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やっぱり、君の瞳に恋してる!〜ピンクの瞳に魅了魔法の力が宿る悪役令嬢が、最強の魔導師を目指します〜  作者: 雪月花
ラズベリーとノア

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15/79

15:sword of blaze

 それから、ノアは本当に私の護衛魔導師になった。

 ダライアス様をお抱えしているビクトリア公爵様と、両親が少し相談をし、ノアをブランジェ侯爵家で引き取った。


 ノアも戦争で両親を亡くしており、孤児だった。

 そのため遠縁の親戚の養子にし、ノアに貴族の末端の身分が与えられた。

 名前も『ノア・ランドール』になった。


 そうして、このブランジェ家で一緒に住むようになった。

 王宮の魔法省が護衛魔導師を認めたので、私を守る時だけ魔法が許可される。

 

 ノアは、ブランジェ家の立派な護衛魔導師の服に身を包み、腕輪をつねにつけることになった。


「あれ? 何だかノアの方が貴族様に見えるんだけど……」

 療養中の私は、ベッドの上で体を起こして本を読んでいた。

 まだ頭の包帯は取れてないが、痛みはだいぶおさまった。


 頭を強く打った時にケガをしたらしい。

 幸い傷は小さく、脳に影響は無かった。


「……何なの? これからこんな(きら)びやかなノアの隣に立って辱めを毎回私は受けるの?」

 私は嫌そうな顔をしてノアを上から下まで見た。


 赤髪に赤い瞳、整った顔立ち、騎士服の上にローブを羽織った護衛魔導師の立派な服……さすがゲームの攻略対象者。

 オーラが半端ない。


「……ラズベリーお嬢様」

 不機嫌な顔をしながらも、少し照れて赤くなっているノアにそう呼ばれた。

「!! あははははは!! やめてぇ! ノアには似合わないよ。前みたいでいいよ」

 私はお腹を押さえながら大笑いした。


「……ラズはあんまり令嬢らしくないな」

 ノアがそんな私を見てボソボソ言った。

「フフフッ。そうそう、その方がノアらしいよ」

 笑いの波が引かない私は、口を片手で覆いながらノアを見て言った。


「……ごめんね。お母様のせいで、16歳までのノアの人生を縛ることになってしまって……私にサキュバスの血が流れてるから難しいかもしれないけど、一緒に大聖者(グレートセイント)を目指そうね」

 私はニッと笑いながら言った。


「…………」

 初めは眉を下げて、何かを思案していたノアだが、そのうち私を真っ直ぐ見つめ、ゆっくりと頷いた。




**===========**


 私は怪我が治り元気に動けるまで、1ヶ月くらい家で療養させられた。


 大丈夫って言ってるのに、両親が過保護だから……


 私はそんなことを考えながら、ダライアス様のお屋敷の門をくぐった。


 私が療養中、ノアだけはちょくちょくダライアス様のもとに通っていた。

『半径5キロ』

 私がねじ込んだ魂の契約魔法の距離は、私の家からダライアス様の屋敷までの距離を、参考に設定した。

 だからこのぐらいなら、ノアは私から離れることが出来た。

 屋敷にいるだけだった私は、特に危険な目に合わないからと、ノアの護衛はいらないと申し出ていたのだった。


「女の子の格好でいいのか?」

 隣を歩くノアが、ムスッとした表情で聞く。


 ノアに言われた通り、私はスカートを履いていた。

 髪もだいぶ伸びたので、緩くウェーブがかった黒髪が肩につく長さになっている。


 ちなみに私もノアも、ダライアス様のもとでは皆平等だから、一般市民に見えるようなカジュアルな服装をしていた。

 

「お母様が、私じゃなくノアが(さら)われたことに、何故か怒ってるのよね。『ラズベリーの女の子としての魅力が足りないから!』って。もう髪の毛は伸ばして、女の子として過ごしなさいって言われちゃった」

 私は肩をすくめた。

 

 男の子のフリをしていても、魅了魔法をかけてしまうと結局襲われるしなぁ。

 

 それにしても、サキュバス的には屈辱なのだろうか?

 我が子が見目で選ばれなかったことに。

 しかも男の子に負けたことに。


 フード被って自衛してたから、私の方が偉いはずなのに……


 ……魔族の考え方はよく分からない。

 

 私はそう思いながらも、ダライアス様の部屋に向かった。




**===========**


「……ラズよ。こたびは難儀じゃったのぉ。ノアから詳しい話は聞いておる。()()()()()()()()()は感心せんが、お主の勇気は尊敬に値するのぉ」

 ダライアス様はそう言って私の頭を撫でてくれた。


 ()()()()()()()()()

 外で魔法を使うことは禁じられている。

 

 魅了魔法を使ったことは、公には秘密にしているので、ダライアス様が遠回しにそう言ったのだ。


「はい……気を付けます」

 私は苦笑を浮かべてダライアス様を見上げた。

「ラズとノアの間に、何やら黒い結びつきの魔法がかけられとるような気もするが……見なかったことにしようかのぉ。フォッフォッフォッ」

 ダライアス様がそう言って豊かな髭を揺らして笑った。

 魂の契約魔法の存在を、薄っすら感じ取ることが出来るのだろう。


「ちなみにこれ解除出来ますか?」

 私は首をかしげて聞いた。

「アイリーンちゃんの魔法じゃろ? 無理じゃな」

 ダライアス様が変わらない笑顔で言った。


 アイリーンちゃん……お母様の名前だ。


 何か繋がりがありそうだけど、何故か深掘りしたくなくて聞かなかった。


 大賢者と元魔王の四天王……

 他のゲームが始まってしまいそうだ。




**===========**

 

「あ、ラズだ! 久しぶり〜!!」

 いつもの魔法を学ぶ部屋で、ノアと作業していると、スチュアートが入ってきた。


 私に気付くと近くまで様子を見にきてくれた。

「あれ、今日から女の子の格好なの?」

 スチュアートが目を丸くして聞く。

「久しぶり。そうなの。13歳になったからね……」

 私は今日久しぶりに会う人みんなに、実は女の子なのを説明するのが面倒くさくって、謎の『13歳になったから男の子の格好やめます』設定を作り上げた。

 意味深に(かげ)のある笑顔を浮かべる。


「ふ〜ん?」

 スチュアートが納得したような、してないような反応をした。

 みんなだいたい同じ反応だ。


「でも女の子の格好をすると、ますますご令嬢感高まるね! ノアが責任とって護衛魔導師になったんでしょ?」

 スチュアートが最後の方はノアに聞いた。

「……あぁ、そうだ」

 ノアがゆっくりと頷く。


 なるほど。ダライアス様の屋敷では、もう私の正体やノアとの関係はみんなに知れ渡っていそうだな。


「いいなぁ! 護衛魔導師になると、外でも魔法が使えるんでしょ?」

 スチュアートが、純粋に目をキラキラさせている。

「そうなの! 羨ましいよねぇ。使いたい放題じゃん」

 私もスチュアートの意見に賛成した。


「あのなぁ。使いたい放題じゃなくて、ラズが危ない時だけだぞ」

 ノアが呆れてため息をつく。

「そんなの、私がこけそうになりましたーとか、言っとけばいいじゃん」

 私もジト目でノアを見た。


 監視カメラとか、何か証拠が残るわけないんだから、なんとでもなりそうなのに……


「でもそのいざって時のために、新しい魔法をノアは編み出したんだよね? 見たい〜!」

 スチュアートが、尊敬の眼差しをノアに向けた。

「何それ!? 見たい〜!」

 私もスチュアートの真似をしてノアを見た。


「……少しだけだぞ」

 ノアが少し照れながらフイッとそっぽを向いた。



**===========**


 魔法を試している、いつもの庭園に私たちは移動した。

 ワイワイしていると、オスカーも私たちを見つけてこっちに来た。


「ラズ、ケガはもう大丈夫?」

「うん。ありがとう。もう平気」

 心配してくれているオスカーに笑顔を返す。


 それからスチュアートの時みたいに、女の子の格好の話しになったから『13歳になったから男の子の格好やめます』の意味深設定を喋った。

 

「ふーん……?」

 オスカーも微妙な反応を返してくれた。


「そんなことより、今からノアの新しい魔法を見るためにここに来たんだ。オスカーは見たことある?」

 私は話題を変えた。

「いや、何かローランドさんとよく練習?してたのは見かけたけど……」

 オスカーはそう言って、魔石をセットしだしたノアの方を見た。


 魔石をよく見ると、私が強化魔法で作ったあのピジョンブラットのような真紅の炎の魔石だった。


 あの威力がめっちゃ高いやつだ……


 私は思わず少し身構えた。



「〝sword of(ソードオブ) blaze(ブレイズ)〟」

 ノアが両手をかざして呪文を唱える。

 すると魔石が輝きだし、赤い光の粒子が辺りにパッと散らばった。

 そして(またたき)きながら、ノアの両手の下に集まっていく。

 その光が縦の棒状に輝く集まりになった。


 ノアが両手をかざすのをやめて棒状の光の上側を片手で握る。


 すると握った部分から光が物質へと変化し、流れるように下側まで変化が広がっていった。


「すごい! 炎の剣だ!」

 私は思わず感動して叫ぶように言った。

 ノアの手には刀身に炎を宿す剣が握られていた。

 一振りすると、振った先に一筋の炎が飛んでいき、地面を線状に燃やす。

 飛んでいった炎は、魔法が無効化される壁にぶつかって飛散した。

 相変わらずその炎の威力がすごい。

 けれど魔石をそのまま使うよりは、威力を抑えて使うことができそうだ。


 無効化の壁は、私の作る魔石の威力が高いため、ダライアス様が用意して下さった壁だった。

 


「めっちゃカッコいい!」

 スチュアートも頬を赤くしてキラキラした目で見ていた。

「相変わらず難易度が高い魔法を使いこなすなぁ」

 オスカーが少し悔しそうに苦笑していた。


「護衛魔導師じゃなくて、護衛騎士みたいだね!」

 スチュアートが私に無邪気にそう言ってきた。

「……そうだねぇ」

 私はワンテンポ遅れて笑って答えた。


 そして、ずっと真剣な表情で、炎の剣の魔法を扱ってるノアを見つめた。




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