39:ライオネル王子と聖女ディアナ
ジュカル学園のカフェテラスで、休憩時間にノアとまったりしていると、珍しい人たちに声をかけられた。
ライオネル王子と聖女ディアナだった。
何だかよく分からないうちに、4人で席を囲むことになった。
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「だから一度、ラズベリーも聖女かどうか調べてみないか?」
ライオネル王子が爽やかスマイルを浮かべて私に言ってきた。
「はあ」
私は気の抜けた返事をしてしまった。
話はこうだ。
この前ノアが私の代わりに怪我した時に、ディアナより強い聖魔法を使ったから、私も聖女なんじゃないかと言われているのだ。
なんだこの王子。
ただの親切心なのか、聖女なら誰でもいいから国のために揃えたいのか。
なぜこんな話にディアナを連れて来たんだろう。
隣の愛しのディアナが、不安気な目で王子を見てますよー
私は心の中で悪態ついた。
「調べるってどうやって?」
ノアがライオネル王子に聞いた。
「神殿に行って調べてもらうんだ。ディアナもそうだったよね」
ライオネル王子が、隣のディアナに優しく微笑みかけた。
ディアナは少し頬を染めながらコクリと頷く。
「…………」
私とノアは顔を見合わせた。
そして心の中で同じことを思う。
そんなことをしたら、魔物の血が流れていることがバレてしまう!!
「嫌です」
私は真っ直ぐライオネル王子を見て言った。
「何故?」
ライオネル王子が微笑んだまま首をかしげた。
「……」
どうしよう。
どうやって断ったらいいんだろう。
私は困った表情をしてノアを見上げた。
ノアが助けてくれようと口を開く。
「ラズが嫌がることを強いるなら、例え王子でも、ようしゃ……」
「いやいやいやいや! ちょっと待って!!」
私は急いでノアの言葉をかき消した。
ダメだ。
国同士の戦争が始まってしまうことを言いそうだ。
私が頑張るしかない!
「あの聖魔法の魔石は、私が長年かけて作ることが出来た唯一無二の魔石なんです。だから高威力の魔法が発動できるのですが……」
私は神妙に語り出した。
本当は辛い調味料をなめて、頑張って涙を流した苦労だけなんだけど……
しかも作ろうと思えば何個でも作れるし。
そしてブランシェ家に何個か置いてあるし。
「でもその代わりに、あの聖魔法を使う時は命を少し削っているのです。……死んだように眠ってしまうのが証拠です」
私の神妙な雰囲気に合わせて、ライオネル王子とディアナも神妙に頷いてくれる。
本当はグーグー爆睡してただけなんだけどね。
「だから……」
私は少し俯いて間を作った。
「だから?」
ライオネル王子が続きを促す。
「愛してるノアにしか聖魔法をかけません! 聖女認定なんかされなくて結構です!」
私は隣にいるノアの腕に抱きついて、ツンと顔をそむけた。
「…………」
今度はライオネル王子とディアナが顔を見合わせていた。
顔をそむけた私の目線の先に、コソコソ去っていったピンクのツインテール頭が見えた。
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あのあと、とりあえず私の言い分に納得したライオネル王子とディアナは、カフェテラスから去っていった。
私とノアはすっかりぬるくなった飲み物を飲みながら、引き続きまったりしていた。
「ビックリしたねー」
「そうだな」
「そんなに聖女っていいのかな?」
「……別に俺はどうだっていいけど、王子になると違うんじゃないか?」
「そんなもんなのかなぁ」
私は一旦カップを机に置いた。
「ねぇ、聞いて」
私はノアを見上げて見つめた。
「ん?」
「今日は演技じゃ無かったよ」
私は上目遣いをして口元に笑みを浮かべた。
「……」
ノアが頬を赤くしてそっぽを向く。
「フフフッ」
私はさっきしたみたいにノアの腕に抱きついて、肩らへんに頭をコテンとくっつけた。
「…………ラズは聖女って感じじゃないよな」
ノアがそう言いながら私の頭に自分の顔をくっつけた。
「私もそう思うー」
いつの間にか近くにきていたキャロルが、私たちの背後からそう言った。
「わっ! ビックリした!」
私とノアは思わず振り返った。
「あ、キャロル! 逃げたの見てたよ!」
「だってー、絶対面倒なメンバーだったもん」
キャロルが口ではそう言いながら、手を合わせて〝ごめーん〟のポーズをした。
「で、だいたい聞いてたけど何言われたの?」
キャロルが、さっきまでライオネル王子が座っていた席に座った。
「聖女かどうか調べないかって。あ、キャロルが調べた方がいいんじゃない?」
「私は将来、竜王様と一緒にいるから、聖女なんてなりたくないわ。国に管理なんかされたくない」
キャロルがフルフルと顔を横に振った。
ツインテールがリズミカルに動く。
「私も嫌だって断ったんだけどね、ディアナがいるからもういいじゃないって思うんだけど……」
私は、ライオネル王子の隣に、大人しく座っていたディアナを思い出していた。
ディアナより私の聖魔法が強かったからってライオネル王子に言われた。
だけど、ディアナが聖女として頑張っているのに、他の人の方が聖女として能力が高いみたいなことを好きな人に言われたら、落ち込むんじゃないかな?
「ディアナねぇ……ゲームだと、どんどんレベルが上がっていって、クラスのトップに立ったりするんだけど、今世ではどうだろうね?」
キャロルが首をかしげながら言葉を続けた。
「まぁメインストーリーなんか知らないわ。私は竜王様に会いたいし、ラズたちは大賢者の資格を取りたいでしょ? ゲームとは違ってみんな生きてるんだから、自分の幸せぐらい自分で掴み取りなさいよ」
キャロルがそう言って、屈託なく笑った。
「……そうだね」
確かに大賢者になりたくって留学してるんだから、そこは譲れない。
せめて何事もなく、ライオネル王子とディアナが上手くいきますように。




