プロローグ
王太子になった王女がいた。
エルフの里の王女。
エルフの里には王女の他に五人の兄妹がいた。
王太子になった王女の位は第二。
兄妹の中で誰よりも優しく、気高い、と誰もが褒めそやした。
里の誰もが虜になり、その意志を尊いものだと慈しんだ。王女もそれに応えようといっそう励んだ。たとえそれが孤独の道を進むと分かっていても。
理解者がいなかったわけではない。それでも真に理解してくれる人はいない。王はいつだって孤独。それが王だから。
それに不満はなかった。それが当然だと思っていたから。
たとえ、誰かの記憶を見たとしてもその思いは変わることはなかった。
このまま歩くと思っていた栄光の道。
しかし、その道は思っていた以上に脆いものだったらしい。
不満に思う者がいた。
十五歳の誕生日。
背後からの刺客によって、歩んできた道は崩された。
走って、走って、走り続けて、もがき、逃げ続けた。
自分なら、立ち直れると信じていた。
全てを取り戻せると疑わなかった。
でも――できなかった。
優しさが仇となった。優しい王女は新たな命を見捨てることができなかった。
たとえ、誰にも望まれない子であったとしても。みんなを裏切ることになろうとも、戻れないと分かっていても王女は見捨てることができなかった。
この日、王女は王になる資格を失った。
王女は憎悪を飲み込んだ。
だが、それは消化されず、蓄積された。
積み重なった憎悪は、さらなる憎しみを生み、毒の華を芽吹かせた。
だから、踊りましょう。
楽しく、可笑しく、祝いましょう。
仮面をつけて、祝祭の火を灯しましょう。
喜びも、絶望も、すべて踊りに変えて。
――血の涙が、枯れるその日まで。




