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僕は幸せになるために復讐したい!  作者: 雨夜澪良
二章 異世界探索
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戦闘開始

 オリヴィアさんの結界がロジェを包みこみ安全を確保する。それと同時に、僕は床を蹴った。


 男はすぐに槍を構えようとするがそんなことはさせないと言わんばかりに一気に距離をつめ抜刀する。


 しかし男が槍を構える方が速かった。槍と剣の衝突音が鳴り響く。


「へぇ、やるじゃねえか。だが」


「……っ!」


 僕の顔が苦痛にゆがむ。


 僕が龍馬に圧倒的に劣っているもの、それは――――


「力がたりねぇ。軽いんだよ、お前の一撃は!」


 後ろに吹き飛ばされた。受け身は取ったけど剣を握っている手がしびれる。


 やっぱり身体強化がまだ完成していない僕では無理なのか。この男は身体強化が完璧にできている。しかも他の人より格段に……。体の扱いが分かっている。それだけじゃない。まだ一撃しか見ていないけど槍の熟練度が高いと分かる。くっ、どうする。打開策はないのか。勝機を探すんだ。それまでなんとか耐えきるんだ。


「リアン君!」


「よそ見している暇はあるのかしら。あなたは接近戦が好みでしょうけどそうはさせないわ」



 能力発動『魔女』


 魔法は大きく攻撃、防御、回復に分かれ、魔力と詠唱さえあれば発動する。強力になればなるほど魔力も詠唱も必要とされることが多い。魔力と詠唱のかけ算とも言える。魔力をつぎ込めば詠唱はその分省略できる。そして詠唱を長くすれば魔力の消費を抑えられるのだ。

 

 それを根底から覆すのが『魔女』


 一切の詠唱を必要としない。魔法を想像できれば即発動する。魔力もいらない。そしてその威力は自由自在に変えられるといってもいい。


 今回、城内だからシアは魔法の威力を抑えている。しかしその分、放たれたつららは鋭さを増し確実に串刺しにしようとしてきている。


 つららが弾丸のごとくオリヴィアの元へと追尾する。


 それを華麗に躱していくがどんどんシアとの距離は離れていく。


「うかつに近づけない。それに追尾されているからなおさら。それにこのつらら……」


 オリヴィアは直感でつららを破壊する手段を執らなかった。それは正しい判断だった。


 そうこのつららはただ追尾するだけじゃない。破壊されるとつららの破片がそのまま追尾する魔法になっている。つまり壊していくのは愚策でありただオリヴィアを追い詰めるだけなのだ。つららを完全になくすには全て一瞬で蒸発させるしかないのだが室内でやるには危険なのである。


 オリヴィアは本当はこの能力を発動させるつもりはなかった。この能力は有名すぎてみんなに知られすぎているのだ。能力の一部の結界やバフだけではばれることはなかっただろう。魔法でもできるものだからだ。事情があって身を隠している身としては使うことはとても嫌だった。でもこのままじゃいつまで経っても戦闘は終わらない。それに今のリアンの実力では龍馬に勝てない。リアンが持ちこたえている内に決着をつけなければならない。

 

 能力発動『聖女』


 金色の風がオリヴィアを包み込み消える。


「速攻で終わらせる」


「なめられたものね!」


 つららの本数が増え、スピードはさらに上昇する。それをオリヴィアは躱さず真っ正面から突っ込んできた。


 オリヴィアの体に一つのつららも当たらない。わざと外している訳ではない。つららがオリヴィアを避けているのだ。


「なっ!」


 ありえない。そんなの自殺行為のはず。この能力はまさか?!


 シアが思っている通りである。それと同時に一つの疑問が生まれる。どうしてここにいるのか。勇者パーティーは最近姿を見せておらず行方不明や死亡しているんじゃないかという噂がはびこっているのだ。


 シアの中で一つの仮定が導き出される。


 そういうことかしら。だったらこの方をここで殺す訳にはいかないわね。仮定が当たっていれば私が不利になる。


 本当に忌々しいわ。








「お前に俺を倒すのは無理だ。力も足りねぇ。それに覚悟も足りねぇ」


 再び吹き飛ばされ離してしまった剣を持ち直そうとして龍馬に剣を弾き飛ばされる。


「そんなことない。僕はここで死ぬわけにはいかない。覚悟だってある。僕は絶対に生き残る!」


 諦めるわけにはいかない。僕はミカゲさんの前で改めて自分の覚悟を確認した。それに何も知らないまま僕は死ぬわけにはいかないんだ。もう何も知らないままは嫌なんだ。


 ミカゲさん。ミカゲさんから借りたこの刀使わせてもらいます。僕が生き残るためにも。


 ――――――抜けない


 どうして?! ミカゲさんは命の危機に瀕したときに抜けと言っていた。まだ本当の意味で命の危機と言えないから抜けないのか?それともやっぱりこの刀は僕が扱うには早い代物だから抜けないのか?


 だんだん意識が混濁していく。ダメ、今ここで意識を手放せば僕はここで――――


 リアンの意識が完全に途絶える。


『能力にエラーを感知しました。これより本来の持ち主を強制的に目覚めさせます』




 目に見えないほどの一撃が龍馬に襲いかかる。


「なっ?!」


 異世界に来てから戦いに明け暮れていたからこそ働く直感。この直感がなければ今頃俺の首は……。誰だ、これは。明らかにさっきのリアンと違う。全ての次元が異なっている。本当にリアンなのか?


 刀を見ているリアンの目が細められる。


「はぁ~、まさかこんなに早く強制的に起こされるとは思わなかったなぁ。まだ完全に治った訳じゃないのに。まあいいや。どうせすぐ終わる」


 能力発動『剣神』


 青色に輝く光がリアンを包み込む。


 さっきのリアンからはあり得ないほどのスピード、そして力!! もう一段階上がるのかよ。


 龍馬は防戦することしかできない。しかもその防御も完全ではない。体のあちこちから切り傷が増えていくばかり。直感で避けているようなものだ。


 そして一番の問題は見えないことだ。剣筋が速すぎて。見えてもそれは残像なのだ。それが余計に俺を惑わせる。それに速いだけじゃない。相当な技量を持ってやがる。あの銀髪の女と同じ強者の気配がする。


 龍馬の顔が苦痛に歪む。


「へえ~、君、意外とやるね。まだ本来の力を出し切っていないとはいえ」


 視界から消えた?! 上か!!


「チェックメイトだ」


 疾風のごとく速い剣撃が槍を二つに切断する。


 そして龍馬の首元に刀が突きつけられる。


「俺の勝ちだね。とりあえず、復讐してもいいけど国を巻き込むのはやめなよ。負けたんだからさ」


 龍馬は降参のポーズをとり、どこかすがすがしい顔で言った。


「『復讐は清算する行為であり、己が前に進むためには必要なこともある。けど、関係ない人を巻き込むのはやめろ』

 銀髪の女もあなたと同じようなこと言ってたぜ」











 エルフの里に隣接している森で魔物を憂さ晴らしに狩っているときだった。その女と会ったのは。


「なあ、そこのお前、少しいいか?」


 魔物を刈り終わり解体しているとき気配もなしに現れたのだ。俺は警戒した。そもそも俺が言うのも何だがソロでこんなところにいる奴は頭がおかしい。頭のネジがぶっ飛んでいるんだろう。それが俺のこの女に対しての第一印象だった。


「その前に話を聞きたいなら名前ぐらい名乗ったらどうだ。話はそれからだ」


 女はそれもそうかという仕草をした。そしてこう名乗ったのだった。


「私はユースティアという。あんまり私のことを人に話さないでくれるとうれしい」


 ユースティアと名乗った女は最初に話しかけたときとは打って変わってその声は穏やかだった。


「俺の名前は――――」


「ああ、知っている。龍馬だろ? そして異世界からの転生者だ」


 こいつ、どこまで知っていやがる。しかも断言しやがった。俺が転生者だと知っているのはリュカだけのはずだ。だがリュカは言うはずねえ。泣き虫だがそういうところはしっかりしていやがるからな。


「それでお前は俺に何のようだ。俺のこと詳しく知っているみたいだが」


「別に警戒する必要はない。無意味だからな。ただお前に忠告をしにきたんだ」


「忠告だと?」


「ああ。復讐は清算する行為であり己が前に進むためには必要なこともある。けど、関係ない人を巻き込むのはやめろ。そういう忠告だ」


「お前に俺の何が分かる。俺はあいつに殺された。そして俺をかばった女も殺された。あいつの周りも同じ目にあわせてあいつを絶望に落とさないと気が済まない」


「龍馬の気持ちが分からないわけではない。――――最後に一つだけ言わせてもらう。お前をかばってくれた女の気持ちとそれを感じてしまった者と向き合え」


「何を言って……。あいつは関係ないだろ。ここにはいないんだから」


 もうそこには女の姿はなくなっていた。










「そうか……」


 どこかリアンは物思いにふけっているようだった。


「名前、聞いてもいいか?」


「俺の名は……」


 名前を言おうとして後ろになぎ払うかのように剣撃を放つ。


 カキンと金属と金属のぶつかり合う音が鳴り響いた。


「役立たず。龍馬には期待してたのだけど。もういいわ。主さまにも戻ってこいって言われているし、この国を滅ぼすのは次の機会にするわ。またね、みなさん。次、会うことがあったらだけど」


 リアンに向かってナイフを投げたシアはそう言うと異空間へと入って行った。


 ロジェの結界を解除する。ロジェがオリヴィアさんの元に走り出した。そして裾をつかんだ。


「オリヴィア、無事か」


「無事。けど、逃げられた」


「そんなときもあるさ。おっと、タイムリミットの時間が迫っているな。

名前、だったよな。俺はアランだ。オリヴィア、あとはよろしく」


 そういってアランは壁に寄りかかり座ると目を閉じて意識を失い、代わりにリアンの意識が浮上する。


「あれ、僕、確か戦闘中に……」


「戦いは終わったよ。後は後始末だけ。龍馬だったよね。王たちの下に案内して」


「それはいいが、王太子だけはダメだ」


「それでいい」


 そうして僕たち三人プラス龍馬で王たちの元に向かおうと動いたのだが……


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