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虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜  作者: フーツラ
第二章 東京

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旅立ち

二章、最終話!!

「本当に行くのか? 集落の住人はルーメンのことを受け入れているし、俺も居てくれると助かる」


 どこで聞きつけたのか。一条院がわざわざ部屋にやって来て、寝起きの俺にそう言った。


 ベッドから起き上がり、眠たい目を擦って見ると、いつになく真剣な表情だ。


「もう一ヶ月近く世話になっているからな」


「まだ、一ヶ月だ。一年ぐらい居着くやつもザラにいる」


「そんなに長逗留出来るかよ。俺は今も昔も根無し草だ」


 一条院は部屋に踏込み、頭を掻く。


「ちっ。……正直に言う。ルーメンがこの集落に居てくれるだけで、俺は安心して狩猟や漁に出ることが出来る。能力者が居ると成果が段違いなんだよ。頼む! もう少しだけ、この集落に居てくれないか!?」


「やめてくれ。集落のボスが俺みたいなモノに頭を下げるな」


 って、カメラ切るの忘れて寝てたな。これ、配信されてるぞ。


「この通りだっ!」


 一条院が更に深く頭を下げた。いやこれ、不味くないか? 俺は恐る恐るスマホを取り出してコメント欄をチェックする。


 コメント:何この展開!?!?!?

 コメント:一条院がルーメンの部屋にきてお願い?

 コメント:へええ。なんのお願いかなぁ……

 コメント:ウホッ! いい男!!

 コメント:ルーメン、男心は分かるのか……

 コメント:えっ、このまま配信するの?


 これはよくない! とんでもない方向に行ってしまっているぞ!!


「断る!!」


「そこをなんとか!!」


 一条院がグッと近寄って来た。


 コメント:いやああぁぁ! 一条院んんんんー!!

 コメント:ぐいぐいくるなぁ

 コメント:接続数の上がり方がエグいwww

 コメント:ルーメンさん、そうだったの……

 コメント:ちょ、これ以上はBANあり得るぞ

 コメント:アッー!!


「くどい! 俺は配信者だぞ! 常に新しい絵が必要なんだ!!」


「……」


「諦めろ」


「……すまなかった。忘れてくれ」


 一条院は踵を返し、静かに部屋から出て行った。少しだけ罪悪感を覚えたが、仕方ない。俺に、ここに留まるという選択肢はないのだから。


「……早々に出発しよう」


 誰にきかせるわけでもなく、自分の意思を固めるための独り言。これ以上居たら、馴れ合っちまう。そんな退屈な日々を視聴者に見せるわけにはいかない。


 さあ、出発の準備だ。



#



 二十一時にもなると大井町集落はすっかり寝静まっている。俺はリュックに詰め込めるだけ荷物を詰め、ハイオークのハンマーを手にして外に出た。一部の見張りを除いて音を立てる者はいない。


 久しぶりにナイトビジョンを取り出して周囲を確認する。物見櫓の上で見張りが欠伸をしていた。正面から出て行ってもいいが、確実に見つかるな。面倒はごめんだ。


 しかし、フナムシの天日干しを切らしているのが痛い。バフをキメれば、ひとっ飛びだったのに……。


 俺は結局、世奈に教えてもらったバリケードの抜け穴──子供達の間で知られている──を目指すことにした。大人が通るにはギリギリだが、無理をすればなんとかなる。


 足を忍ばせながら、夜の集落を歩く。何か悪いことをしている気分だ。


 かつてパドックのあった所の裏に、その抜け穴はある。


 瓦礫がうずたかくある所の一部、廃タイヤを退かすとぽっかりと向こう側が見えた。


「……さらば。大井町集落」


 ──ジャリ。 砂を踏む音がする。


「待って!」


 ……暗闇の中から声がした。月の光が声の主を照らす。


 世奈だ。


「夜遊びは感心せんな」


「違います! ……ルーメンさんがいなくなるって聞いて」


「一条院から聞いたのか?」


「……はい」

 

 次の言葉は続かない。


「もう行く」


「あのっ! また戻って来てくれますか?」


「……生きていたらな」


「ルーメンさんは死なないタイプです! だから戻ってくるってことですね! 了解です!!」


「勝手なことを……」


「あと、これ。みんなからの餞別です!」


 世奈は後ろ手に持っていた大きな麻袋を差し出す。何やら、ぎっしり詰まっている。


「有り難く頂戴する。……じゃーな」


「はいっ! いってらっしゃい」



 身体を縮めてようやっと穴を抜けた。


 リュックに麻袋、ハイオークのハンマー。随分と大荷物になってしまったな。


 少しして麻袋を開けると、魔物化した虫がこれでもかと詰まっていた。……よく分かっている。


 俺は振り返ることなく歩き始めた。

第三章はどんな話になるのか!? 乞うご期待!!


いいね、ブクマ、評価、よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 一部の界隈がざわつく展開でしたなw 良く分かってるのは分かったからそのパンパンのやつを俺からなるべく離してくれないか?(ヒエッ)
[良い点] 勝った第二章完!
[良い点] ギチギチやな
感想一覧
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