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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ラズベリーとノア

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3:大賢者ダライアス様


 部屋から出るようになった私を、専属メイドのミリーはとても喜んでくれた。

「ラズベリーお嬢様、心配しましたよ」

 そう言って笑う彼女には、私の魅了魔法はかかっていないようだ。


 そしてミリーにバートたち従者の様子を調べてもらった。

 彼らはいつもと変わらない様子らしい。


 ……魅了魔法がかかっている時は記憶が無くなるのかな?

 ちょっと分からないな。

 そしてそのうち解除はされるっぽい。

 その時間もどのくらいか気になる……


 けど涙を流して実験するには、あまりにもリスキーだ。




「ミリー、お願いがあるの。髪をバッサリ切ってくれる?」

 ラズベリーの自室で私はドレッサーの椅子に座り、鏡越しに隣に立つミリーを見つめていた。

 ドレッサーの上にはすでに鋏を準備していた。

「えっ? ……そんなこと出来ませんし、令嬢として髪を切るのは……」

 ミリーが青ざめた。


「……じゃぁ整えてくれる?」

 私はそう言って自分で髪を束にし、用意したハサミで無造作に切った。

 アゴ下ぐらいの長さになった髪がサラっと流れ落ちる。

「…………」

 ミリーは目の前の出来事に驚きすぎて固まっていた。


 ごめんね、ミリー。


 私は心の中で謝った。

 髪を切ったのは外に出る気合いを入れるためだった。

 

 ようは泣かなければいいんだ。

 絶対泣かない!

 

 そして、泣いた時に襲われないように少しでも女っぽさを消してしまいたかった。

 魅了魔法で豹変してしまう人を目の当たりにしてしまい、やっぱり怖い気持ちは消えない。


 でも、私はこれから自分の瞳を守るためにゲームのシナリオと戦わなくてはいけない。

 

 私はミリーが困惑しながらも整えてくれたショートカットのラズベリーを鏡で見ながら意気込んだ。

 



**===========**


「ラズベリー。随分と大胆に切ったね」

 家族で団欒(だんらん)しながらの夕食中、お父様が私をまん丸にした青い目で見つめた。

 お父様は柔らかくウェーブした茶髪に柔和な顔立ちの美丈夫だ。

 私とはあまり似ていない。

 

 私は久しぶりに家族の前に姿を現していた。

 体調不良ということで部屋に引きこもっていたから両親はとっても喜んでくれた。

 

 けれど、久しぶりに見た愛娘は髪をショートカットにしてしまっていて、両親はさぞビックリしただろう。


「……少し気合いを入れたくて……」

 私はお父様の質問に答えた。

 

 髪を短くするなんて令嬢にあるまじき行為だけど、私の両親はラズベリーに激甘なので何も言わなかった。


「気合い?」

 お母様が首をかしげて聞いてきた。

 

 お母様は貴族社会で名前を知らない人がいないほど美しくて有名だった。

 豊かな黒髪は私と違いストレートで瞳はアメジストのような紫だ。

 年の割には幼い顔立ちで若い頃からの美しさは衰えていないらしい。

 

 私はお母様に似ていた。



「……わたくし、大賢者ダライアス様に魔法を教えていただきたいのです」

 私は両親をしっかり見据えて言った。

「…………」

 両親は驚きながらお互いの顔を見合わせていた。


「……何故?」

 お父様が私に聞いてきた。

大聖者(グレートセイント)になりたいのです」

 私は大真面目に言った。


 大聖者(グレートセイント)は大賢者ダライアス様より上の役職だ。

 役職名は有名だが、誰も存在を見たことがない。

 

 けれど将来存在するようになるのだ。

 乙女ゲームの攻略対象者の1人『ノア』がそうだった。

 おそらくシンドーさんたちが急に用意した役職名なんだろうな。

 

 そう思うのは、いきなり役職名が少しダサい英語になるからだった。

 大賢者は漢字のままなのに……


 ゲームのラズベリーはこの大聖者(グレートセイント)のノアに最後は捕まえられる。

 もしかしたら、私の魅了魔法を打ち消す力を持っていたのかもしれない。


 私はそれを調べたかった。


 


「フフッ。何を言い出すかと思ったら……いつもの思い付きかな?」

 お父様が大真面目に言った私に笑いながら返した。

「わたくしは真剣ですわ」

 私は目を閉じてツンとした。

 

 お父様の意見も分かる。

 いきなりそんな雲を掴むようなことを言い出したように聞こえるだろう。


 けれど前世の記憶が蘇る前のラズベリーがわがまま言い放題で話を聞かない女の子だったので、うまいことそれの一種だと思ってくれてるらしい。


 そんなお父様の腕にそっと手を添えながら、お母様が喋りかけた。

「エドワード、良いんじゃないかしら? あのラズベリーが自分から進んで魔法の勉強するって言っているのよ」

「うーん、アイリーンがそう言うなら……」

 お父様が困った表情で笑みを浮かべる。

「ダライアス様はビクトリア公爵様がお抱えしている大賢者様だ。一度会えないか打診してみるよ」

 お父様が私を優しく見つめて、そう言ってくれた。

「よろしくお願いしますわ」

 私は今までのラズベリーが両親にしていたように、ニッコリと微笑んだ。


 ラズベリーの両親は貴族には珍しくお互いのことを本当に愛し合っていた。

 お父様は体が弱く、ほとんど屋敷から出れないのだけど、そんなお父様をお母様がいつもサポートしていた。

 仲睦まじい2人の様子は貴族社会の間でも、おしどり夫婦として有名らしい。

 

 ーーーー


 ちなみにピンクの瞳は家系に誰もいなかった。




**===========**


「ここにダライアス様がいるのね」

 私は大きな屋敷の門の前に立っていた。


 お父様がさっそく話をつけてくれて、ダライアス様と会うことが出来るようになった。

 ビクトリア公爵様の別邸にダライアス様は住んでおり、魔法の研究や指導を行っている。


 今回の訪問にあたってダライアス様から指示があった。

 貴族の令嬢がいきなり来るとみんなが驚いてしまうから、身分を隠して来るようにということだった。

 

 ダライアス様の所にいる人たちは、ほとんど一般市民だった。

 そこに1人貴族が入ると恐縮してしまうというワケだろう。


 私はショートカットにしたこともあり男の子の格好をしていた。

 涙を流すと魅了魔法がかかって襲われる可能性があるのが怖いから、せめてもの対策だった。


 体の方もあまり凹凸(おうとつ)のないストーンとした状態だし、上にローブも羽織ってるしでバレないだろう。


 お母様は出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでる魅惑のボディなのにな。

 …………


 私は気を取り直して屋敷の立派な門をくぐった。

 ブランシェ家の従者のお供も屋敷の門までで、中には1人で入る。

 ビクトリア公爵家の管轄だから1人でも安全なはずだからだ。

 

 私は今から一般市民だ。




**===========**


「初めまして。大賢者ダライアス様。ラズベリー・ブランジェです」

 

 私はダライアス様のいらっしゃる部屋に通された。

 白髪で立派な髭を生やし、白いローブを着ているお爺さんだった。

 豪華な絨毯の上にあぐらをかいて座って、何やら薬品を混ぜたりして作業をしている。

 絨毯の上には薬材の瓶やら袋やらが無造作に並んでいた。


「……これはこれは面白い。ボウヤのようなお嬢さんが来たのぉ」

 ダライアス様はニコッと笑った。

 人が良さそうだ。


「もう少し、こっちへ来てくれんかのぉ」

 ダライアス様がおいでおいでと手招きする。

「……はい」

 私はダライアス様に近付いた。

 立っているのも失礼かと思い、絨毯の隙間のスペースに正座してみる。


「……ふーむ。変わった目をしているのぉ……」

 さすが大賢者様、見ただけで何か分かるらしい。

「涙を流すと魅了魔法が発動してしまいます。治す方法や、すぐに解除する魔法はありませんか? 私は普通に日常生活を過ごしたいのです」

 私は正直に話した。

 ここに来た1番の目的を隠していては、最善の解決策が見つからないと思ったからだ。


「うむむ、治す方法は分からんのぉ。魅了魔法は人間には扱えん魔法じゃからのぉ。超高位魔法なのじゃ。解除する魔法は大賢者のワシなら使えるが……」

 ダライアス様は首をひねった。

 

 大賢者レベルにならないとダメなのか……

 

 実はこの世界で状態異常を引き起こす魔法は難しい。

 火や水を起こしたりする魔法は一般的だが、人間に働きかける魔法は高度な技術が必要になるからだった。

 だからその魔法を解除するにも必然的に高度な技術が必要になってくる。



「では大聖者(グレートセイント)ならどうですか?」

「……大聖者(グレートセイント)なら、魅了魔法がかからなくなるじゃろう。フォッフォッフォッ」

 ダライアス様は豊かな白髭を揺らしながら笑った。


 なるほど。

 やっぱりゲームのノアにはラズベリーの魅了魔法が効いていなかったんだ。

 私はダライアス様から視線を逸らして考え込んでいた。



「実は大聖者(グレートセイント)よりもう1段階上の役職があるのじゃ。それなら周りにいる人にも常に状態異常無効化の魔法がかけれると言われておる」

「!!!!」

 私はピンクの瞳を大きく見開いてダライアス様を見た。


「その役職は?」

超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)じゃ」


 …………

 ん?


「あの、今なんて……」

超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)じゃ」

「プッ……あははははははははは!!!!」


 ダッさ!

 激ダサすぎる!!

 シンドーさん!

 何が起こったんですか!?


 私はしばらくお腹をかかえて笑った。




「……すみません。あの、その超神聖(ハイパーセイクリッド)賢者(ワイズマン)……フフッ……になりたいんですけど……」

 私は笑いすぎて息も絶え絶えで聞いた。


 ダメだ!

 この役職名を言うと絶対笑ってしまう。


 ダライアス様はいきなり爆笑しだした私に困惑していた。

「……なりたいと言われても、ワシにもよく分からんのじゃよ。実在するのかも怪しいわい」

 優しいダライアス様は、様子のおかしい私の質問に対しても真面目に答えてくれた。


「ではまず大聖者(グレートセイント)を目指します。大賢者ダライアス様、どうか私に魔法を教えて下さい」

 私は必死に落ち着きを取り戻し、頭を下げた。


「ワシより上を目指すと宣言するとは、豪胆なお嬢さんじゃのぉ」

 ダライアス様はそう冗談まじりに言いながら優しい眼差しで笑った。

「だが、そうやすやすとなれたものじゃないんじゃよ。まずはラズベリー嬢……ここでは皆等しい扱いをするので、()()と呼ぼうかのぉ。ラズに適正があるかどうかを見極めさせてもらおうぞ」

 

 ダイアラス様の言葉に私はうなずいた。

 すると、ダイアラス様がゆっくり右手を横に振った。

 手の先から小鳥のような形をした光が生まれ、どこかへ飛んでいく。

 そして部屋の壁の中へ吸い込まれるように消えていった。


 ……初めて魔法を見た!

 あれは何の魔法かな?


 光の小鳥が飛んでいった方向を思わず見つめたままの私に、ダイアラス様が話を続ける。

「まずは魔法の基礎を学ぶんじゃ。ちょうどラズと同い歳の弟子がいるので、そやつに教えてもらうといい」

 そう言って、ダイアラス様がニッコリと笑った。

 ちょうどその時、私たちがいる部屋の扉がノックされた。


「師匠、何か用?」

 部屋に私ぐらいの年の少年が入ってきた。

 赤い髪に赤い瞳。

 この世界では赤は魔力の高い証拠だ。


「ワシの記念すべき10番目の弟子じゃ」

 ダイアラス様がおそらく先ほどの光の小鳥の魔法で呼び出した少年を手招きした。

 少年はそれに応えてこちらに近付いてきた。


 私の目の前には攻略対象者の1人であり将来大聖者(グレートセイント)なって私を捕まえる『ノア』が立っていた。



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