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虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜  作者: フーツラ
異世界との繋がり

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森の民

「それは本当か! 袴田」


 中野集落に受け入れられた俺達は、復興を手伝いながら気ままに過ごしていた。といっても作業を手伝うのは俺ばかりでニコは遊び呆けていたが……。


 南側ゲートの穴を塞ぎ終え、ちょっとした打ち上げを開いていた時のことだ。車座になって酒を飲み、取り止めのない馬鹿話をしている中で、袴田がある存在についてさらりと言った。


「あぁ、エルフならいますよ。女の」


「なに! どっちのタイプだ!?」


 俺の声に袴田はビクリと仰け反る。


「……タイプとは?」


「色白で貧乳な方か!? それとも褐色の肌に巨乳の方か!?」


「……褐色で巨乳の方です」


 よし! ダークエルフの方だ! これは映えるぞ!!


「素晴らしい! 初めて役に立ったな! 袴田!!」


「そ、そんなぁ……」


 不服そうな顔をしているが、無視だ。


「で、どこにいる!? 今すぐ案内してくれ!!」


「……ちょっと待ってください。もう夕方ですよ? 今から行っても夜になってしまいます。せめて明日にしてください。そうすれば集落の者に案内させますから」


「そこをなんとか!」


「……駄目です。危険です。明日の早朝から出かければ昼には着きます」


 ちっ。仕方ない。ここは集落の長に従おう。


「分かった。明日早朝から頼むぞ」


「……はい」


 俺は渋々了承し、ローストしたこおろぎを咀嚼した。エルフ……待っていろよ!



#


「重い」


 俺に重なって眠るニコを退けてベッドから降りる。窓の外はまだ薄暗い。随分と早く目が覚めてしまった。


「ニコは寝ていろ。一人で行ってくる」


 意外と眠りが浅かったのか、ニコは薄目を開けてこちらを見る。


「……駄目。一緒に行く。眠い。寝る」


「どっちだ。寝るのか一緒に行くのか」


「……おんぶ」


 よし、置いて行こう。俺は素早く身支度を終え、朝食としてカメムシを齧る。ちょうど菓子パンの感覚。適度な甘味が脳を覚醒させる。


 あてがわれた部屋を出ると、人影が見える。こちらに気付いて歩み寄り、男は頭を下げた。どうやら、この男が俺をエルフのところまで連れて案内してくれるようだ。


「ちょっとルーメン! わぁを置いていくつもり!?」


 男との会話を聞いて目を覚ましたニコが、寝癖のついた頭で部屋から飛び出してきた。不満げだ。


「どんな危険があるか分からない。いいのか?」


「ルーメン、顔がニヤけてる! いやらしいことを考えているだろ!! 絶対に一人ではいかせないから」


 ちっ。鋭いな



#



 中野駅跡から北は深い森になっていた。


 都市の森林化にはどうやら差があるらしく、この辺りは今まで歩いたどこよりも緑が濃い。樹木に挟まれるようにして崩れた住宅が行手を阻む。


 案内を任された男は森歩きに慣れているらしく、スルスルと進んでいき、ニコも後に続く。


「ルーメン! 遅い!」


「いや、お前らはやすぎだ。もう少し手加減しろ」


 最近、ボロボロとはいえ舗装された道ばかり歩いていたせいだろう。平らなところのない森の道程は体力を奪う。しかし、この先にはエルフがいる。しかも、ダークエルフ……。


「おっ、どうしたルーメン。急に元気になったな」


「目的を思い出したら活力がわいた」


「あっ、またいやらしい顔をしてる! 駄目だぞ! 絶対に駄目だからな!!」


 ニコは拳を握り、グイっと見上げるように抗議する。


「それは誤解だ。エルフといえば森の民。きっと昆虫や森の生き物にも詳しい筈。俺はそれを目的にしている」


「嘘だ! ずっとニヤニヤしている!」


「これは未知なる昆虫へのニヤニヤだ!!」


「……あの、置いて行っちゃいますよ?」


 男が腰に手を当て、呆れた様子でこちらを見ていた。


「すまない。急ごう」


 森はさらに険しくなる。そして徐々にこの世ならざる雰囲気を帯び始めた。

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