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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ラズベリーとノア

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28/79

28:魅了魔法を解きに


 王家からの婚約者の申し込みの手紙の返事を、お父様がすぐに出してくれた。

 すると、1度当人同士で話し合いたい、といった内容の返事が来た。 


 それで今日は、私とノアが連れ立って登城していた。

 馬車の中で、いつものように隣り合って座っている。


 正式な王族への訪問なので、2人ともパーティに行くの?というような正装をしていた。

 私はドレスを着て、髪も編み込まれてアップにされていた。

 ノアはブランジェ家の騎士服の上に、護衛魔導師のローブを羽織っている。


「今日は作戦があるの」

 私は前を向いたままノアに喋った。

「作戦?」

 ノアがそんな私を、見つめる目線を感じた。

「フェリックス王子との話し合いの時に、魅了魔法にかかっているようなフリをして私に(こた)えて欲しいの。合図を出すから」

 私は相変わらず、前を向いたまま伝えた。

「どんな?」

「目を見て頷く……」

「……分かった」


 恥ずかしいけど、やってみるしかないよね。

 私の目を守るためだ。

 ノアには事前には言わない。

 お互いが照れて、固まってしまいそうだから……


 


 さぁ、決戦の時だ!!


 私はまるで戦場に向かうかのように、気合を入れた。




**===========**

 

「愛しいラズベリー。会えなくて寂しかったよ」

 目の前のフェリックス王子が、切なげな表情を浮かべて私を見る。

 虚ろな瞳のまま。


 ……絶賛、魅了魔法かかり中だ。


 ここは王宮の一室。

 大きめのソファが2脚用意されており、1つに私とノアが隣り合って座り、対面にフェリックス王子が座った。


 王子の背後には近衛と思われる男性が、壁にくっついて立っていた。


「2人きりで、会いたかったんだけどな」

 フェリックス王子が、ノアを睨むようにチラリと見た。


 私は真っ直ぐ、フェリックス王子を見つめた。

「フェリックス王子。婚約の件についてですが、申し訳ございません、お受けすることは出来ませんわ」

「……それは、ブランジェ侯爵の手紙にあったように、ラズベリーが護衛魔導師を好きで、結婚したいから?」

「ええ。そうですわ。わたくしはノアを愛していますの…………」

 私は頬を染めながら、目を伏せた。

 それからゆっくりと視線を、フェリックス王子に戻す。


「ノアとはもう愛を確かめ合っております……わたくし純潔ではございません」

 私が言い切ると、フェリックス王子が息を呑んだ。

 おまけに隣の護衛魔導師も、慌てている気配を感じた。

 私の大嘘に驚いたのだろう。


「……本当に?」

 フェリックス王子は、驚いた表情のまま、少し掠れた声を出した。


「本当ですわ」

 私は隣のノアの方を向いて、グイッとローブの胸元を引っ張り、私の方に無理矢理向かせた。

 そしてノアの首の後ろに手を回し、ノアを見つめて小さく頷いた。

 私からの合図だ。


 それが終わると、私はノアを引き寄せてキスをした。

 初めはビックリしていたノアも、合図をしたからか、私の背中に腕を回して抱きしめ返してくれた。

 

 しばらくして、ノアからそっと顔を離すと、彼の胸元にフェリックス王子の方を向いて、顔をうずめた。


「身も心もノアの物ですの。お分かりになって?」

 私は上目遣いでフェリックス王子を見つめ、口元にはニッコリと笑みを浮かべた。

 サキュバスお母様のような、妖艶さを(かも)し出す。

 

 ショックを与えなきゃいけないから、本当のように堂々としなきゃ。

 ここで照れちゃいけない。




「そ、そうか……」

 若干、引き気味な様子のフェリックス王子の瞳には、光が戻っていた。


 ……やった!

 魅了魔法が解けてそう!!


 私はノアから離れて(たたず)まいを直し、フェリックス王子に向き直った。


「じゃぁ婚約の話は、無かったことにしていただけます?」

「……分かった。……??」


 話もまとまったことだし「……僕はどうしたんだろう?」と独り言と共に、不思議そうに辺りを見回しているフェリックス王子に、私はすばやく別れの挨拶をした。

 そしてノアの腕を引っ張って、足早に王宮の一室を出た。

 



 ーーーーーー


「ラズ、待てって! どうゆうことだよ!?」

 顔を真っ赤にしたままのノアが、しばらくすると喚きだした。

「帰りの馬車で説明するから!」

 私は少し睨みながらノアを見て、叫ぶように言った。

 やさぐれモードだ。

 

 辺りはもう暗くなってきていた。




 ブランジェ家の馬車に乗り込むと、いつものように隣り合って座り、私はことの成り行きを説明した。


「〜〜〜〜っ!! そうゆうことは事前に言えよ」

 ノアが顔を赤くして、私を睨む。

「事前に言ったら、こんな恥ずかしいこと、お互い演技で出来ないでしょ。おかげでフェリックス王子の魅了魔法が、無事に解けたよ。ありがとう。……巻き込んで悪かったけど、ほら『責任とる』って言ってくれたじゃん。減るもんじゃないし」

 私はジト目でノアを見た。

「減るもんじゃないしって……まぁそれは置いといて……どこまで演技だったんだよ?」

「へ?」

「……俺のこと……その結婚したいだとか、愛してるとか……」

 ノアが、私から目線をそらしてゴニョゴニョ喋った。


「え? なんて言ったの??」

 ノアのセリフの最後の方が聞こえなかったので、私はもう一度聞いた。


「俺のこと、どう思ってるんだよ!」

 ノアが目線をそらしたまま、叫ぶように言った。


「…………好き!」

 私も釣られて叫んだ。

「一生懸命守ってくれるし、フェリックス王子に魅了魔法をかけちゃって引きこもった時に『一緒に逃げよう』って言ってくれたでしょ? そんなの好きになっちゃうよ!!」

 私は恥ずかしさのあまり、言い終わったあとに両手で顔を隠した。


 素直な私の気持ちだった。

 いつの間にかノアは、可愛い弟ではなくなっていた。


「俺も好きだ!」

「知ってる!」

「結婚しよう!」

 私は思わず顔を上げた。

 頬を赤くした真剣な眼差しのノアが、私を見ていた。


「嬉しいけど、まだ13歳だしなぁ……」

 私が呟くように言うと、ノアに突然抱きしめられた。

「けど今回みたいに、他のやつにラズを取られそうになるのは、もう嫌だ。ラズが王太子妃になれるならって、最初は我慢してたけど……」

 ぎゅうっと抱きしめている腕に、力を込められた。


「……そうだね。私もノアじゃなきゃ嫌かも」

 私もノアを抱きしめ返した。




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