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「好きだから追放する」と、同性の勇者から言われました。ボクは全力で逃げます!  作者: 椎名 富比路
第二章 男の娘ニンジャと、はじまりの村

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「おねえちゃん」だって!?

 ゴブリンたちが少年たちに撃退されるのを確認して、ウルフの方角に顔を向く。


「お前たちもやるか?」


 ボクが身構えると、ウルフたちは森へ逃げ帰る。


「ふう」


 深追いはしない。ボクたち冒険者の役目は、あくまでも村や畑を守ることだ。ウルフの肉まで獲れとは言われていない。


「あのぉ、事後処理になるんですけれど」


 冒険者のおじさんに声をかけて、ボクは倒れているゴブリンを指差した。


「ああ。譲ってもらって感謝する」


 気絶させたゴブリンの処理を、冒険者のおじさんに任せる。


 ボクは、手を貸さない。


 おじさんは、少年少女たちにとどめを刺させた。襲ってくる敵の命を奪うことも、大事な学習なのである。


「助かったぜお嬢ちゃ……って、ホルストんとこのサヴか」

「お久しぶり」


 冒険者の男性は、ボクもよく知っているベテランさんだ。


「トレーニングの邪魔をして、ごめんなさい」

「とんでもない、助かった。もうすぐ俺は引退するからな、ガキを鍛えていたんだ」


 足をケガしたので、鍛冶職について生計を立てるという。


「前から、子どもたちに武器や防具を作ってあげたいって言っていましたね」

「よく覚えているな。チビどもを立派に育てるのが、今の俺の夢だ」


 ベテランさん直属のお子さんで、三兄妹だという。


「おねえちゃんすげー!」


 長男らしき少年が、ボクの顔を見て声をかけてきた。


「ボクが、おねえちゃんだって?」


 子どもの発言とはいえ、ボクは眉間にシワを寄せる。キュアノじゃなくてボクに「おねえちゃん」だなんて。


「だって、おねえちゃんじゃん。格好といい背丈といい。そっちの『エルフのお姉さん』はかっこいいけれど」


 たしかに、胸がなかったらキュアノの方が男らしいよね。


「オレ、将来おねえちゃんと結婚する!」「メイクの仕方を教えて、おねえちゃん」


 こらこらキミたち、ボクはお姉ちゃんじゃねえよ。


「お前ら、コイツの名はサヴだ。お前らの大先輩なんだぞ。ちゃんとあいさつをしろ」

「わかった。よろしくサヴおねえちゃん」


 何もわかっていらっしゃいませんね。


「いや、ボク男だからね」

「うそだぁ。こんなにかわいいのに」


 チビたちの長男が言う、キュアノが手招きをする。


「少年。世間では、『こんなにかわいい子が、女の子のはずがない』という言い伝えがある」

「そっか! なんか理屈がわかってきた!」


 納得してる! この少年は、何かに目覚めてしまったらしい。彼はきっと、前途多難な人生を送るだろう。ボクの知ったこっちゃないけれど。


「ところでサヴ、どうして女の格好をしているんだ?」

「色々と事情があってですね……」


 説明も面倒なので、話題を変えた。 


「それにしても、魔物が多いですね?」

「俺も気になっているんだ。ダンジョンができてから、動物たちの数も減ってきた。これでは、森の精霊たちにも危害が及ぶ」


 ボクは、森の方へ視線を向ける。


「これはいったい、どういうことだ?」


 信じられない。始まりの村ではあり得ない、強大なノイズが伝わってくる。森全体をシェイクしているみたいだ。


「俺が行ってもいいんだが、俺が帰ってこられないかも」

「おっしゃるとおりですね。森の先から、強い魔力を感じます。なんですこれ?」


 中級ですら、怯えるレベルの瘴気だ。


 これ以上の探索は、経験不足の子どもたちでは無理だ。かといって、なんでもかんでも介入すれば、この子たちの学ぶチャンスが失われる。


「子どもたちには、畑側を守ってもらった方がいいかも」


 キュアノが、提案してくれた。


「そうだね。森はボクたちが見てきます」


 森の先には、調査対象のダンジョンがある。


「心得た。ともかく助太刀ありがとうよ」

「あと、これを持っていって」


 ドロップ品の中で、ポーション類を若き冒険者にあげた。この先、必要になってくるだろう。


「何から何まで、感謝する」

「アイテムの即興売り買いも、訓練のうちですから」

「おお、そうだったな。おいお前ら」


 子どもたちが、財布からお金を支払った。


 冒険者同士による、旅先での物々交換・売買交渉はよくある。

 道中に行商が都合よく通るかどうか、わからないからだ。

 アイテムボックスにだって、持ち運ぶのに限りがある。限界値は、大きさや重量で決まるのだ。

 重い武器などを持ち歩きたくない軽装の冒険者が、通行中の戦士系に売ったりする。ふっかけられないように、若いうちから物の価値やお金の計算方法なども学ぶ。


 中にはホルストのように、なんでもかんでも人にあげてしまうお人好しもいるが。


 ボクはなるべく、入手が容易な安めのポーションを売ってあげた。


「すまん。じゃあ俺たちは行く」

「お気をつけて」

「そうだ。役場の所長が、お前に会いたがっていたが」


 ボクは、首を振る。


「今は、顔を見せるつもりは」

「そっか。じゃあな」


 幼い冒険者たちと別れて、ボクたちは先へ進む。


「どうして、会ってあげないの? ただの役員なのに」


「まあ、ね。向こうも忙しいだろうし」


 ボクは適当にごまかす。


 キュアのも何も言ってこない。


 森が見えてきたからだろう。


 そこから漂う気配に、ボクたちは言葉を失った。

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