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「好きだから追放する」と、同性の勇者から言われました。ボクは全力で逃げます!  作者: 椎名 富比路
第四章 男の娘ニンジャ、邪竜と激突!

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最悪との再会

 口ほどにもない。一〇〇人近くはいたであろう戦闘員が、数分で全滅した。


「あとは、キミだけだよ」


 ボクは、スキンヘッドにゆっくりと近づく。


「なにをしやがった!?」

「煙幕に仕込んだ睡眠薬に、気づかなかった?」

「そうか、てめえあのとき!」


 あの煙幕は、目くらましようではない。遅効性の催眠剤だ。走らせたのはごまかすためと、眠りの効き目をよくするためである。


「キミには効かなかったか。魔族か何かかな?」

「てめえ、いい加減に!」


 背中から、スキンヘッドが刀を持ち出した。


「よせ! こいつはオレの客だ!」


 上品なタキシードを着た痩せぎすの男が、ボクの前に立つ。


「久しぶりだねって言うべきかな? ゲーアノート・メツガー」


 ゲーアノート・メツガー。


 かつてこの男のせいで、ボクたち勇者パーティは半壊にまで追い込まれた。疑惑疑念がうずまき、パーティに亀裂がどれだけ生じたことか。 


「相変わらず、キュートな恰好なこったな。相変わらず、人のことをコソコソ嗅ぎ回ってんのか?」

「お前に言われる筋合いはないよ」


 ゲーアノートの文句に、ボクも言い返す。


「エチスン卿と組んでいるのか。えらく羽振りがよさそうじゃないか」

「どうして、こんなところに!? はじまりの村でバルログに殺されたはずじゃ!?」


 やっぱり、コイツの手引だったのか。


「オレの存在を知られた以上、生かしてはおけねえ」


 宝石まみれの指を、ゲーアノートはコキコキと鳴らす。


「ボス、ここはオレが」

「ブッチャーがやられてんだ。テメエが勝てるわけねえだろ」


 スキンヘッドは制止を聞かず、ボクに斬りかかる。


 斜め下からすくい上げる形に、刃が襲ってきた。


 それより早く、ボクは相手の首を両足で挟み込む。背中側に回り込んで、反撃もさせない。いわゆる、三角締めという技だ。


「ボクの首四の字固めって、クセになるそうだよ」


 相手を直立させたまま、足四の字固めで締め上げる。


「うおお、変な感じになるぅ!」


 足で血管を締めて、ボクはスキンヘッドを一瞬で気絶させた。


「だから言ったのによ」 


 自分の前に倒れてきたスキンヘッドを、ゲーアノートが蹴り飛ばす。


 それだけで、スキンヘッドの全身が砕け散った。


「これは、ヘビの毒?」

「そうよ。腐食毒よ」


 貴金属まみれのゲーアノートが、首や肩を回す。


「テメエとは、いずれ一対一で殺し合わないといけねえと思ってたんだ」


 ゲーアノートが、フッと視界から消える。肉体強化魔法を、ブーツと足に内蔵しているらしい。ボクとの距離を、瞬時にゼロへ持ち込んだ。宝石だらけの拳で、ボクの懐にアッパーを叩き込もうとする。


 あの宝石に、当たってはいけない。本能がそう感知した。刀の鞘で受け止める。


 ボクとゲーアノートとの間に、爆発が起きた。


「くっ!」

「ボサッとしてんじゃねえぞ!」


 土煙の中から、ゲーアノート拳が飛んでくる。


 刀を引き抜く暇すら、与えてくれない。ボクは、防戦一方になる。


 ナックルが、ボクのこめかみに。


 ボクは鞘でガードをしたが、様子がおかしかった。


「ちいい!」


 鞘が、ゲーアノートの拳から離れない。


「これで防げねえな!」


 ゼロ距離のボディブローが、放たれる。


「磁力? いや違う。粘着魔法か」


 鉄棒の容量で、ボクは一回転した。ブローを逃れる。


「げっ、テメエ!」


 相手が刀から注意をそらした。


 鞘の方を引き、ボクは抜刀する。鞘をゲーアノートの後頭部に投げつけるが、相手は拳で受け止めた。関節を極められたらよかったが、あの腕には近づけない。いや、組み付くこと自体が悪手だろう。


「お前は邪神を利用して、この地を支配しようとしていたよね? ボクが阻止したけれど」

「そうだ。勇者がいなくなったところを、俺が整地してやったんだ。感謝してもらいたいくらいだ。寄付金だって、有効活用してやっただろ?」


 攻撃を繰り出しながら、言葉もぶつけ合う。


 彼は魔法使いではあるが、後衛で飛び道具を使うわけじゃない。

 魔力を付与(エンチャント)したインファイトを最も得意とする。

 痩せているから見逃しがちだが、強靭なインナーマッスルが細身の中に内蔵されていた。さらに、肉体強化が施されている。

 

 なにも、男気があるわけじゃない。後方からだと、相手の絶望する顔が見えないからというだけ。


「邪神に頼ることが、平和に繋がるのか?」

「平和だろ? 常に争いが絶えない、素晴らしい世界になった!」


 ゲーアノートにとっては、人間が感情むき出しになって闘争している場所こそ理想郷なのだ。


「谷底に突き落とした後、死体も確認すべきだった。邪竜に救い出されていたなんて」

「天が味方したんだよ! 俺みたいなのは必要悪だからな!」


 自分が悪党だという誇りを、ゲーアノートは持っている。悪に染まらないと生きていけない男だ。


「利用されているだけだって気づかないとは、相変わらず愚かだね」

「俺が利用されているように見えるか? 魔王すら手を焼くくらいなのによぉ」

「だろうね。お前は、魔王の手足としては逸材だった」


 そのせいで、ボクらは一部の村や街に出入りできなくなっている。


 コイツだけは、生かしておくわけにはいかない。

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