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虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜  作者: フーツラ
Dr.アダチの教室

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袴田の困惑

「ルーメン殿の様子は?」


「まだ部屋で休まれているようです」


「あの娘は?」


「集落の中を散策しています。退屈なようで」


 集落の男はそう答えながら、運んで来た食事のトレイをベッド横のテーブルに置いた。袴田がベッドから上半身を起こし、トレイを眺める。


 勝利を祝う為だろうか。いつもより豪勢な食事だ。


「集落の被害はまとまったか?」


「……はい。死者が28名。重症者は52名。南ゲート内側に開いた穴は新宿方面へ伸びており、おそらくモンスター達の拠点の近くまで続いているかと」


 袴田が顔を顰めた。


「俺の力が足りないばかりに……」


「そんなことはありません。袴田さんのおかげで私達は今日も生きています」


「しかし……」


「袴田さん。フォローする方の身にもなってくださいよ。あなたが弱気なことを言うと集落全体に影響するんです。もっとドンと構えてください」


「……わかった」


 男はそう言うと、袴田の居室から出て行った。モンスターに襲われた後の集落は忙しい。怪我人の世話に設備の修繕。いつ次の襲撃があるか分からない。五体満足な男がのんびりとしているわけにはいかなかった。


 袴田は限界まで能力を使った為に立ち上がれないほどに憔悴していた。食欲もなかったが食べないという選択はない。一日でも早く回復しなければという思いがある。


 珍しくゴロゴロと肉の入ったスープを食べ終わったのは食事を始めて一時間が経った頃だった。トレイに皿を戻し水を飲んで口の中を落ち着かせたその時、部屋の外で気配がした。


 足音はほとんどしないが、空気が動いている。男が食器を下げに来たのか? しかしそれにしては慎重だ。


 袴田が入り口に視線を向けると現れたのは長身の男だった。


「……ルーメン殿」


「あんたがこの集落の長だろ? 名前は……」


「袴田だ。このような格好で済まない。集落を救ってくれたことを感謝している」


「先に言っておくが俺は救世主でもなければお人好しでもない。配信者だ。今も絶賛配信中だ」


 ルーメンはそう言いながら、右手で小さな板? を触っている。袴田は初めて見るものだ。


「……配信者とは何のことだ?」


「うん? 配信者はなんというか……そうだな。視聴者の期待に応える者のことだよ」


「視聴者は何処にいる?」


「ここだっ!」


 ルーメンが手に持つも長方形の板を袴田に見せた。そこには日本語が次々と表示されては流れていく。


「おぉ、袴田! この時代のイケメンランキングの一位に認定されたぞ。よかったな」


「……よく分からない」


「切なげな表情にキュンキュンします! だそうだ」


「……そうか」


「あっ、でもこれ男のコメントだな。袴田はどっちでも大丈夫か?」


「……」


 袴田は困惑していた。目の前にいるのは集落の危機を救った絶大な力を持つ男の筈だ。長柄のハンマーを振るい、バッタのモンスターの集団を全く寄せ付けず、一人で壊滅させた。


 袴田が見たことのあるどんな能力者よりも強かった。そんな男が部屋にやってきて飄々と訳の分からない会話を続ける。


「ところで袴田、今回のバッタ騒動だがどこまで知っている?」


「……私はこの中野集落を守っていただけに過ぎない。あのバッタのモンスターに新宿集落が落とされたことは知っているが、それ以上は知らない」


「そうか」


「もし何か知っているなら教えてくれないか? 次の襲撃に備えたい」


 袴田の問いルーメンは一瞬目を瞑り、ことわることなく部屋にある革張りのソファーに腰を降ろした。そして口を開く。


「まず、バッタ野郎の襲撃は当分ないだろう」


 袴田は起き上がり、ベッドに座ってルーメンと対峙した。


「それは何故だ?」


「俺が穴の中で大半潰した。それに製造者が逃げた」


「製造者? ちょっと待ってくれ……。あれはモンスターでは──」


「半分モンスターだな。そして……もう半分は人間だ」


「……どういうことだ?」


「あれはある能力者によって生み出された生き物だ。モンスター化したトノサマバッタと人間を掛け合わせたものだ。本人はその能力を【融合】と呼んでいたがな」


 袴田の顔から血の気が引いていく。あのモンスターの中に、集落から連れ去られた子供がいた可能性に気が付いたからだ。


「何故そんなことを! その能力者はどこに!?」


「奴はバッタの軍勢をこの集落に差し向けると都庁跡から姿を消したよ。もしかしたらその能力者のことを知っているかと思ったんだが、知らないようだな」


「……すまない」


「いや、いいんだ。ヤツが上手だった」


 ルーメンがまた目を瞑った。一体何を思い出しているのか。都庁跡で何を見たのか。袴田は聞く気にはなれなかった。


「ルーメン! 起きたか!!」


 俄に飛び込んできたの額に角を生やした女の子だった。先程のルーメンの話が袴田の表情を暗くする。


「まさか、この子も……」


「違うし! わぁは天然モノだからな! 父親がオーガで母親が人間だ!!」


「……申し訳ない」


「話の流れ的にそう思っても仕方ない。さて、袴田……」


 袴田は身構える。


「救世主でもなければお人好しでもない」とルーメンは言っていた。つまり、何かを求めるつもりだろう。


「今回の戦いで大分消費してしまってな。出来れば集落の民にも協力して欲しいんだ。集めるのを」


 唾を呑み込む音が部屋に響く。


「一体、何を集まれば……」


「──虫だ! その他、珍しい生き物も頼む。モンスター化したやつだ!!」


 ……ルーメンの考えがまるで分からない。冗談を言う風でもなく、本気で虫を集めてくれと言っている。


 袴田はまた首を捻ることになった。

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