急いで荷物をまとめて席を立った。
「じゃぁまた明日!」
そしてアーヴァインだけに向けて、別れの言葉を言った。
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なんとかキャロルに追いついた私は、ジュカル学園内にある広いサロンでランチをいただいていた。
「ビックリしたー!! 攻略対象者が見事に揃ってるんだもん」
キャロルがキッシュを頬張りながら、目をまん丸にしていた。
「……何でか集まってくるのよね。もしかして私がこっちのゲームに悪役令嬢認定されてるのかな?」
私はスープを飲みながら答えた。
「あー、それあるかも……」
「ディアナは何をしてるのかしら? 本命? のライオネル王子ぐらいは、捕まえてて欲しいんだけど……」
ちょっとやさぐれモードの私は不貞腐れながらぶつぶつ言った。
「……ディアナかぁ……実はよく最近、ランドールと一緒にいるのを見るのよね。ヘルプリクエストをランドールに積極的に出してるみたい」
キャロルが眉を下げて困った表情をした。
「……もしかして、ノアが他国からの留学生のアーヴァイン役?」
私も眉を下げながら喋った。
「あー……確かに赤目被りしてるし……」
「…………」
私とキャロルはしばらく顔を見合わせた。




