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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ラズベリーとノア

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25/79

25:彫金師ウォルター


 王宮からの帰りの馬車の中、いつものように私たちは隣り合って座っていた。


「レナルド王子は順調?」

 私はノアを見上げた。


「……魔法を使えるようにはなってきたけど、王子は魔法で剣を作りたいらしい。ちょっとそれは難しすぎて無理なんだけど、分かってはもらえなくって」

 ノアが肩をすくめた。


「うーん……憧れる気持ちは分かるけどね」

 私は腕を組んで前を向いて考えた。


 魔法の剣ねぇ……

 ようは火が出る剣だったらいいのかな?

 

「……ノアが私に、複雑な守護魔法がかかった部屋の鍵を作ってくれたでしょ? あれみたいに、例えば剣に魔石をセットして、火の魔法が発動したら火の剣になる〜とか出来ないかな?」

 私は思いついたことを言ってみた。


「!! それいいな! 今度彫金師のウォルターさんに相談してみようか」

「……彫金師?」

 私は首をかしげた。

「魔石用の腕輪を作ってる人だ」

 ノアがワクワクしている顔を私に向けた。

「ラズも行くか? ウォルターさんは大きなアトリエを構えてて、いろんな作品も見れるぞ」

「行く!!」

 私は大きく頷いた。




**===========**


 ウォルターさんにあらかじめ会う約束をとり、訪問する日時を決めた。


 出かける時に、ミリーにやっぱりデートだと思われた私は、令嬢らしく可愛く仕上げられた。

 まぁ大きなアトリエらしいから、失礼のないように綺麗めの格好がいいかも?


 けれど、あくまでダライアス様のもとで学ぶ『ラズ』としての訪問なので、ウォルターさんには(かしこ)まらなくていいことを伝えてあった。


 そんな感じで私とノアは、ウォルターさんのアトリエに訪問した。



 ーーーーーー


「いらっしゃい」

 アトリエの扉を開けて出てきたのは、長めの髪を後ろで縛り、メガネをかけているちょっと体格のいい男性だった。

 優しい笑顔を浮かべており、私たちを歓迎してくれているのが分かった。


 ノアが挨拶をする。

「ウォルターさん。久しぶり」

「ノア、大きくなったなぁ! 護衛魔導師になった噂は本当だったんだな」

 ウォルターさんが、ブランジェ家の上質な服を着たノアを、上から下まで眺めて言った。


「それで、護衛してるのが、こちらのお嬢さん?」

 ウォルターさんが私を見て微笑む。

「初めまして。ラズベリーです」

 私は軽くカテーシーをした。


「なんでこんな可愛らしいお嬢さんの、護衛をしているんだ? 気に入られたのか?」

 ウォルターさんが、ノアに詰め寄った。

「ラズは、師匠の所で魔法を習ってる魔導師仲間だ」

 ノアが少し面倒くさそうに答えた。


「……でも、何故それで護衛に?」

「……」

 ノアは相変わらず不機嫌な顔をしていたが、困っているようにも見えた。



「私がお願いしました。一緒に大聖者(グレートセイント)を目指しているので。危ないことも多くなるし」

 私はノアを助けるために、少し嘘の混ざった理由を伝えた。


 恐らくノアは、私を怪我させてしまった話がしたくないのだろう。

 その気持ちを()んで、嘘をついてノアをかばった。

 

「お願いしたのはオレのほうだし」

「そこ!? ゆずれないのそこ!?」

 私はビックリして目を見開く。

 

 今つっこむ所かなぁ!?


「なるほど。何となく君たちの関係性は分かった」

 ウォルターさんは私たちのやり取りを見て、何か理解したらしい。

 クスクス笑いながら言われた。


「じゃぁ早速アトリエを案内するよ」

 笑ったままのウォルターさんが室内に一歩下がり、奥の方へ腕を伸ばして、私たちが入ることを促してくれた。




「うわぁ!! とっても綺麗ですね!」

 私は、建物に使う金細工が並べられた一角を見ていた。

 繊細な模様が彫られたフレームを、まじまじと見る。

 彫金師なので、腕輪といったアクセサリーだけでなく、金細工ならいろいろな物を作っているらしい。


 もちろん、魔石をセットする腕輪もたくさん飾ってあった。

 そちらのコーナーに行くと、ウォルターさんが説明し出してくれた。

「魔石用の腕輪は、魔石に形が自在に変化するように、特殊な魔法をかけてあるんだ」

「威力が増すような腕輪は無いんですか?」

 私は目をキラキラさせた。

「……作れるかもしれないけど、需要が無いからなぁ」

 ウォルターさんが苦笑する。

「ラズは、魔石生成だけで高威力なものを作れるから、必要ないだろ」

 ノアが呆れた顔を私に向けた。

「……だって……」

 

 『ゲームなら、高威力の装備を求めちゃうよね』という言葉を、私は飲み込んだ。


「もしかして、高威力の魔石というのは、ノアがつけてる()()かい?」

 ウォルターさんが、ノアの腕輪についている、ピジョンブラッドルビーのような真紅の魔石を指差した。


「あぁ、そうだ」

「ちょっと見せて」

「いいぜ」

 ノアが魔石を腕輪から外し、ウォルターさんに手渡した。


「美しい……!! ラズが作ったのかい?」

「はい!」

 私は褒められたのが嬉しくて、ニッコリ笑った。


「将来は大聖者(グレートセイント)じゃなくって、魔石生成師とかにならないかい?」

 ウォルターさんが笑いながら言った。

「人々を守るための魔石なら需要があるんだ。こんなに美しければ、ますます需要が見込めるぞ」

「……魔石作るの好きなんで、ちょっと良いですねぇ」

 私は(くう)を見上げて、少し想像した。


「おい、大聖者(グレートセイント)になりたいんだろ? せめて賢者には俺と一緒になってくれよ」

 ノアが私にジト目を向ける。

「?? 何で?」

「賢者の次の大賢者になるには、他国へ留学しなきゃいけないんだ。その資格を得るためには、賢者になっとかないと……」

「留学かぁ……ノアが先に行っちゃいそうだね」

 私はアハハと笑いながら言った。


「……ラズが一緒じゃないと他国へ行けないだろ」

 ノアが心底呆れた表情で私を見た。


「あ、そうだった!」

 

 魂の契約魔法の距離の制限があるんだった!


「16歳になってから留学じゃぁ、遅くなるしな」

 ノアがボソッと呟いた。


 それまで聞いていたウォルターさんが、口を開く。

「何が?」


 私とノアは、ウォルターさんの方を向いて同時に答えた。

「もちろん、大聖者(グレートセイント)になることです」

「けっこ……」


 私の声で、ノアのセリフはかき消されたけれど、私には確かに聞こえた。


 〝結婚〟って言おうとした?


 ノアは頬を赤くして、フイッと顔を逸らしてしまっている。


「ハハハッ! そんなに早く大聖者(グレートセイント)になりたいんだ」

 ウォルターさんは高らかに笑った。


 私も平然なフリをして頷く。



 ミリーが言ってたことは、本当だったんだ!!

 大聖者(グレートセイント)になって私と結婚するって話。

 しかも早くなりたいって言ってたし!!


 


 それからも、ウォルターさんの説明を冷静に聞いているフリをしたが、私の心の中は大荒れだった。

 



**===========**


 アトリエを一通り見させてもらったあと、奥にあった応接間で、ウォルターさんが紅茶とお菓子を振る舞ってくれた。


「剣に魔石をねえ」

 ウォルターさんが、紅茶を飲みながら呟いた。


「出来るとは思うよ。僕は剣を作ることは出来ないから、作れる知り合いに声をかけてみるよ。その剣に僕の彫金加工で、魔石をセット出来る場所を作ろうかな」

 ウォルターさんが穏やかに言葉を続ける。

「けど、レナルド王子用に1本だけだぞ。僕は武器を作るのは好きじゃないから」

「分かった」

 ノアがウォルターさんをしっかり見据えながら頷いた。

 

 良かった!

 もし上手くいったら、レナルド王子への魔法のレクチャーもおそらく終了出来る。

 早く王宮通いが無くなって欲しいもんなぁ。


 私は目処(めど)がつきそうなことにホッとしながら、紅茶を飲んだ。

 




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