表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/60

タイムスリップ

ごめんなさいごめんなさい! 出来心なんです!!

「おおおおー!! あと五百人です! ルーメンチャンネル登録者数百万人まで、あと五百人というところまで来ましたー!!」


 コメント:うおおおお!! もう少し!!

 コメント:これ、今日中に達成だな

 コメント:みんな登録しよう

 コメント:登録解除しろ! 配信がずっと続くから!!

 コメント:解除すぺ

 コメント:すぺ


「おい! コメント欄!! ふざけるな!! もう五日もずっと無人島で配信してんだからな!! そろそろ家にかえりてーんだよ!! マジ、お願いします。チャンネル登録解除しないでー!!」


 視聴者とじゃれ合いながら、昼飯の食材は何にしようかと思案する。海辺に行ってフナムシを捕まえ、山の石をひっくり返してダンゴムシを採取。節足動物の食べ比べでもするか? 正直もう体力も限界だし、無理はしたくない。


 アクションカメラをネックマウントに取り付け、しばらく座っていたアウトドアチェアから立ち上がる。おぉ、頭がくらくらするぞ。


「うぉ、立ち眩みだわー。これはタンパク質を摂らないとマジやべー。と、言うことで、今からフナムシを捕まえに行きます。奴等、食えるんすよ。素揚げにしてバリバリいけます」


 コメント:オエエエエー!!!!

 コメント:海のゴキブリじゃん

 コメント:釣りの餌で使うぞ。フナムシ

 コメント:踊り食いやって! ルーメンさん!

 コメント:踊り食い? 見たい!!!!

 コメント:踊り食い中に百万人!!!!


「ふざけんなよ! 踊り食いはやべーだろ!! 殺菌しないと死ぬぞ!!」


 全く、視聴者の悪ノリには参る。ただ、コイツらが俺を支えてくれているのも事実。ある程度の絵は見せないとな……。


 海岸の岩場に行くと、俺の足音でフナムシがサッと逃げていく。しかし動かない奴等もいる。何やら俺よりも先にランチをしているらしい。波に打ち上げられた小魚の死体に群がってやがる。


 クソっ! 普通に魚を食いやがって! 俺がそんなことしたらコメント欄がめちゃくちゃ荒れるぞ! 


 虫食べる系配信者は真っ当な食事を許されない。


 最近なんてファミレスで食事してるところをTwittorに晒されたからな……。ルーメン、普通のモノ食べてるじゃん! って。当たり前だっつーの! 俺だってハンバーグとかドリアとか食べるっつーの!!


「はい、皆さん、見てください。愚かなフナムシが食事に夢中になってますよー。自分達が食われる運命だとも知らないで。コイツラ、海の掃除屋なんて言われてて食欲旺盛なんすよねー。それを食物連鎖の頂点に立つ、このルーメン様が頂くわけです」


 そっと近づき、小型のタモ網を構える。よし、まだフナムシどもは食事に夢中だ。


「オラッ! 観念しろ!!」


 勢いよくタモ網をフナムシの集団に被せる。


「おおおおー!! めっちゃ入っためっちゃ入った!!」


 パニックになったフナムシがわざわざ網の奥に入ってきた。サッと近づいて網を手で締めて袋状にし、フナムシの逃げ場をなくす。


「見て下さい! 大量です!!」


 コメント:きめえええー!!

 コメント:モザイクかけろよ!!

 コメント:うじゃうじゃいる!!

 コメント:マジこれ食べるの? やばくね?

 コメント:馬鹿、ルーメンさんなら踊り食い余裕よ

 コメント:ルーメンはやる男


「うっせええ! お前等、煽ったら俺は何でもやると思ってんだろ!! 何事にも限度があるんだぞ!! フナムシの踊り食いはアウトかセーフで言ったら……」


 コメント:セーフ!!

 コメント:セーフだな

 コメント:セフセフ

 コメント:セーフ・オブ・セーフ!!

 コメント:絶対セーフしょ!

 コメント:はいはい。セーフセーフ


 スマホの画面にものすごい勢いで煽りコメントが流れる。ウオオオオオー!!


「セーフだああああああー!!!!」


 やってやらァァァァ!! タモ網から一匹、フナムシを掴んで口に放り込む──。


「オエエエエエエエー!! ぺっ! ぺっ! こんなモノ生で食えるわけ──」


 ──また立ち眩みがやってきた。ダメだ。いよいよ限界だ。無理してテンション上げ過ぎた。下半身の力が抜け、海水で濡れた岩が俺の足をすくう。


 やばい。視界がスローモーションだ。雲一つない青空がいっぱいに広がる。あぁ、なんて気持ちのよい光景だろう。


 ──ゴンッ! と後頭部に鈍い音が響いたのを最後に、俺は意識を失った。

ブクマ・評価、こんなゲテモノを食べてほしいという感想等、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは一気読みしたいけどまだ足りない!! もう少し待ってから一気読みしてやろうねぇ・・・フヘヘ(廃人)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ