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言葉の意味

 僕は腕を押さえながら、フレイさんにあらかじめ聞いていたからくりの一つを発動させた。すると、壁の後ろに大人二人ぐらいが入れるスペースが現れた。


「ここで少し休もう」


 ディラン様の力のおかげで殺人衝動が軽くなり、自我もしっかり保てている。回復のスピードも通常よりも早くなっている。おそらく、これが本来の回復スピードなのだろう。


 早く合流しないといけないのは分かっているが、今移動しても倒れる気しかしない。

 頭と心臓は相変わらず痛みを増しているが、多分能力を解除すれば治まるだろう。


 自分の硬くなった腕を触る。


(やっぱり、能力の浸食が止まっている)


 ディラン様のおかげだろうか。ここに来る前よりは浸食してしまっているが、今は浸食が止まっている。それどころか、浸食が減っているような気さえする。ずっと、このまま、能力を発動していればあるいは……。

 そう思って、首を横に振った。あり得ないと。このまま頭と心臓が痛くなり続けたら別の要因でやばいことになりそうだ。ディラン様にも怒られそうだし。


 一人でいると余計なことばかり考えてしまう。


 ロジェはオリヴィアさんに魔導具持って行ってくれたかな。リンさん達は元気にしているかな。レオナは今どうしているかな。ラックさんは無事かな。マーゴットさん、詳しく話せなくなってごめんなさい。ネルさんはいつ真実に気づくだろうか。


(そんなこと考えたってしょうがないのに……)


 一人になると泣きたい気持ちになる。シア達には強がっていたけど、きっとシアは気づいていたんだろうな。だから、一緒にいてくれたんだろう。


 そんなことをいろいろ考えている内に、傷は普通に動ける程度に塞がった。肺を貫通させた弾丸による傷はまだ塞がりがあまい気がするが、おそらく大丈夫だろう。毒は完全に無力化とまではいかなかったが、普通に動ける程度には無力化できた。


「みんなの元に行こう」


 僕は能力を解除し、からくりを発動させる。


 完全に傷や毒が消えてからの方がいいんじゃない? そんなささやきはあったが、聞こえないふりをした。動いている方がいい。余計なことを考えなくて済むから。


 僕は、鞘に収めた刀を杖のようにして、暗闇の中へと進んだ。






「みんなとはぐれたわね」


 片面の男にからくりを発動されたとき、サノとライリー、フレイ、そしてシアといった感じに分断されてしまっていたのだった。

 だが、シアにとっては好都合だった。

 確かめたいことがあったからだ。

 それは転移門が使えない理由を確かめること。


 シアが現在いる場所は最初の地点。


 つまり、転移門で進入した地点だった。シアは、壁に手を当て、壁と外を繋げようと能力を発動させる。しかし、壁にかかっている何かに妨げられ、静電気が走ったような痛みが壁に触れている指を刺激した。


「やっぱり、この建物……」


(中に入るのは簡単だが、外に出ることが難しくなっている)


 でも、これだけではどうして建物内部間での転移はできないのかは分からない。


 もう一つの予測が当たっているかも確かめようと、再び能力を発動させる。目を閉じ、建物内の気配をたどる。

 地下に、人の気配がいくつか。だが、上には人の気配はない。


(これだけでは分からないわね)


 建物に術をかけている人が分かるかと思ったシアだったが、術と同じ魔力の人は見当たらなかった。


(本当にいないのか、もしくは巧妙に隠されているのか……。転移門の他にも気になっていることがある)


 サノがからくりを発動させたとき、フレイの指が自身の手に触れたと思ったが、指の感触がなかったのだ。まるで、実体のない精霊のように。だが、フレイからは精霊の気配がしない。となると、幽霊になるが……。サノはこれに気づいていてわざとからくりを発動させたのだろうか。二人に悟られないように自然を装って。


(あり得ない、とは言えないわね……)


 確かにリアンはサノのことを迷惑なことをする奴だと思っている。端から見てもそうだろう。

 でも、シアには意味もなく迷惑をかけるような人種には見えないのだ。今まで王女の仕事でいろんな人を見たけど、サノは違う、とシアの長年の経験がそう言っている。


 他にも気になることがたくさんある。


 サノがライリーに家族のことを聞いたこと。そして、その話していた内容だ。フレイと一緒に後方にいたとはいえ、身体強化をしたままだったから内容が聞こえてしまったのだ。フレイは身体強化をしていないようだったから聞こえてはいないだろうが……。

 あのライリーの発言。


『いたけどいなくなって、いるんだと思う』


『僕の本当のお姉ちゃんは死んでるんだけど、ママはそれを受け入れられなかったんだ。だから、パパが新しく連れてきたんだけど……』


『前に死んだはずの姉を見た』


 という言葉。普通に考えれば、死んだ姉の代わりに養子を迎えたけど、死んだと思っていた姉が実は生きていた、ということになるが、それならそう言えばいいだろう。でも、そう言わなかったってことはそうじゃないから?


 ライリーは『本当のお姉ちゃんは死んでる』と言った。そして、『ママはそれを受け入れられなかったんだ。だから、パパが新しく連れてきた』、と。

 もし、この連れてきたのが新しい姉と母親の両方だとしたら? 娘が死んだことを受け入れられなかった母親が自殺かなんかしていたとしたら?


『前に死んだはずの姉を見た』というのが、死んだ姉になりすました誰かだとしたら?


 考えすぎのような気はするが、サノが家族について聞いたのはどうしてもたまたまだとは思えないのだ。

 ライリーがフレイに話を聞かせないようにしていたのは気になるところではあるが……。


 一度サノと二人で話をするべきだと、シアは思った。


「早く、合流するべきね」


 シアはまずは来た道を行き、リアンと合流しよう、とからくりの発動ボタンに手を伸ばす。だが…………


「こんにちは」


 横から知らない人の声がシアの耳を横切った。シアはすぐさま声の方向を見やる。


「あなたは――――!!」






「ライリー、大丈夫か?」


「僕はサノの兄さんがかばってくれたから大丈夫だけど、サノの兄さんの方がやばそう」


 事の経緯は、ライリーのいた真下がからくりによって抜けたことから始まる。そのままなすすべもなく下に落ちたライリーに気づいたサノは咄嗟にその穴に飛び込んだ。そして、ライリーを自分の方に抱き寄せたまま地面に着地。今に至るというわけだ。

 そのため、サノの足は高いところから落ちたとき特有のキーンとした痛みが走っていた。


「心配ありがとな。――――なあ、ライリー。何か隠していることはないか?」


 サノはライリーを地に下ろすと、ライリーに尋ねた。


「隠していることって?」


 ライリーはキョトンとした顔でサノを見る。何を言っているのか分かっていないような顔だった。だが、サノはそんなの関係ないとばかりに言う。


「隠していることは隠してることだよ」


 ライリーはサノに背を向け、後ろに手を組んだ。


「勘がいいんだね、サノの兄さんは」


「じゃあ、認めるんだな」


「うん、認めるよ。サノの兄さんは何が聞きたいのかな? 僕の本当の母親の正体? それとも僕のお姉ちゃんのこと? あるいは、どうして僕たちがこの建物から出れたのか、かな? 聞きたい内容はこの辺だよね?」


「どれも、違うな」


「へ~。この辺だと思ったんだけど」


 ライリーは首を後ろに向け、意外、とでも言うように目を見開いた。


「俺が知りたいのは面についてだ。あの面は何だ?」


「面?」


「気づかないとでも思ったか? フレイとさっきの男、両方に似た面がついているじゃねえか」


「フレイの面、見えたんだ? リアン兄さんやシアの姉さんが気づいていないから、てっきりサノの兄さんも見えていないと思っていたよ」


「俺だけじゃあねぇ、ミカゲも気づいていたぜ? シア嬢も薄々気づき始めてるんじゃねぇか?」


「そっか。もう少し、隠蔽した方がよかったね。参考にするよ」


 ライリーはうんうんと上下に頷く。


「面ね……。あの(・・)面は、使役するための面だよ」


「使役するため?」


 サノは眉をひそめながら、ライリーの次の言葉を待つ。ライリーは下を向いた。そして、子供らしさを落としてしまったかのように、淡々と話し始めた。


「……操り人形のように操ったり、死体を操ったりするとはまた少し違うんだよね。似てるけど。面をつけた人は死ぬことは許されず、命令に沿うような行動しか、させてもらえない」


「奴隷みたいなものか?」


「奴隷の方がマシかもね。だって、自然治癒力で傷は治るんだもの。面をつけられた人は術者以外、傷が治せないんだよ。意思を持つけど自由に行動できない、得体の知れない物さ」


「フレイは、実体がなくなってきているように見えたが、それはどういうことだ?」


「――ああ、それはね。失敗作だからだよ」


「失敗作?」


「リアン兄さんと同じような存在を作る過程で、僕の母親は実験体にされたんだよ。――――リアン兄さんは権力者達に結構人気なんだよね。いろんな理由があるけど、その過程で、死んだ僕の母と新しく母親としてきたフレイが実験体に利用され、今のフレイができたって訳。面に宿っているのが悪霊と化した僕の母親。それに喰われようとしてフレイが霊体化してきているけど、そんなことフレイは知らない。考えるなって命令されているから」


「リアンを恨んでいるのか?」


「恨んでいる? 恨んでなんかいないよ。リアン兄さんを恨んでもお門違いだと思うし。僕はね、ヴァリテイターって言う組織と、欲にまみれた権力者達を滅ばしたいんだよね。そのために、厄災の一つだろうリアン兄さんをここに招き入れたんだよ。でも――――」


 ライリーは歩みを止め、からくりを発動させる。


「でも、リアン兄さんじゃあ、力不足だったね」


 ライリーは口角を上げ、サノを見た。


 その瞳には何も映し出してはいなかった。



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