14-2 容疑と主犯格(中編)
「まず、君達の会ったその男が今頻発している増幅装置事件の原因。ひいては主犯格だと判明した」
「「………は?」」
唐突に告げられた増幅装置事件の主犯格。予想だにしていなかった内容とその人物に、春と耀は呆気に取られてしまう。
事態を受け入れるのに数秒の時間を要し、受け入れてもなお、その動揺は凄まじいものだった。
「増幅装置の主犯格って、一体どういうことですか!?」
「落ち着いてくれ。順を追って説明する」
一歩前へと身を乗り出して質問をする春。そんな春を幸夫は言葉だけで制止する。春は続けて何かを言おうとしたが、幸夫の制止が効いたのか大きく息を吐き出すと閉口し、一歩後ろへと下がる。そして、幸夫の言葉を大人しく待った。
幸夫も春が落ち着いたのを確認すると、ゆっくりと今回のことを語り始めた。
「さて、まずは昨日。君達が持ち帰った増幅装置のおかげで様々なことが判明した。その中で、今最も重要なことは装置の使用によって得たデータの送信先。それは羽並町の山に送られていた」
「羽並町って………」
「すぐ隣の町だよね?」
「ああ、なぜその山で、どうして今まで気づけなかったなどの詳細は分からない。だが送信先が分かれば当然、その山や周囲の調査を開始した。そしてその結果、その山の付近を出入りしている人物が居ることが判明した。それが君達が墓地で出会ったという男、“芥見蓮”だ」
芥見蓮、それが二人が墓地で出会った男の名前。それを聞いた二人の脳裏に浮かぶのは、男性の優しい笑顔と悲しそうに自身の家族について語る彼の姿であった。
一体なぜ、どうして。そんな疑問が二人の心を埋め尽くし、表情は暗く悲し気になっていく。そんな二人の疑問を解消するためにも幸夫は情報を話し続ける。
「芥見は元々大学の教授で魔法と人体の関係について研究していた。そんな人物が事件と無関係という方が不自然だ。早急に調査が進められ、その結果。一番有力な主犯格として断定された。まずは動機だが、君達も知っての通り芥見は妻と娘を七年前に亡くしている。それから芥見は酷く憔悴し、大学の教授も程なくして辞めている。四年前には消息を絶ち、実家の両親でさえ時折手紙が送られて来るだけで連絡が取れなくなっていたそうだ。元同僚の証言では芥見は“死者の蘇生”について調べていたらしい。そして、辞めていくときには“エデン”という単語をよく呟いていたそうだ。両親のもとに届く手紙にもエデンや死者の蘇生について書かれているため、ほぼ間違いないだろう」
「エデンって、あの都市伝説のエデンですか?」
「そうだ」
エデン、その単語に二人は信じられないものを見るかのような目で幸夫を見る。しかし、幸夫の目はしっかりと二人を見据えている。その目は今の言葉に嘘は無いとハッキリと告げていた。
「つまり、芥見さんはエデンを使って奥さんと子供を生き返らせようとしている………ということですか?」
「恐らくはな」
「そんな………、あるかどうかも分からないのに!」
エデンはその存在が噂として囁かれている程度で、有力なものでも古い文献などにソレっぽいことが書かれているだけ。ハッキリと言って、無いに等しい物であった。
「そんなものに縋りたくなるほど芥見の心は擦り減っていた。そして、そんなものに縋ってまででも芥見は妻と娘を取り戻したいのだろう」
「「………!」」
愛する妻と娘を一度に失う辛さは想像を絶するものだろう。そんなとき、都市伝説とされているエデンを希望とし、妻と娘を取り戻しそうと願う彼の心境もまた同様である。そんな芥見の心境を想い、二人はたまらず息を吞んだ。
「………ここまで話せばなんとなく察しただろうが、そんな芥見と君達は接触した。防衛隊から情報を流したのではと疑いがかけられ、私達三人が簡易的ではあるが取り調べを行う運びとなった。さっきの質問で会っていないなど嘘をついたり、そんな素振りがあれば即時拘束ということになっていた」
「………そうですか」
自分達の危うい立場について説明されるも、春からの返事はどこか上の空のように感じる。耀に至っては返事すら出来ていない。自分達の事よりも、ほんの少し話しただけの相手を想い落ち込む二人の姿に幸夫達も心を痛めてしまう。
雰囲気が悲しく落ち込んでいく中、ふと疑問に思ったことを春は口にする。
「………芥見さんとローブの男達の関係については何か分かりましたか?」
「………ああ。確証を得たわけでは無いが、ある程度の目星はついている」
「「………えっ!?」」
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