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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ラズベリーとノア

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19/79

19:paralyze


 今日はダライアス様のお屋敷で、シェリーさんに『hybrid(ハイブリッド)』の魔法について最終チェックを受けていた。

 以前のように、大きめな机を取り囲んで、私とノアとシェリーさんは立っていた。


「うん。2人とも、とっても上手に出来るようになったわね。私より上手になったんじゃないかしら?」

 シェリーさんが、優しく笑いながら言葉を続ける。

「ラズ。ありがとう。バイカラーの宝石を寄付してくれたおかげで、みんなイメージがしやすくなったわ」

「いえいえ。お役に立てて良かったです」

 私は慌てて手を上げて、横にパタパタ振る。

 そして役目を終えた手を下げた。


『ガンッ!』

 痛っ!!


 私は地味に手の小指を机にぶつけた。

 めちゃくちゃ痛い。


「……大丈夫か?」

 ノアが呆れながら私に近付いて、ぶつけた手をすくいあげて具合を見てくれようとした。


 ちなみに私がドジして負った怪我は、魂の契約魔法の範囲に入らないらしく、ノアが肩代わりすることは無かった。


「…………」

 私とノアが無言で見つめ合う。


「!!」

「わわっ!」

 ノアが目に涙を溜めている私に気付き、急いで私をかき(いだ)いた。

 私はノアの胸に顔を押し付けられた。


 一瞬の静寂のあとに、シェリーさんの呪文が聞こえた。

「…………〝paralyze(パラライズ)〟」


「うわっ!」

「きゃ!」

 私とノアが立っていられなくなって、崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。


 『paralyze(パラライズ)

  麻痺の魔法だ。


 ノアが苦しそうにしながらも腕を上げてシェリーさんの方へ向ける。

「〝blake(ブレイク)!〟」

 そして打ち消しの魔法を唱えた。

 


「フフッ。〝paralyze(パラライズ)〟」

 シェリーさんはニッコリ笑いながら、すぐに麻痺の魔法をかけた。

 ダライアス様の7番目のお弟子さんなだけあって、魔法の実力はノアより上だ。

 このまま魔法のかけ合いをすると、シェリーさんが必ず勝つだろう。


「可愛いラズ。私の物にしてあげる」

 虚ろなトロンとした目で、シェリーさんが両手を広げて近付いてくる。

 絶賛魅了魔法にかかり中だ。

 涙が出た時に、ノアが急いで胸の中に隠してくれたけど、無駄だったらしい。


「チッ……ラズ、俺の寮の部屋の鍵持ってるか?」

 麻痺の魔法の中、なんとか座り込んでシェリーさんを見据えているノアが、私に言った。

「うん。持ってるよ」

 ペタンと座り込んでしまい、両手を床についてなんとか体を支えている私は、頑張って顔を上げて答えた。

 

「よし。今からその鍵にかけてる魔法を発動させる。数分はもつから、寮の部屋に逃げろ。俺の寮の部屋はまだあるから」

 ノアが口早に説明してくれた。


「何の話をしてるのかしら? ……〝silen(サイレン)……」

「〝release(リリース)!〟」

 シェリーさんが呪文を唱えきる前に、ノアが叫んだ。


 私のポケットの中の鍵が青く光りだし、私の体を包んだ。

 複雑な複合魔法だ。

 プロテクト系の魔法が私にかかる。

 他にも何か魔法がかかってるが、すぐには分からない。


 考え事をしているよりも、今は逃げなくては!


 私は麻痺の魔法が解けたので、素早く立ち上がり、部屋から逃げ出した。




**===========**


「ハァハァ……」

 私はノアの部屋に駆け込んだ。

 全力で走ったので疲れてしまい、思わず壁にもたれかかる。

 扉が閉まると、部屋全体にもプロテクト系の魔法がかかったのを感じた。


 おそらく、鍵に埋め込まれている魔石が作動したのだろう。

 所持者が部屋に入ると、発動するように魔法をかけていたのだ。


 ……すっごい魔法だな……


 私は荒い息をしながら、ズルズルとしゃがみ込んだ。




 しばらくして落ち着くと、部屋を見渡した。

 久しぶりに入るノアの部屋は荷物が減っており、生活感を前よりは感じなくなった。

 ブランジェ家の自室にうつしているのだろう。


 前の時みたいに、ひとまずベットの上に座らせてもらった。

「うぅ……指が痛くて泣いてしまった……」

 私は自分の失態を思い出して、ノアに申し訳なく思った。


 そして怖かった。

 魔法上級者の攻撃を初めて受けたからだ。


 ノアは、こうゆうことを見越して対策を立ててくれていた。

 それが無かったら、今頃助かっていなかっただろう。


 護衛魔導師になる前から、いろいろ考えてくれてたんだ……


 私は、青い小さい魔石が埋め込まれている部屋の鍵を取り出して、見つめた。

 これを貰ったのは、ノアが護衛魔導師になる前だ。

 

 てっきり鍵を複製するのに使った魔石だと思っていたけど、私を守る魔法がかかっていたんだ。


「これ、どんな魔法で作ったんだろう?」

 私は鍵を上に掲げて見上げた。


 1つだけ分かったことは、私の護衛魔導師はとっても優秀なことだった。




**===========**


『カチャリ』

 部屋の扉の鍵が回る音がした。

 

 ノアが帰ってきたんだろうけど、私は念のために身構えた。


「もう大丈夫だぞ」

 ちょっとお疲れ気味のノアが、部屋に入ってきた。

「あ、今日は起きてる」

 そんなノアは、私を見ながら揶揄(からか)うように少し苦笑した。


「ノアは大丈夫だった?」

「なんとかね。……もっとそっちに座って」

 ノアがベットの端の方を指差した。

 私は素直に従って座っている位置を変えた。


 すると隣にノアが座った。

 とても疲れているのか瞼が少し下がっている。

「……守ってくれてありがとう」

「うん……守れて良かった……」

 ノアがそう言いながら目を閉じた。

「ちょっと寝る……」

 すると勝手に私の膝を枕にして横たわった。


 魔法、たくさん使ったもんね。


 私はすでに寝息をたて出したノアの顔を見つめた。

 眠っているとまだまだあどけない少年の顔だ。

 

「ありがとう。本当はノアが護衛魔導師になってくれて、とっても嬉しいんだよ」

 私は眠っているノアに向けて感謝の言葉を贈った。

 



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