31:賢者
ダライアス様の屋敷の中、私と連れ立って歩いているのはノアでは無くオスカーだった。
私たちはダライアス様の部屋に向かっていた。
「結局、ラズと一緒になるなんて……」
オスカーが、少し恨めしい目つきで私を見た。
「最後の方の競争、楽しかったね」
私は笑顔を返した。
賢者になるための魔導書の魔法を習得するのに残り10数個になると、オスカーと争う形になり、最後はヤイヤイ楽しく出来た。
「ラズの強化魔法が、強すぎるんだよなぁ」
「フフッ。一流の魔導師は、自分だけの強化呪文を持つらしいから、オスカーも編み出してみれば?」
私は余裕の笑みを、わざと浮かべた。
強化呪文は何?って話題にしたくないためだった。
「そう言えばノアは?」
オスカーが首をかしげる。
「ルミネージュ国への留学の手続きの書類を、王宮に出しに行ったよ」
ダライアス様の屋敷から王宮までは、5キロ以内の距離だった。
ちょっとだけ離れる時間が出来てしまうけど、留学手続きの猶予があまりないので、ノアが早々に動いてくれていた。
「ノアは、あとで来てくれるって」
「そうか。婚約者だから、ノアがラズの代理で手続き出来るんだな」
「そうそう。王宮に行かなくてもいいし、助かったよ〜」
私はホッと安堵のため息をもらした。
王宮に行きたくないのが理解出来ないオスカーは、不思議そうな顔をしていた。
そんなオスカーを気にせず、私は話を続けた。
「でも魔導書は全部習得出来てクリアしたけど、ダライアス様から合格貰えるかな?」
「どっちかが落ちても、お互い恨むのは無しだぞ」
オスカーが意地悪くニッと笑った。
そうこうしている内に、ダライアス様の部屋の扉の前についた。
ーーーーーー
「2人とも、よく来たのぉ」
中に入ると、いつもと変わらない穏やかな笑みを浮かべたダライアス様が出迎えてくれた。
私とオスカーは並んでダライアス様の前に立った。
「ワシの人生の中でも、2人の賢者を同日に輩出するのは初めてじゃ」
「それって……」
私が思わず呟く。
「2人とも合格じゃ」
「やったー!!」
「やったな!」
私とオスカーは思わずハイタッチした。
「オスカー。お主はワシの弟子では無いが、1番魔法に対して細やかな理解が出来ておる。これからも、丁寧で繊細な魔法の腕を磨いて行くように」
「はい」
オスカーが嬉しそうに返事をした。
「ラズ……ラズベリー。苦手な光魔法系の克服、よく頑張ったのぉ。お主は……突拍子の無い魔法を編み出すのに長けておる。……これからもその才能を伸ばすのは、ちと危険かもしれんが……心ゆくままに魔法を極めてごらんなさい」
「……はい!」
私も嬉しくって、満面の笑みで返事をした。
あー、ちょっと泣きそう。
我慢しなきゃ……
「ラズベリーは超神聖賢者になるんじゃろ? 頑張るのじゃよ」
「……あはははははは!!!!」
私は久々に、その酷いネーミングセンスの役職名を聞いて大笑いした。
「超神聖賢者??」
オスカーが大笑いしている私にドン引きしながら、役職名を繰り返した。
「大聖者より上の役職でね、私はそれになりたいの……プククッ」
笑いを一生懸命押さえながら、私は説明した。
笑いすぎて泣きそう!
「そんなに笑ってるのに??」
オスカーは、心底不思議そうに私を見ていた。
「では賢者の称号を与えよう」
少し私が落ち着くのを待ってから、ダライアス様がそう言った。
私はダライアス様の方を向き、背筋を伸ばしてピンと立つ。
ダライアス様が何やら長い呪文を唱えた。
それに合わせて片手をあげて、優しく横に振った。
すると光の粒子が辺りを舞い、私とオスカーの周りをクルクルと舞い出した。
その光がだんだん強くなりパッと輝くと飛散した。
「これでお主たちは賢者じゃ」
ダライアス様が豊かな髭を揺らしながら笑った。
「……」
体感的には、何が変わったか分からなかった。
「私たちが賢者だって、何で分かるんですか?」
「まず魔法省に登録されるのじゃ。それで我が国の賢者たちは把握されておる。よその国では、その者がどんな状態なのかを調べる魔法があると、聞いたことがあったような……」
ダライアス様は、髭を撫で撫でしながら考えていた。
なるほど。
ステータスを見れるような魔法があるのか。
……開発できるかもしれない……
この世界の魔法は、本当に奥が深いなぁ。
「……ラズはその魔法を作ってみる気なのかのぉ。フォッフォッフォッ。ワシの教え子たちよ。お主たちが羽ばたいて行って、どのように成長するのか楽しみにしとるぞ」
ダライアス様はそう言って、私とオスカーの頭を撫でてくれた。
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私がダライアス様のお屋敷から帰ろうと、屋敷の外を門の方に歩いていると、こっちへ歩いてくるノアが見えた。
「あ、ノアだ!」
私は手を振りながら駆けて行った。
「合格したよ!」
「おめでとう。魔法省に師匠の魔法で伝達が来て、登録されてから留学の手続きを完了させてきたぞ」
ノアが私の頭をワシャワシャ撫でながら、嬉しそうに笑った。
「一緒に行けるね! ジュカル学園に」
私もニコニコ笑った。
次はいよいよ大賢者になるために、ルミネージュ国へ留学だ!




