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戦争開幕

 僕たちはアヴァイル国、シネラリア国そして魔族の国の領土が重なるところにたどり着いていた。


「なんか騒がしいですね。魔物も少ないし」


 本当にそうなのだ。さっきまで僕たちが通っていた道には魔物が確かにいた。けど今はほとんど見かけない。


「たぶん戦争が始まったんだと思う。武器商人らしき人もこの辺歩いてる。こうなったら秘密裏にアヴァイル国の城に潜り込むしかないかも」


 能力を使って急いでアヴァイル国に向かっていたがどうやら僕たちは間に合わなかったようだ。


「僕もオリヴィア姉ちゃんに賛成だけどグレタお姉さんと僕、足手まといになりそう。さすがにこのまま二人に運んでもらうって訳にはいかないだろうし」


「潜入捜査ですわよね? 城の構造ならわたくし把握しておりましてよ」


「城にいる兵の人数とか配置は覚えてる?」


「さすがにそこまでは覚えていませんわ」


 ドヤ顔で言っていたグレタさんだったが、オリヴィアさんの言葉にたじろぎながらも明るい声で答える。


 自信があるのかないのか。


「二人、いや三人とも潜入捜査したことないと思うし、私もあんまり得意じゃない」


 僕を除いた三人が考えるモードになってしまった。どうしよう。いや、とりあえず言うだけ言ってみよう。


「あの、みなさんシネラリア国に行くのはどうでしょう?」


「どうしてそう思ったの? リアン兄ちゃん」


「裏があるか調べるのが目的なんですよね? 裏があるならもしかしてシネラリア国もグルなんじゃないかって思って」


「可能性としては一理あるね。でも……」


 オリヴィアさんの言葉にかぶせてグレタさんが叫ぶ。


「ダメですの! わがまま言える立場じゃないって分かっているけど、わたくしリュカに会いたいのだわ。リュカが心配で、心配で……」


 グレタさんが泣き出してしまった。


 言わなければ良かったかな……。


 僕のせいでどんよりしてしまった空気を破るようにロジェが口を開いた。


「僕はリュカ王子がアヴァイル国にいるって断定して考えるのは早計な気がするなぁ」


「それはどうしてですの?」


 グレタさんが目をこすりながらロジェの方を見る。


「なんて言えばいいのかな。オリヴィア姉ちゃんは見えていると思うから分かると思うけど妖精がシネラリア国の方角に行った方がいいって言っているんだ」


「私には言葉までは分からないけどロジェは分かるの?」


「うん。僕の能力の一つに『緑の環』っていうのがあるんだ。効果を簡単にいうと自然と友達になれるんだ」


 そういえばロジェには能力が三つあるってオークションのとき司会者が言っていた気がする。でも自然と友達になれるってどういうこと?


「リアン兄ちゃん、わかんないって顔しているね」


「え、顔に出てた?」


「うん。詳しく言うと、自然と関係するものの力を借りられるんだ。妖精も自然と関わりが深いから、友達になって会話することも可能になるんだよ」


 なんかすごい。僕も早く能力が使いこなせるようになるといいんだけど。


「妖精って実際いるんですの?」


「いるよ。アヴァイル国の人間は妖精が見えなくなっているらしいからわかんないのはしょうがないけどね」


 ロジェが苦笑しながら断言する。


「とりあえずシネラリア国に行ってみようか。どっちもここから城にたどり着くまでの距離はそんなに変わんないし。グレタさんもいいよね?」


「いいですの」


 僕はほっと胸をなでおろし、オリヴィアさんの隣を歩く。ロジェのおかげで悪い空気がなくなって良かった。






◆◇◆◇


 アヴァイル国の国境と隣接しているシネラリア国の領土の空き家。誰もいないはずのそこには人影があった。


 空き家に入ってきたルーカス王子は扉を閉めると、腕を組みながら壁に寄りかかった。


「エイダン、リュカ王子の治療はどのくらい進んだ?」


「治療をしているのですが全く良くなりません」


「どういうことだ?」


 眉をひそめるルーカス王子に見向きもせず、エイダンはリュカ王子の首元を触った。そして、目を細めながら疑問に答える。


「そもそも最初から回復の魔導具が効きづらかったのですが、シネラリア国に入ってから魔導具の回復を一切受けつけないんです。そして治療中に服を脱がしたのですが、よく見ると不可視の首輪がはめられています」


「なっ! 仮にも王子だろ。なんで首輪をつけているんだ。いや、それより首輪の解析をした方がいいな」


「解析は終わっています」


「さすが天才魔導具師だな」


 ルーカス王子がエイダンを素直に褒めるとエイダンの耳は赤くなった。


(相変わらず、エイダンは照れ屋だな)


 ルーカス王子は微笑ましいものを見るようにエイダンをじっと見る。エイダンは顔まで赤くなり、隠すように手で顔を覆った。


「……ありがとうございます。すみませんが、見ないでください」


「ああ、悪いな」


 ルーカス王子が目をそらしたのを確認するとエイダンは咳払いし、詳細を話し始めた。


「首輪の効果は主の情報を一切話さないことでした。

 ただ、気になることがあって、首輪に実験体って古代文字で書いてあるみたいなんです。おそらく続きがあるのだろうとは思いますが、文字がそれ以降私には見えませんでした。おそらくこちらが首輪をしている真の目的だと思われます」


「お前でも見えないか。てことはその首輪の主は相当手練れの可能性があるってことだよな。もしくは相当バカ魔力の持ち主か。俺たちには手が負えないんじゃないか?」


「その可能性が高そうです。リュカ王子のこと、ここにおいていきますか?」


「いや、一度助けると決めたからな。最後まで責任はもつ」


「そうですか。とりあえず、引き続きここで様子見するしかなさそうですね」


「ああ、そうだな。目を覚ましてくれるとありがたいんだがな」

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